カープダイアリー第8568話「横浜スタジアム開幕前夜、2月1日からの積み重ねで得たもの、届かなかったもの」(2024年3月28日)

開幕前日には独特の空気が漂う。長い戦いへの準備期間、その最終日。横浜スタジアムでのナイター練習に臨んだナインは、それぞれの思いを胸に特別な時間を過ごした。
 
そんな中、ただひとり複雑な表情で守ったり、打ったりした選手がいる。上本だ。早朝の文春電子版報道で「ミニスカ女性」との「“衝撃不倫”焼き鳥デート」を報じられた。
 
この手の話、カープ球団は必ずスルーする。そうするとまた第2、第3報が出たりもする。
 
広陵がセンバツで敗れた翌日、開幕前日のタイミングで文春砲…。よくデザインされた戦略は“敵”の常套手段だが、この件で数字を落とすようではチームとしては困ることになる。踏ん張りどころだろう。
 
同じ報道でも「初の開幕投手」としてその姿が取り上げられてきた九里は、いつもと変わらぬ様子で短距離ダッシュやキャッチボールをこなした。24時間後には昨季のセ・リーグ二冠左腕、東と投げ合い、そして決着をつける。
 
「ほんとにいいピッチャーだと思いますし、打線に関してもいい打線だと思います。それを踏まえても僕自身、負けるつもりはないので、しっかと自分のピッチングをして、最終的にチームが勝てるように…。自覚と責任を持って1球1球気持ちを込めて投げていきたいと思います」
 
この日、NBPからは一軍登録選手(開幕一軍メンバー)が発表された。セ・リーグでは阪神とDeNAが28名、巨人と中日は29名、ヤクルトは27名。
 
そしてカープも27名。
 
登録選手
 
投手
九里 亜蓮
大道 温貴
森浦 大輔
栗林 良吏
中崎翔太
益田 武尚
塹江 敦哉
矢崎 拓也
島内 颯太郎
河野 佳

捕手
會澤 翼
坂倉 将吾
石原 貴規

内野手
上本 崇司
田中 広輔
堂林 翔太
マット・レイノルズ
菊池 涼介
小園 海斗
矢野 雅哉
羽月 隆太郎
ジェイク・シャイナー
 
外野手
秋山 翔吾
野間 峻祥
松山 竜平
久保 修
田村 俊介
 
先発ローテ6人の中で名前があるのは九里だけ。あとは後日の出番となる。
 
社会人2年目の河野はオープン戦後半にキレのある球で相手と勝負することができていた。同じく社会人2年目の益田はオープン戦8試合に初の開幕一軍に名を連ねた。先発する能力を備えているが、当面は中継ぎに回り「ロングリリーフも短いイニングも」チームの勝利のために腕を振る。
  
サイドスローに変えて左右打者の反応をチェックするためチーム最多のオープン戦9試合に投げた塹江。昨季の“迷走”からの巻き返しを狙う森浦。左腕コンビの出番も増えそうだ。
  
昨季48試合に投げて“給料”が跳ね上がった大道にも、大きな期待がかかる。オープン戦では球筋が安定していなかったが、しびれる場面をこなしながらアジャストしていく。
 
勝ちゲームを任される矢崎と島内に大きな問題はなさそう。2月以降、一軍帯同期間が短かった中崎翔太も首脳陣からの信頼は厚い。
  
一方で、もしかしたら若干の不安を抱えたまま開幕を迎えることになるかも?という感じの栗林は、開幕3連戦でどうか?オープン戦では5試合5イニングを投げて自責0。しかし3月16日のDeNA戦(マツダスタジアム)では度合(開幕一軍)、林(同)、蝦名の一、二、三番に連打された。(牽制アウト、盗塁アウトなどで無失点)
 
沖縄キャンプやオープン戦中盤まで大きく取り上げられた19歳の剛腕、斉藤優汰は二軍スタート。同じくオープン戦半ばまでチャレンジを続けた大卒ルーキーコンビの高太一(オープン戦5試合で防御率5・40)と滝田一希(同4試合、防御率0・00)も二軍で登板機会を増やす。
  
現役ドラフトで新加入した内間拓馬はオープン戦3試合に投げて防御率10・13。チームのオープン戦全19試合のうち7試合まででその力量を試されたが、四球からの自滅では厳しい。西川龍馬の人的補償で広島入りした日髙暖己は一度も一軍で投げる機会がなかった。
  
けっきょくオープン戦13試合を終えた時点で救援陣の陣容はほぼ固まっていたようだ。14試合目からの6試合で登板しながら開幕一軍に名前のなかったブルペン組は育成ルーキー、杉田健(もうひと息、ふた息で支配下登録のはず)だけ、だった。
 
なお、2月のキャンプイン当初は先発ローテ候補と言われていた森はオープン戦登板1試合3イニングに投げたのみ。同じく遠藤に至っては登板機会ゼロだった。ドラ1右腕の常廣羽也斗も、二軍での実戦初マウンドまでにはまだ時間がかかりそうだが焦りは禁物だ。
  
捕手3人は“額面通り”。オープン戦9試合目まで一軍に帯同していた高木翔人は北海道遠征のタイミングで外された。
  
野手ではチーム最多のオープン戦3発の田村俊介、走・守・攻でキレ味抜群の久保修のフレッシュ外野手コンビが開幕戦の舞台に立つ。チームナンバーワンの俊足、羽月もギリギリのタイミングで滑り込んだ。
 
代わりにキャンプ×オープン戦“健闘賞”でもおかしくない二俣や、田村俊介と“セット”で打力アップを目指してきた林の名前はなかった。二俣はオープン戦14試合で25打数5安打9三振、打率・200。林も14試合で21打数3安打7三振、打率・143。ともに長打力が最大の売りだが、柵越えなし。
 
チーム最多のオープン戦50打数の田村俊介に次ぐ47打数のチャンスをもらった中村健人も一軍枠から弾き出された。1本塁打も打率・152、11三振。ヘッドを使うためにトライした特徴的な打撃フォームは一軍レベルには通用しない?
 
 “改善”が吉と出たのが矢野だ。セカンド、ショートに加えて外野も守るが課題はバッティング。キャンプ序盤には結果が欲しいから力む、力むから飛ばない、の悪循環だったようにも見えたが、途中からヘッドの効く、またはファウルで粘る打ち方に変えてオープン戦16試合で26の6、打率・231プラスチーム最多の5死四球は“合格印”だろう。
 
左打者ではオープン戦打率・500(12の6)の松山を筆頭に、同・319の小園、同・286の田中広輔、同・250の坂倉、同・242おの秋山は数字だけでなく内容にも見るべきものがあった。当然と言えば当然ではあるのだが…
 
それだけに同・091の野間の“入り”が気になるところ。“突貫工事”ではうまくいかないだろう。
 
右打者ではシャイナー(同・打率111)とレイノルズ(同・打率154)の“本番に強い”キャラを願うのみ。新選手会長の堂林は同・打率214も本塁打2本を放っており、どこでも守れて何番でも打てる上本とともに両外国人をバックアップする。
  
オープン戦チーム打率は12球団最低の・211。低打率をカバーするためには塁にたくさん出て、どんどん先の塁に進み、安打以外でも得点して、走者を溜めたところでドカンと一発!
  
オープン戦19試合で同じ打順は一度もなし。まず誰が開幕一番を打つのか?そこから予想はかなり難しいが、新井監督と首脳陣はどんな“策”を胸に開幕3連戦に臨むのか…が注目される。


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