カープダイアリー第8469話「限りなく透明に近いドジャーブルー、グローブ6万個が届くクリスマスを前に」(2023年12月21日)

年末年始の「カープ特番」。NHKを含む地元ローカル各局は、コロナ禍を経験するまで長年に渡りハワイロケなどの様々な「企画力」で勝負してきた。

2000年代の終わり、黒田博樹さんが正に「カープのエース」として活躍していたころ、瀬戸内海に浮かぶ島の子どもたちとの交流を紹介する、という切り口の年末年始特番がオンエアされた。

「企画」提案は黒田博樹さん自身。「同じやるなら、子どもたちに夢を与えられるようなものがいい」とテレビ新広島の担当部署に持ちかけた。

釣り、ゴルフ、料理・飲食、故郷や観光地訪問、スタジオでの対談などが中心だった時代にあって、異色の内容だったと言っていい。

黒田博樹さんはグローブやバットなどを携え、現地を訪ね、グラウンド整備、島の人たちとの交流、と何にでもチャレンジした。

そして、多くの人に見送られながら黒田博樹さんが船で島を去っていく、というエンディングになった。

日本国内のおよそ2万ある全ての小学校には、クリスマス前後に大谷グローブおよそ6万個が届くことになっている。広島でもすでにグローブを配布するための準備は整いつつある。

黒田博樹さんの思いと、大谷翔平の思いには、おそらく共通点が多いのではないだろうか。

大谷翔平より16年早くドジャー・スタジアムでの真剣勝負を経験した黒田博樹さんは「予想以上に厳しい世界でした。仮に一度、うまく抑えることができても、すぐに相手は対応してきた」と振り返る。

「カープで、これだというものを掴むのに5年はかかった」という中にあって、自身の投球スタイルの土台を確立すると、やがて「ミスター完投」の呼び名にふさわしい剛腕ぶりを発揮するようになった。だが、海の向こうのベースボールでは、常によりフレキシブルな変化を求められた。

打者の意図やそれに伴う動きを察知して、動くボールを細かく使い分ける。再びカープのユニホームを着た際に「フロントドア」や「バックドア」の球筋が話題になった。エース時代の真っすぐとフォークが中心だった投球スタイルは完全に過去のものとなっていた。

投げる大谷と打つ大谷。

すでに数多くの対戦を経験してきたメジャーの各打者、各投手は、あらゆる手を使い7億ドルの価値を有するリアル二刀流の“刃こぼれ”を狙う。

それをことごとく跳ね返すようでないと、ドジャースの大谷翔平はその光を失ってしまうことになる。その戦いに身を置くことが、どういうことを意味するのか。前人未踏のフィールドを歩む者にしか、その気持ちは分からない。

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