カープダイアリー第8270話「連続エラー、そしてビシエドの1号3ラン、どんな逆境も跳ね返す赤の魂…」(2023年5月25日)

山口県岩国市の由宇練習場には前日に続いて取材陣が多数集まった。

ウエスタン・リーグ、オリックス戦は4対2のスコアで九回へ。マウンドには一軍再合流を急ぐ栗林で結果は1安打無失点だった。ただし代打福永を追い込みながらフォークを中前打された。空振りの取れないフォークでは、また上に行っても同じことになる。

マツダスタジアムのナイトゲームでは、やっとの思いで一軍に呼ばれた林が手痛いミスをやらかした。

5点を追いかけて1点返した直後の七回、まず細川のゴロを一塁へ悪送球。さらに石川昂のゴロを弾いて一死一、二塁にした。そこからビシエドの今季1号3ランがレフトコンコースに弾むという落ちになった。

「インコース低目の変化球をいいスイングでしっかり捉えることができた」というヒーローの談話を聴けば、打たれた中崎はよけいにガックリ来るだろう。

13年目の右腕にとって、毎回の一軍登板はすでに死活問題のような立場にある。この日のウエスタン・リーグでは3つ年上の野村祐輔が5月2度目の先発マウンドに上がり5回で降板した。若い選手に追われる立場になれば、募るのは焦り、だけ…

林は「ザキさん」がフォークを多投していたのに、しっかり準備ができていなかった。そういう時に限って打球が飛んでくる。

相手の先発の左右に関わらずこの日で6試合連続スタメン出場。そんなありがたいチャンスがもらえるのは、球団と新井監督の思いが一致しているからだ。

昨季は通称カープロードにもその雄姿がチームメイトとともに飾られていたし、マツダスタジアム公式グッズショップには特別コーナーが設けられていた。

飛ばす力に注目する新井監督も本当は日南キャンプから主力の中で鍛えようと考えていた。ただ、全体のバランスを考えてこのプランは封印された。

本人も周囲からの期待の大きさは痛いほど感じているはずだ。

2日前に放った特大アーチで面目躍如。だがシーズンは長い。大事なのは安定感。前夜は初回に右前打を放ったあと、3打席連続で空振り三振に終わった。そのことを引きずったまま、新たな気持ちになれないままグラウンドに立つとこうなる。

しかも自分だけの問題ではない。先輩や仲間たちの足を引っ張ることになるし、ファンの声援に応えられなくなる。

4試合連続のスタメンで林のあと、八番を打つ中村貴浩も二ゴロ、空振り三振、死球、空振り三振に終わった。中日先発はここまで7試合勝てていない柳。様々な変化球を駆使して必死で抑えにかかってくる百戦錬磨の右腕からヒットを放つのは簡単ではない。

新井監督は試合後「気持ちは攻めて行って欲しい」と林の今後について語り、責めたりはしなかった。これはもう徹底されている。

一生懸命にやってのことであれば、それで良し。もしも油断や慢心が少しでもあれば、そこは秋山や曾澤や菊池の出番だ。それが新井一家…

いろいろなことが起こる中でその次の日に、その次の守りで、その次の打席でどんな姿勢を見せてくれるのか。新井監督は最初からそう言い続けている。それが赤いユニホームに袖を通す者たちの一番の強み、それが脈々と受け継がれてきた、どんな逆境も跳ね返す赤の魂…

その優しさと厳しさを生かすも殺すも本人しだい。林はまさにそういう立場にある。

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