カープダイアリー第8232話「開幕わずか11試合で2度の雨天コールド勝ちに隠された秘密」(2023年4月14日)

2万5911人のずぶ濡れのファンが見守る中、雨のマツダスタジアムでまたコールドゲームが宣告された。午後9時12分、グラウンドはもう完全に水が浮いていた。スコアボードにはヤクルト初回からゼロ行進。後攻めカープは六回に1点…

水を得たコイとはこういうことを言うのだろう。8日前にもやはり本拠地での六回表途中、降雨コールドで完封勝ち(勝利投手は遠藤)したばかり。この時は開幕からの連敗を4で止めた。雨天中止日翌日の話で、午後6時からの降水確率が60%から80%に上がる中でもカープ球団は試合開催を強行した。

今回は当初、午後6時からの降水確率が30%だったが、その後雨雲の動きが早まった。雨の中でのプレーボールは、もうヤクルトナインも高津監督も承知の上だっただろう。これまで何度も「えっ?これでやるの?」という場面に出くわしてきたのだから…

試合は予想通りの投手戦になった。開幕投手同士の投げ合い。とはいえ優勢だったのはヤクルト・小川の方だった。カープ打線は五回一死から龍馬の中前打でパーフェクトピッチングを止めるのが精一杯だった。

何度もマウンドと内野に砂が入れられて、帽子のツバから水滴が滴り落ちる。ロジンをポケットに入れても指先もすぐ濡れる。スパイクの歯には泥が絡む。

五回終了で試合が成立、そして六回へ。5回で83球の大瀬良は濱田、村上、オスナのクリーンアップを遊飛と連続空振り三振に仕留めた。それまで毎回、走者を背負っていた。さすがは選手会長、さすがはエース…

その裏、新井監督は大瀬良に代打・松山を送った。結果は詰まりながらショート後方に落ちるヒット。難しい内角球をさばいた方の勝ち。小川の失投ではない。

代走の大盛を一塁に置いて、菊池も内角を攻められ、力ない投ゴロ。しかしこれを小川が二塁に悪送球、雨で手が滑った。

一死二、三塁となって野間。フォークが2球続いたあとの真っ直ぐが高目にきたところを振り切った。

ライト前タイムリー。続く秋山は6・4・3併殺打に終わった。


小川6回75球3安打無四球の1失点
大瀬良6回97球4安打1四球の無失点

その後はブルペン勝負となって八回、3番手のターリーが上がった時のマウンドはもはや身長193センチで100キロを超える巨体を支えることなどできなくなっていた。

一塁に四球・青木の代走・並木を背負い、打席には村上。その初球が村上の頭の上を通過した。球速120キロ台の曲がり球。

おそらくこのあと村上は真っすぐに絞ったはずだ。しかしリードする坂倉はさらに120キロ台を2球続けた。踏ん張りの効かないマウンド状況を考慮しての配球に、たまらず手を出した村上の打球は、雨中の放物線となりセンター秋山のグラブに収まった。

敵地での開幕戦で3連敗した相手を雨中の戦いに引き込み、そして1点差勝ち。新井カープは、どうやらファンファーストの対極にいる利益第一主義の球団運営を逆手に取る力を備えているようだ。

状況的に単純比較できないにしても、コロナ禍の交流戦強行突入であっという間に勢いを失った佐々岡カープ1年目とはかなり様子が違っている。

実際、球団側が秘密裏に差し替えたビジターユニホームの着心地の悪さも、先のバンテリンドームナゴヤでは早々に適応して見せた。

カープ球団の様々な“裏の顔”については過去、幾度となくペナルティが与えられてきた。

ジャッジするのは広島の空からマツダスタジアムと広島の街を俯瞰している“見えない力”だ。今シーズン復活した東京からの新幹線応援ツアーでは、かつてベイスターズファンを締めだして「ビジパフォの呪い」が発動された。スワローズファンへの配慮不足が生んだ「赤傘の呪い」もそうだ。

カープ球団にはファンからいいろいろな問い合わせ、要望が直接届けられる。

特にコロナ禍における感染防止対策期間中にはそれが顕著だった。

その中でファンが試合中止の有無に関する球団側のあいまいな態度について「12球団最低ですね」と電話口で告げた際、対応した球団スタッフが「そうですね」と認めたケースすらある。

おそらく新井監督はカープ球団の何たるかを知った上で、また「カープ村」に生きる、とはどういうことなのかを理解した上で、チームの先頭に立っているのだろう。

カープは市民球団。幾度となく言われてきた言い回しとは裏腹に、その実態は市民の思いとかけ離れたものであり続けてきたが、新井カープは市民球団の真なる姿さえ導き出す、そんな力を秘めている可能性がある。


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