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炎上マーケは「マーケティング」なのか?

また、ツイートが炎上してしまいました。
一言断っておきますが、決して私のツイートではありません。笑

当該ツイート自体は、ギリギリ個人の感想と言えなくもないと個人的に考えており、晒すつもりはないので詳細は省きます。

が、騒動を簡単にまとめると、あるサービスを受けた人が気に入らない点をツイートした事に端を発します。(上記の通り個人の感想という域を出ていなかった気もしていますが、炎上したのは正直なところ運が悪かったとしか言えない。ポイズン笑)
非難の対象は当初特定できないような形ではあったものの、地域の名前を出したことも炎上した一因だと考えられます。

この場で当該ツイート自体の内容について是非を問うつもりはありませんので悪しからず。

そして、個人的に問題だと思うのはここから。

別の方が「依頼を受けて実施した『炎上マーケティング』」であると擁護したことで延焼。その後、「炎上マーケティングは事実無根、これを機に予約が増えた事実もない」と当事者が声明を出すと、「その当事者から依頼を受けたとは言っていないし、嘘(冗談)だった」と苦しい言い訳。

「いい大人(しかもそこそこ影響力ある人)が面白くもない冗談(?)をSNSで言ったらあかんのわかるやろ〜!笑」というツッコミは一旦置いておきます。

とは言え、一連の騒動で「てか最近良く耳にするけど、炎上マーケティングってなんやねん」とモヤモヤが止まらないので、改めて考えてみました。

1. 「炎上」ってなんやっけ?

炎上(えんじょう、英: Flaming)とは、インターネット上において、不祥事の発覚や失言・詭弁などと判断されたことをきっかけに、非難・批判が殺到して、収拾が付かなくなっている事態や状況を指す。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教授の山口真一は著書の中で確立した定義は存在しないとしつつ、人物ないし企業が発した言動や行為に対して、インターネット上で批判的な発言が多数寄せられることと定義づけている。損害は心理的、経済的なものが発生しうる。
(引用:Wikipedia)

「炎上」と言う単語は、現状ネガティブな文脈で話題になる場合にのみ使用されると言うのが一般的な認識ではないでしょうか。

「炎上」の対義語として「バズる」と言う単語が存在しています。
「バズる」は必ずしもポジティブな意味合いだけではなく単に話題になっていると言う文脈でも使われますが、こちらはあまりネガティブな文脈で使われないことからも、「炎上」は明確にネガティブな意味合いを含んでいると言えます。(最近、ポジティブな文脈で使用される例も散見されているようですが、まだ市民権を得るに至っていないでしょう。)

さらに「炎上」すると、製品/サービスが売れなくなったり誹謗中傷が相次いだりと、マイナスの結果や悲しい事件につながってしまうこともあります。(直近の例ではワニやテ○スハウスなど、、炎上コワイ。)

まとめると、炎上とはネガティブな文脈で話題になる=注目度/認知度が高まってしまうことです。

2.そもそもマーケティングとは?

かの有名なドラッガーはマーケティングを以下のように定義しています。

「マーケティング」の狙いは、顧客というものをよく知って理解し、製品(ないしはサービス)が顧客に「ぴったりと合って」、ひとりでに「売れてしまう」ようにすることである。
(出典:マネジメント」上 野田一夫監訳版)

マーケティングといえば、、のコトラーによる定義はこちら。

どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること。
(出典:『コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版』ピアソンエデュケーション 著者:フィリップ・コトラー 翻訳:恩藏 直人)

お二方の定義を非常にざっくりまとめると、マーケティングとは、「お客さんが本当は何を欲しがっているのか良く理解して、その欲求をちゃんと満たす製品やサービスを提供できるようにする事」だと言っています。

マーケティングは「お客さんが何を求めているのかリサーチし、それを元に企画・商品化し、お客さんに届けること」と言う一連の戦略的プロセスを指す言葉なのです。

この定義から考えると、「企業や製品/サービスの認知拡大」を目的とするいわゆるプロモーションはマーケティングのかなり限定された一要素であり、「マーケティング」と呼称するのは些か違和感を覚えます。

3.炎上マーケティングってなんなん?

はい、いよいよ本丸!

もはや言わずもがなですが、炎上マーケティングとは意図的に「炎上」を狙った発言や行動によって世間の注目を集めて認知拡大した結果として売上につながることを狙う手法と言えるでしょう。その性質上、一度話題になれば勝手に拡散されるため、比較的低コストで周知できる可能性はあります。

意図的に注目を集める話題を提供することで売上につなげる、と言う点にのみ目を向ければバズマーケティングの一種と言えるかもしれません。

しかし、炎上マーケティングはより「モノ」志向が強くマーケティング1.0的手法と言えますが、バズマーケティングは「買ってみたい/使ってみたい」を喚起する色が強く、より生活者志向のマーケティング2.0的手法であることから、その性質は違います。

ちなみに、ルーマニアのチョコレートメーカー「ROM」が炎上マーケティングの成功例と言われているようです。

炎上マーケティングの成功例としては、2010年のルーマニアのチョコレート「ROM」の事例が有名。「ROM」は、ルーマニアの国旗が印刷された歴史のある国民的なお菓子だが、売り上げが低迷していた。そこで、メーカーは、ウェブサイトなどで、パッケージをアメリカの国旗(星条旗)に変更したと告知したのだが、この変更が国民の愛国心に触れ、反感を買い、「炎上」が起こった。その後、メーカーは、すぐさまパッケージを元に戻し、国民の愛国心によって元のパッケージに戻ったと伝えた。その結果、「ROM」の売り上げは増え、この企画は、カンヌ国際広告祭の2部門でグランプリを獲得した。
(出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」)

4.炎上マーケティングはマーケティングではない!!

ここまで読んでいただいた殊勝な方はお分かりかもしれませんが、炎上マーケティングはマーケティングではないと考えています。

①そもそも名称が不適切
「炎上マーケティング」はドラッガーやコトラーの提唱するマーケティングの定義から考えると、広報のみを目的とする炎上マーケティングはかなり限定的な行為であり、マーケティングと呼称するのは不適切だと考えます。
炎上プロモーションあたりが適切ではないでしょうか。笑

②お客さんのことを考えていない
マーケティングの大前提として、「お客さんのニーズを理解すること」であるとドラッガーもコトラーも述べているのは前述の通り。
百歩譲って製品/サービス自体はお客さんの望むものだとしても、ネガティブなイメージがついた企業の製品を使いたいと考えるお客さんは多くないのではないでしょうか。そんな初歩的なことも理解できていないのに、本当にお客さんが望むものを提供できるとは全く思えませんが・・・

③ひとりでに「売れてしまわない」
炎上マーケティングでは評判が一度ネガティブに振れてしまいますが、それをひっくり返さなければ売れません。しかし、一度インターネットに悪評が広まればそれを消すことはほぼ不可能で半永久的に残るので、常にその対応に追われることになってしまいます。その時点で、ドラッガーのいう「ひとりでに売れてしまう」とはかけ離れた状態にあります。3で、比較的低コストで実施できる可能性があると述べましたが、コストがかかる方が圧倒的に高いです。(自己矛盾のようで申し訳ないですが。)

④目に見える効果がないので手法として確立されるはずがない
冒頭で当事者が、売上に繋がっていないと言う声明を出したと紹介しました。今回は炎上に巻き込まれ、当事者に対して擁護やポジティブな声も多く認知は確実に高まったからにも関わらず、です。
これが自ら仕掛けた施策だったら・・・?ブランドを毀損する未来しか見えないです。
成功例として紹介したROMも、炎上マーケティングかと言うと疑わしいです。(Re:自己矛盾のようで申し訳ないですが。) 話題になることは狙っていたかもしれませんが、本当に「炎上」を意図していたのでしょうか。炎上した施策を上手くポジティブに変換できたために、結果として「炎上マーケティング」の成功例と呼ばれているだけだと考えています。(この例に関して、出典など少なかったため、詳しい方はご指摘などあれば是非ご教示ください!!)
むしろ、ネガティブな反応をポジティブに変えた「国民の愛国心によってパッケージを戻した」と言うコピーライティングの勝利ですよね笑
マーケターとしては、ネガティブをポジティブに変えた好例として研究すべき。

あれ・・・思った以上に炎上マーケティング()って、メリットなくないですか。

5.なぜ炎上マーケティング()が存在し始めたのか

誰でもSNSを気軽に使える世の中では、どれだけ気をつけても不運によって炎上してしまうことがあるかもしれません。こればかりは仕方がありません。

そんな中、不意に炎上してしまったとき、素直に「ごめんなさい」ができず、「わざとだしぃ!つられてやんのー!」と言う思考から生まれた苦し紛れの言い訳が「炎上マーケティング」なのではないでしょうか。

これほどメリットが見当たらず成功事例もない不確実な施策を意図的に仕掛けるなんて、チャレンジャー過ぎますからね。

6.終わりに

少し思考を拡大して法的観点から見ると、クライアントから炎上マーケティングの依頼を受けた場合であっても、契約によっては名誉毀損の訴えを起こされるリスクもあると容易に想像がつきます。

しかも今回は当事者に依頼されたものではない、ってそれの方が問題ですけど笑
名誉毀損に加えて威力業務妨害等、その他刑法に引っかかる可能性ありますよね・・・

万が一炎上してしまったら・・・炎上マーケティングなんて言い訳は捨てて、ネガティブをポジティブに変えるには?ピンチをチャンスに変えるには?と言う思考を大切にしたいものです。

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