見出し画像

地下アイドルがファンを増やすには、魅力をプラスするのではなく、抵抗をなくす

地下アイドルの大きな悩みの一つとして「ファンが増えない」がある。ファンを増やすために地下アイドルはあらゆることをやる。歌やダンスを頑張るのはもちろん、SNSの投稿頻度を増やしてみたり、自撮りの加工を強めにしてみたり、普段出さないおっぱい出してみたり、整形したりと、ほぼすべての地下アイドルが、ファンを増やすために、さまざまな努力をしていることは知られている。しかし、それでもファンは簡単に増えるわけではない。

いわゆる"積極的なファン獲得施策"、ライブに特典をつけたり、自分の見た目に関するアップデートだったり、SNSを頑張ったりというのは、どちらかというと「魅力を足す」方向での努力である。

しかし、昨今あまりにも地下アイドルの数が多いのと、どこの運営・メンバーも同じようなことをやっているため、差別化要素として効きづらなくなっている(だからこそ、水着ライブや指チューチェキみたいな、差別化を突き詰めた極端なアイドルが現れる)

当たり前だが、あなたが歌やダンスを頑張っているとき、他のアイドルも同じように頑張ってる。つまり差はつかない。差がつくのは人より2倍3倍努力した場合であって、ライブが忙しい現代の地下アイドルにそんな暇はない。

冒頭で述べた「ファンが増えない」というアイドルの悩みを少し深掘りしてみると、「努力しているのにファンが増えない」ということになる。こうして「頑張ってるのにファンが増えない」→「私には魅力や才能がない」→「自己肯定感爆下がり」→ 「気を紛らわすために飲みにいく or 優しいイケメンオタクと繋がる」→「バレて解雇 or ファンが減る」という地下アイドルあるある負のループは生まれる。

それなりのリソースやコストをかけて努力しているのに結果が振るわない、という場合は、往々にして努力の方向性が間違っている可能性が高い。

歌やダンスやSNSを頑張って、ファンが3ヶ月前の105%増ならまだいい方で、ほとんどのアイドルがそこまでいってない気がする。アイドルはコツコツ努力する必要はあるが、その努力に比例してファンが増えるわけではない。ちょっと増えても、その分減ったりもする。そして増えるときは一気に増えたりもする。

ファンが増える子というのは、ファンの心理をとてもよく理解していて、さらにそのファンに対して適切なコミュニケーションを取れる子だと思う。

ファンが中々増えないアイドルのほとんどが、自己成長的な努力はしているが、ファンの気持ちを深いレベルで突き詰めて理解しようとしているよう子はかなり少ない。

列に並ぶファン心理は「失敗したくない」

ファンの2割くらいは、ほぼ無条件にあなたのことが好きなので、特にネガティブなことさえ言わなければ定着するが、問題は残りの8割、つまり浮動ファンである。この8割は隙さえあれば容易に推し変(推し増)する、もしくは徐々にフェードアウトしていくはずだ。

昔から言ってることなのだが、アイドルは「ファンは自分のことが好きだから会いに来てくれている」と思いがちだ。前述の2割はたしかにそうなのだが、残りの8割は好きという感情だけで来てるわけではなく、楽しい時間を過ごせそうだから来てるのである。ここを履き違えているアイドルは非常に多い。

つまり楽しい時間を過ごせなさそうな子の列には並ばない。逆に楽しく過ごせそうな子なら、推しに比べて頻度は低いかもしれないが、推しじゃなくても並ぶものである。

地下アイドルの特典会。毎週のように通ってるオタクからすれば当たり前の光景だが、おそらく地下アイドルという文化に触れてこなかった人から見ると、かなり酷なシチュエーションである。グループやメンバーの人気・序列が誰の目から見ても明らかにわかってしまうからである。

しかしピンチはチャンス。こういうところにこそ、改善のタネというのは転がっている。

オタクを大きく分類すると、「自分の推しメンしか行かない人」と「自分の推しメン以外にも行く人」に大きく分けられる。前者は取り込みようがないので、今回の話のターゲットは後者である。

自分のオタクがたくさんお金を使ってくれるアイドルのみなさんには実感がないかもしれないが、オタク目線だと約1分で1,500円-2,000円の投資である。ラーメン屋で全トッピングできる金額を、1分で消化するのだから、判断はシビアになる。

経済的に余裕のあるオタクじゃない限り、いつもと違う子に並ぶのは常にリスクを含んでいる。列に並んで1,500円の元を回収できなければ、それは投資の失敗であり、きれいさっぱり忘れることにして、たぶん2度と行かない(このあたりは人によると思うが、自分は3回行ってみてうまくハマらなければ撤退するルールを設けている)

ステージやSNSで興味を引くことができても、特典会の盛況具合が人気のバロメーターである地下アイドル業をやる以上、列に並ばせることができなければ、ファンを増やすことは難しいだろう。

列に並ぶ心理的抵抗をなくす

ではどうすれば並ばせることができるのか。

その方法が今回の本題である「抵抗をなくす」である。

列に並ぶファンの心理は、表面上は「アイドルとお話したい」「アイドルと今よりも仲良くなりたい」だが、実はその前に「失敗したくない」という心理が隠れている。特にグループのファンになりたての初期フェーズほど、その傾向は強い。

人間は得することよりも損することに敏感なので、「仲良くなりたい」よりも「失敗したくない」という抵抗感のほうが強い。なのでアイドルがいくら自撮りを頑張ったり、おっぱいを出したりしても、ファンの「失敗したくない心理」を解消しない限り、ファンはなかなか増えない。オタクが欲してるのは、ツーショットチェキではなく、この子に1,500円払っても「失敗しない高い確信」だからだ。

特典会における「失敗」とは、ほとんどの場合、「話が思ったほど盛り上がらない」「話がありきたりでつまらない」である。

そういう失敗の可能性があると、オタクは列に並ばない。

なのでアイドル側がとるべき行動は、「あなたと私には共通点がありますよ」というシグナルを出すことである。人間は互いに共通点があれば1分くらいの会話は乗り越えられるものである。

そして、ここでSNSが重要になってくる。

SNSで具体的に何を発信すればいいかというと、ファンと共通の話題になるような話である。たとえば野球に興味がある子は、積極的に野球について発信していった方がいいし、アニメに興味がある子はアニメや漫画について発信していったほうがいい。そうすれば(少しはあなたの見た目が刺さってる必要はあるが)少なくとも野球好き・アニメ好きのオタクにとっては共通の話題ができるので、列に並んだときの失敗リスクは下がり、心理的抵抗も多少は解消されるはずである。

SNSを自撮りアップにしか使わないアイドルは多いが、それでフォロワーは増えても列に並ぶ人は増えない。「顔がいい」から列に並ぶことは、最初はあるかもしれないが、長くは続かない。

最近のアイドルが昔に比べて積極的にSNSで発信しなくなってる理由は明らかで、何か意見をいえば、余計な批判にさらされるリスクが高まってるからである。この辺は難しい問題で、傷つきたくないからSNSを積極的に更新しないアイドルの気持ちも分かるし、とはいえ何らかのリターンを得たいなら、多少のリスクは仕方ないものだとも思う。

まあやり方の問題で、ある事象についてポジティブな意見を発信してる分には批判も回避できると思うし、別に趣味がなくても、他のグループの◯◯ちゃんと仲がいいことがわかれば、◯◯ちゃんのオタクからのハードルは格段に下がる。つまり、ファンとの共通のネタになるような話題を常に提供することが大事である。ファンの日常ツイートから話題を拾おうとするアイドルは多いが、そもそもファンが列に並ばないと話をすることもできないのがアイドルなのだから、話題はアイドル側から提供したほうがよい。

また、運営についても同様で、特典を大量につける、豪華にするだけでなく、なぜ自分の運営するグループにオタクは並ばないのか、その障害を特定して改善したほうが早い。だいたいの場合は、時間の問題(平日のタイテが早すぎる・並行物販・時間通りに始まらない)・場所の問題(アクセスが悪い・見づらい・狭い・会場がうるさい)・人(スタッフの剥がしが雑・接客の態度が悪い)の問題だったりする。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?