カープダイアリー第8308話「達人揃いの新井カープ、本拠地6連勝で首位まで2・5差」(2023年7月4日)

「ムダなホームランを打たれてしまったんですけど、最後のピンチを抑えられたのでそこは良かったかなと思います」
 
お立ち台でたんたんと話す床田は、ピッチングの極意を極めつつある“達人28号”だ。失点はノイジーに許した七回のソロのみ。7回7安打無四球でハーラートップ8勝であと1勝と迫り、防御率1・73もリーグ2位。9試合連続のクオリティスタート成功は特筆すべき数字だろう
 
続いて打撃の達人、龍馬が紹介されるとスタンドがさらに沸いた。初回の2点タイムリーで阪神先発・西勇輝の出バナをくじき、三回にも右前打を放って先頭打者出塁。七回には7号3ランをバックスクリーンに打ち込んだ。
 
「四番を打ってるんですけど、チャンスでぜんぜん打っていない四番なのできょうこそはと打ちました」

「自分でもびっくりするぐらい飛んだので良かったなと思います」
 
13安打で9対1快勝。マツダスタジアムでは6連勝で首位阪神まで2・5差になった。
 
敗れた岡田監督はたまったもんじゃない。試合後、3回6失点となった西勇輝の二軍降格を言明した。2日前の巨人戦で死球を受けた不動の「一番センター」近本の肋骨骨折も発表された。一、二番が流動化するのはベンチにとっては大きなマイナス材料だ。
 
5月5日の本拠地阪神戦では逆に初回の大山、三回の佐藤輝明、六回のミエセスに柵越えされ、0対5完敗だった。

翌日の中国新聞コラム「球炎」には「今季ワーストの内容」の見出しが取られていた。

それを言うならこの日は「今季ベスト」でいいだろう。西勇輝とは4月に二度対戦して計15回と0/3で4点しか取れていなかった。しかも相手は交流戦から3連勝中だった。

対するスタメンには菊池以外、左が並んだ。一軍再再昇格の小園も即、組み込まれた。

セカンド菊池
ライト野間
センター秋山
レフト龍馬
ファースト松山
キャッチャー坂倉
サード田中広輔
ショート小園
ピッチャー床田

このオーダーは首脳陣の”自信作”。西勇輝の被打率は右打者の方が3割4分近くと高かったが、相手の弱点を突くより、自分たちの持ち味を前面に押し出すスタイルを貫いた。

試合前練習で新井監督が珍しくグラウンド内を行き来した。

走塁練習中だった小園にはその背中に右手をかけながら“心得”を説いた。その足でセカンドのポジションに向かいグラウンド整備中だった藤井ヘッドと打ち合わせ。さらにセンターの位置に設置された投手陣用のゲージの中では通訳を交えターリーの話に耳を傾けた。

前日、玉村の出場登録を抹消してこの日、小園、大盛と共に塹江を呼び寄せたのはブルペン陣強化のためだ。広島の7、8月は厳しい暑さになる。酷暑を乗り切るための投手起用法はシンプルな方がいい。

この日の救援陣はケムナと塹江の出番となった。ともに無四球で業務完了。

野手陣では秋山が明らかに息切れする一方で龍馬と坂倉は交流戦以降、長期に渡って右肩上がり。しかも坂倉は4月4日のマツダスタジアムで西勇輝から2ラン。代打の切り札、松山も体のキレをキープできている。

スタメンとベンチスタートがテレコになっている田中広輔は7月も打撃好調。この日のフリー打撃でも一番いい打球を飛ばしていた。周りからは軽く振っているように見えても打球が飛ぶ。打撃の極意を掴みつつあるのではないか…

初回の立ち上がりで2点を先制された阪神バッテリーは、そこからどう乗り切るかを思案しながら松山を中飛に打ち取ったもの坂倉を歩かせたことが命取りになった。田中広輔にもボールカウント3-1。ライトスタンドに持っていかれる状況を自分たちで作ったことになる。
 
打った田中広輔は「いい反応ができました」と振り返った。内角に食い込んでくるスライダーを文句なしの角度で打ち返すことができた。
 
初回の5点を呼び込んだのは秋山だった。立ち上がりに一死一、二塁のピンチとなった床田をセンターの守備で助け、打席では無死一、二塁で絶妙のバントを決めた。

 試合後の新井監督は「復活というより、新しい広輔を見せてくれている」と得意の?明言をまたひとつ披露した。

個々の選手が新たな力を発揮できるようになれば、新しいチームをファンに提供することができる。その傾向はすでに数字上にも表れている。昨季26に終わったチーム盗塁数はすでに37を数え、リーグトップを行く阪神の39を追いかける。7月に入っての貯金6も、佐々岡前監督の下での3シーズンは皆無だった。
 
2022年開幕戦のスタメンは、龍馬、菊池、小園、松山、坂倉、曾澤…。顔ぶれは今とほとんど変わっていない。変わったのはひとりひとりの輝き方。それぞれの持ち場をそれぞれが極めようとするマイスター集団作りが着々進行中、ということになる。

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