カープダイアリー第8323話「ラオウvs九里亜蓮に沸く、マツダスタジアムで3度目の球宴」

午後6時30分、プレーボールと同時に大歓声が沸き起こった。マウンドには九里、打席にはプロへの第一歩、オリックスとの仮契約をかつて広島市内のJR西日本広島支社で結んだラオウこと杉本裕太郎。
 
その第1投が背中を通過して両者が歩みより、そして抱擁…大学時代に東都リーグで切磋琢磨したふたりによる効果満点の演出でマイナビオールスターゲーム2023第2戦の幕が上がった。
 
初の球宴マウンドは回3安打1失点。3万925人の12球団ファンで埋まったスタンドにその姿を焼き付けた。
 
自分を変えるために12月末に米国アリゾナ州のドライブイン・ベースボールで「強く、速く」をイメージしながら知識と技術、トレーニング方法を学んだ。周囲からは懐疑的な目で見られもした。
 
しかし自主性を重んじる新井カープの方針にその手法は合致していたようだ。マイペースで調整を続け、5月10日の中日戦で完封勝利をマークするなどシーズン前半戦のチームを引っ張った。海外FA権も取得して、そして本拠地での夢舞台…
 
一塁ベースコーチも務めてそこから見上げる別角度のスタンド風景も楽しむことができた。プラスワン投票で桁外れの37万票近くを集めたトレバー・バウアーや今永昇太らと積極的に会話することでたくさんの刺激も受けた。「メジャー挑戦」を見据えて夢には続きがある。
 
第1戦に続いてのスタメンとなった秋山にとっても長いキャリアの中で特別な一日になった。第1打席に続き第2打席もレフトフライ。途中で交代したがセンターのポジションから目に入る幻想的な夕焼けが、車の窓越しに見える北米大陸に沈む夕日に重なった。
 
全セは八回のマウンドにターリーが立ち、九回はかつての広島新庄高校のエース、田口麗斗が立った。同校は今夏の県大会でベスト16入り。あすから頂点目指しての戦いが始まる。
 
マツダスタジアムでのオールスター開催は今回が3度目。前回は2015年で黒田博樹、マエケン、曾澤、新井貴浩、菊池、田中広輔、丸という豪華な顔ぶれになった。
 
その前はマツダスタジアム供用開始に合わせた2009年。大竹、ルイス、永川、石原慶幸、栗原、東出、赤松という顔ぶれだった。
 
ところで新井監督にとってもオールスターは特別なものだ。
 
2002年、松山坊ちゃんスタジアムであった第2戦。初選出された“将来の四番候補”は逆風の中、レフトスタンドに豪快な一発を叩き込んだ。広島から取材に来ているメディアはごくわずか、という中で中国放送のデジカメに向けて「できれば1本…」と匂わせして、本当に打った…。その「自信」を胸にこの年、初めて全140試合に出場したのである。
 
九里も秋山もターリーも、後半戦に向けてきっと貴重な2日間を過ごしたことだろう。「僕を探さないで…」と番記者らに言い残して姿を眩ませた?指揮官もきっと頷いているに違いない。

※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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