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ジョニー・ホッジスの命日

5月11日は私の大好きな、史上最高のアルトサックス吹きだと思っているジョニー・ホッジスの命日です。

ホッジスが長く在籍(中抜きはありますが約40年)するデューク・エリントン楽団は「ニューオーリンズ組曲」の吹き込み中で、1970年4月27日に半分の5曲を録音し、5月13日に残りの4曲を録る予定でした。

残り4曲のうち、「シドニー・ベシェの肖像(Portrait of Sidney Bechet)」という曲では、ホッジスにおよそ30年ぶりにソプラノサックスを吹くことになっていました。
ホッジスは大昔にベシェからもらったソプラノサックスを大切に持っており、いつでも吹ける状態にしていましたが、人前では一切吹吹こうとしませんでした。「シドニー・ベシェの肖像」でホッジスにソプラノを吹かせたかったデュークは、そのことを息子のマーサー・エリントンに話し、マーサーからホッジスに頼んだそうです。その答えは「高くつくよ」。それを父親に伝えるとデュークは「彼が欲しいだけ払ってやれ」と。

5月11日、ホッジスはマンハッタンの歯医者へ治療に行きました。トイレへ行くため、治療用の椅子から立ち上がり、数歩歩いたところで倒れ、ハーレム病院へ搬送されましたが回復することなく、午後4時半に死亡が確認されました。死因は高血圧性心血管疾患。62歳でした。
ホッジスの未亡人は「私が歯医者に送っていったけど、神様が彼を連れ戻したの」と語っていたそうです。

Wikipedia には、彼の最後の演奏は一週間前のトロント・インペリアルホールと書かれていますが、Ellingtonia では、5月3日のトロントでの演奏はデューク・エリントンとドン・トンプソン・カルテットによるものとされ、ホッジスの伝記にも記載がありません。なので、4月27日の「ニューオーリンズ組曲」が最後である可能性が高いです。

当日のナショナル・レコーディング・スタジオでの収録の順番はこの通り。

  1. Second Line

  2. Bourbon Street Jingling Jollies

  3. The Artistoracy a la Jean Lafitte

  4. Thanks for The Beautiful Land on The Delta

  5. Blues for New Orleans

この中で、ホッジスのソロがあるのは、最後に吹き込まれた「Blues for New Orleans」のみ。彼のスワンソングはこれです。

ちなみに、デュークはホッジスの亡くなった日に、ナショナル・レコーディング・スタジオでピアノソロを何曲か吹き込んでいますが、これは自家録音です。御大は夜型ですから、その知らせを聞いたのはスタジオ入りの前かも知れません。

翌々日の13日には「シドニー・ベシェの肖像(Portrait of Sidney Bechet)」が吹き込まれ、オクターブ低いテナーサックスでポール・ゴンザルベスが吹いています。

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