ヴヰタ・セクスアリス

うっかりそういう場ではないのに、「Twitterではどんなこと呟いてんの?」と聞かれて「将棋関連が多いですけど、政治ネタも多いですね。雑多な垢なんで。あと、自分がセクマイなんで、セクマイネタも多いですね」とめっちゃ正直に答えたら、「セクマイ?」と聞かれたので「セクシャルマイノリティです。自分はノンバイナリージェンダーなんで」と説明したら、さらに深掘りされた笑。

ただまぁ、そういう話をする場所ではなかったので、周りが-21°くらいに凍りついたのと、説明が難しかったので、その場では適当に切り上げたので、こっちで少し書いてみようと思う。

自分が「クエスチョニング」「Xジェンダー」「ノンバイナリージェンダー」といった言葉に出会ったのは、数年前だ。その意味を知って、今まで自分の中でモヤモヤしていたものがストンと腑に落ちてスッキリしたのを覚えている。

自分は、自分の中に「自分が男か女か」という意識や認識がない。どちらになりたいという欲求もない。恋愛対象は基本的に男性だが、女の子にキスしたい、触れたいと思うこともある。ただ、その先が分からないので女の子には手を出さない笑

そういう話をすると、大抵の人は「誰の中にも男の部分と女の部分はあると思うんだけどな」みたいなことを言う。しかし、それはおそらくジェンダーの話で、セクシャリティの話ではない。セクシャリティは、性指向や性的欲望と直結する。ジェンダーとして、男の部分もあり、女性の部分もあるノンケが、同性とセックスができるのかというと、恐らくほぼ絶対に無理だろう。ただ、その辺の指向は大人になってから変わることもある。というか、気付くこともあるらしい。

さて、自分の話に戻ろう。

中学生の時、年上の女性と付き合ったことがある。

付き合う、というのだから、勿論恋人として、だ。

頻繁に彼女の家に遊びに行き、色んな話をし、キスもした。

しかしある日「そういう雰囲気」になり、流されるまま服を抜がされ、押し倒されたとき、彼女が「ちょっと待って」と言って、何かを取りに行った。

そのとき、ものすごく怖くなった。

だから、そのまま服をきて逃げた。以降、彼女とは連絡を断ち、合っていない。今思うと、酷いことをした。

思い返すに、彼女がダメだったのでも、女同士がダメだったのでもなく、単にまだ子どもな自分はセックスというものが怖かったのだと思う。

似たようなことは高校生のときにもあった。もともと仲が良かった男の子の家に、夏休み期間中ギターを教えてもらいに通うことになった。最初のうちは真面目にギターを教えてもらっていたと思う。とはいえ、もともと趣味が合う同士だったので、ギターの練習よりも音楽について語り合うことが多かったように思う。

6畳一間くらいの彼の部屋には、学習机とパイプバッドと本棚があり、他にはギターなど音楽の機材が溢れ、ほぼ足の踏み場もなく、自然と座る場所はベッドの上だった。並んでベッドに座り、一台のギターを交互に弾く。分からなくなると、え?ここは?みたいな感じで、普通に触れ合うことも多かったのだろう。覚えてないけど。

そのうち、何がきっかけなのかは覚えていないが、ふたりで並んで布団に入って、イヤフォンで同じ音楽を聴きながらグダグダすることが増えてきた。自分が「疲れたー!」と言って、座った状態から上半身を後ろに倒したのかもしれない。何しろ、相手のことを男の子だという認識はあるが、自分が女であるという意識が皆無なので、その辺りが全く無防備なのである。

自分の中にセクシャリティがない、ということは、自分が他人の性的対象になり得る可能性がわからない、ということでもあるのだ。

夏休みの間に、自分はいつしか布団の中で少しずつ脱がされていくようになった。不思議なことに、キスをした記憶はない。多分、お互い恋愛感情はなかったのだと思う。ただ、好奇心と、彼は恐らく性欲もありつつ、自分の体を探求するようになった。

正直、最初のうちは自分が何をされているのか、分からなかった。触られていることは分かったが、それが何を意味しているのか、まったくわからなかった。ただ、人肌とお布団といい音楽の組み合わせって気持ちいいな、くらいの感覚だったと思う。

しかし、ある日彼が言った。「俺のアレは大きいよ」。

それが意味することは理解できたが、だからどうすれば良いのかが、全くわからなかった。もう、その時点では指を挿れられるような関係にはなっていたのだが、その「指を挿れる」ということが何を示唆するのか、多分それすらわからなかったし、その先に彼が望んでいることすら、理解できていなかった。

高校2年の夏だ。それなりに知識はあった、と思う。

ただ、それが我が身に降りかかってきたときに、知識と現実が結びつかなかった。

そんな風に夏休みは過ぎ、彼の部屋に行くこともなくなり、自分と彼は元の友人に戻った。

その後、それなりに大人になった自分は普通に恋愛をし、初体験も無事に済ませ、今では結婚までして子どもにも恵まれた。

そして現在。

今でも自分の性自認は無い。体は女だということは理解している。子どもを産むことができたので、女体に産まれたことは良かったと思っている。また、ジェンダー的にも、女性の方がファッションが自由だ。メンズを着ていても「マニッシュ」で済む。これが逆なら「トランスベスタイト」「女装」扱いだ。このあたりは不平等だと思う。

自分は、男性的な装いをしていることが多いが、結局はそれは、そちらの方が「便利」だからに過ぎない。

変なジジイに駅や道路で故意にぶつかられることもない。痴漢に遭うこともなくなった。変なナンパで気分が悪くなることもない。「いや、それは歳のせいだろ」と言うかもしれないが、未だに少し女性性が強めの服を着ていると、思いもよらない目に遭って驚く。

先日は、背中が大きく開いたノースリーブのワンピースを着て飲んでいたら、入ってきた女性のお客さんに「あなた、背中がとても綺麗ね!!触っても良い?!」と聞かれて撫でまわされた。一緒にいた友人たちによると、自分たちがその店にいる間中ずっと、彼女は自分を見つめていたらしい。

異性に口説かれることも、未だにある。一応、そういうことを回避するために一見性別が分からない服を着ているのだが、話をすると声でバレる。女だと認識された途端、態度が変わる男が何人も居た。

思い出すだけでクソメンドクサイ。

長くなったので、そろそろ結論に向かおうと思う。

自分は、自分のなかに性別という概念がないので、しばしば外見的、肉体的に自分が女性であるということを忘れる。なので、異性との距離感の取り方が多分おかしい。また、異性から性的対象として見られると、「何故?」と、非常に困惑する。

とはいえ、自分も人間なので、もちろん性欲はある。

どんなときにそれを感じるのか。当たり前だが好きな人を前にしたときだ。裏を返すと、恋愛感情を持たない相手を性的対象として見ることができない。

ま、体は女なので、物理的には誰とでもできるのだが、それはまた別の問題。


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