カープダイアリー第8351話「名残の夏の攻防戦Ⅵ…虎の尻尾に食いついていく!お立ち台に右のスラッガー3人揃い踏み」(2023年8月20日)

「Huge win!」

お立ち台のマットの第1声だ。

「すごく重要な(巨人との)連戦だった。勝てて良かった。タイガースに食いついていけている。今振り返ると、シーズン序盤はなかなかチームの勝利に貢献できなかったけど、今は調子も上がっているのでチームの勝利のためにがんばりたい」

自身の現役生活では経験したことのない、ホームゲーム6試合連続の超満員のスタンド。15日の阪神との初戦では六回、馬場の高目のカットボールを右中間スタンドに運び5対5同点にした。

昨夜も六回、堀岡のスライダーを弾丸ライナーで左翼席に叩き込んだ。そしてこの日は初回、メンデスから14号2ラン。四番龍馬の先制犠飛に続く五番の一振りで、8月6日のピースナイターで6回無失点勝ち投手になった左腕にいきなり強烈カウンターを食らわせた。

しかもその打球はPC間の延長線上を伸びていってそのままバックスクリーンンに飛び込んだ。どんなカウントでも変化球が来る、緩急をつけたピッチングをされる。日本の野球にいかに適用していくか?朝山打撃コーチや新井監督から言われ続けてきたことの意味を理解して、やっとそれを体現できるようになった。

マットの隣には2日連続お立ち台の末包がいた。

「えー、みなさま、きのうぶりでございます。その前にマット・デビッドソン先輩がとてつもないホームランだったので、それに続こうと思いました。きのうのいいイメージが残っていたので、しっかりと自分のスイングができました」

二回、先頭バッターで自身の打撃力が試される中、その初球、スライダーを力感なく振り抜いた。わかっちゃいるのに、それがなかなかできないでいた。「打ちたい気持ち」が強すぎて捉えたと思っての「ブレ」が生じるからファウルになる。マットと同じように周囲の助言を取り入れて重心を低くする構えから「真っすぐ打席で立つ」イメージに替えた。投球を呼び込んで軸回転で打てばミート率が上がり、飛距離も出る。

3人目のヒーローは五回に7号3ランを持ち味である右中間スタンドに運んだ堂林だった。メンデスから6月24日の本拠地で4号ソロを放つなど今季の対戦成績は3の3。しかし打ったのは二番手の田中千だった。三回途中からメンデスを救援した右腕を原監督は引っ張った原監督にしてみればこれほど痛い一発はない。

「チームに怪我人も出で、厳しい状況ではありますけど若い選手もベテラン選手も、みんながひとつになって今はやれてると思います。最後までカープらしい野球、泥臭い野球で食らいついていきたいと思います」

開幕戦オーダーは小園、野間、秋山の一、二、三番と五番龍馬、七番坂倉。そこに右の大砲2門、ライアンとマットという構成になっていた。

明らかに左打者中心の打線が組まれており、当時の戦力を効果的に組むならそれしか選択の余地はなかった。

そこから100試合を越えた時点で右打者3人のお立ち台が実現したことになる。末包が前夜、ファンに苦しみを“告白”したように三人三様いろいろな苦労や課題が存在する。それでもバットを振り続けて、スタンドとともに勝利の喜びを分かち合う。それが新井監督の教えでもある。

投げては先発の玉村が5回2/3、5失点も自責は2で8月5日の前回登板に続き巨人相手に勝ち星を掴み取った。

玉村を救援した大道は代打坂本を真っすぐ4球で見逃し三振に仕留め、七回にはアンダーソンが新たな仕事場で堂々のデビューを果たした。さらに八回は中崎、九回は巨人戦3連投の栗林で締めた。

菊池と矢野の二遊間コンビは二、七、八回にゲッツーを完成させて投手陣を援護した。安打数は巨人の13に対して半分以下の6。それでも内容的には快勝と言っていい。

-それでは末包選手に締めていただきましょう。

きのうと言うことは同じです、みんなで優勝しましょう!

残り試合が少なくなる中、阪神はなかなか負けてはくれない。その優勝マジックは26に減った。だが敵の尻尾に食いついていけば、夏の終わりを迎えても熱い季節は終わらない。


※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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