PERFECT DAYSから教わった、日々の仕事に誇りを持つために必要なこと

先月末役所広司さん主演、
ヴィム・ヴェンダース監督の
PERFECT DAYSをみた。

本当はその感想をと思ったけど、
先々週PERFECT DAYSみたいな
気持ちのいい出来事があったので、
それを忘れないうちに綴ろうかなと。

その日私は自社施設のキャンプ場に行き、
掃除全般のお手伝いをした。
天気は晴れ。気温も暖かく、
心地よい風が吹いていた。

トイレ掃除をしていたとき、
なんだか清々しい気持ちになった。

小鳥のさえずりや、木々の葉同士が
擦れる音を聞き、たまに風を感じながら
綺麗になっていく様子をみるのはとても
気持ちのいいものだった。

PERFECT DAYSは
役所広司さん演じるトイレの清掃員平山の
都内のトイレ清掃、休日の過ごし方を淡々と映し出した映画である。

ルーティン化された日々のなかで
同じ日々のようで少しずつ違う、
人々の冷たさや暖かさ、
自然の揺らぎや美しさを感じる、
日々を愛しいと思えるような
とてもいい映画である。

PERFECT DAYSでは、
平山の過去が明確にではないが
少しだけ書き出されていて、
推測するに社長だった父親からの長男としての後継の重圧に耐えられず逃げ出した過去がある。きっと、2度と家の門を跨ぐなといわれたのだろう。

その上で、遊びに来ていた平山の姪を迎えに訪ねてきた妹からうけた、『本当にトイレ掃除しているの?』と言う言葉と、姪が言った『お母さんからおじさんとは住む世界が違うから会うなって言われてる』と言う言葉。

そこから、トイレ掃除=下層の人がやる仕事というイメージが染み付いていると認識できる。

序盤のシーンでも、トイレで泣いていた迷子の男の子の手を引いた平山の好意を、親がアルコール除菌シートで子どもの手を必要以上に拭き、お礼もせずに立ち去るという描写がされている。

しかし、平山はトイレ掃除に誇りを持っていたし、(ユニフォームを毎日綺麗にハンガーにかける様子や清掃途中に木漏れ日を見ながら微笑む姿、手を抜かず清掃をする姿で伝わる)平山自身はもともと上層・下層の意識を持っていない人であると推測する。

それは、自分が上層の家族に生まれ、苦労した背景があるからだろう。

姪を迎えにきた妹と別れる時にハグした後の涙は、世の中の階層の差を感じたからとかではないはず。純粋に彼の中にまだ子どもの頃から止まったまま(父親と頑なに会おうとしないところから推測)の、心の奥底の感情に蓋をしていた人との触れ合いや愛情を欲していた部分が姪といることで緩み、妹という家族と会ったことでどっと溢れてしまったのだろう。

さて、話は戻るが、わたしも
汚れたトイレを掃除しながら
美しい光と自然の心地よさを感じて
きっと平山が感じていたような
誇らしさを感じ、つい口元を緩ませてしまった。

ただ、そう思わせてくれたのは、
豊かな自然とキャンプ場のお客さんだ。

『お掃除ありがとう』とくる人くる人が
言ってくれた。

映画のなかではいて当たり前、
お礼なんで皆無、存在がないように、
汚らしい存在かのように
扱う人々が描かれていたこともあり、
あたたかい言葉に少し泣きそうになった。

私自身駅の掃除のスタッフの方に
お礼なんて言えていただろうか。
もしかしたら自分も無意識に上層下層と
自分のポジションを比べてしてしまって
いるのではないだろうかと感じた。

結局、どんな仕事だろうが
自分が、その人が楽しく誇りを持って働けて
『人の役に立てている』という
実感があればそれでいいのだと思う。

毎日の小さな変化にも楽しみを見出す能力と
自分に合った環境、いわゆる階層に関わらず人や社会のためになっているという実感が仕事に誇りを持つことにつながるのだと。

そして、自分自身のポジション関係なく
周りを見渡して人々の毎日を維持するために
働いてくれている人たちに感謝することを
忘れずにいたい。

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