カープダイアリー第8388話「レギュラーシーズン大詰め、は別れの季節、現役生活20年の新井監督が思うこと」（2023年9月27日）

広島市民球場跡地の東隣に立つリーガロイヤルホテル広島で、広島ドラゴンフライズの決起集会があった。

湯崎英彦知事、広島市の松井一実市長ら県内首長やクラブに協賛する企業、後援会関係者らおよそ４００人が集まる大規模ないベントだ。

ステージから選手や関係者が挨拶する中でサプライズがあった。チームの顔として広く知られるようになった朝山正悟が10月開幕の2023－24シーズン限りでの引退を表明したのである。

「私自身、ここまで長くプレーさせていただくとは本当に思ってもいませんでしたが、本当にたくさんの人に支えられここまでやってこれたかなと思っています。この大好きな広島で、大好きなチームで最後にユニホームが脱げることを、本当に幸せに思っています。自分自身のラストシーズン、最高の景色で最高の笑顔で終われるように、一生懸命戦っていきたいと思っていますので、改めましてどうか今シーズンのご声援のほど、よろしくお願いします」

広島ドラゴンフライズは今季でチーム創設から10度目のシーズンを迎える。２０２６年10月スタートの新リーグ「Bリーグプレミア」参入へのライセンス取得がかかる大事な戦いになる。（ライセンス基準はチーム力ではなく、平均４０００人の入場者数などクラブ力）

Bリーグの前身NBL時代から広島ドラゴンフライズでプレーするのはすでに朝山正悟ひとり。6月に42歳になり20年という長期に渡って現役を続ける中で、いよいよラストシーズンに挑むことになる。

新井監督も現役生活20年を全うした。山あり谷ありの壮烈な日々ではあったが、ラスト3シーズンでリーグ3連覇という最高の花道を歩いた。ただ、日本一にはなれなかった。

新井監督は選手時代に何をどうすれば良かったのか？をユニホームを脱いだあと様々な機会に考えてきた。松田元オーナーからの突然の要請によって監督就任を引き受けざるを得なくなった時に、そうした“自身の振り返り”も役立つことになった。

黒田博樹氏が球団アドバイザーの肩書で陰から支えてくれているから、選手との接し方についても心得ている。投手陣については、専門外だからよけいに丁寧な接し方になる。

この日、山口・由宇練習場であったウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦でターリーがおよそ1カ月ぶりに実戦登板した。痛めていた腰の状況がやっと良化してきたようだ。

ターリーのコンディションについても新井監督は夏前から常に気にしてきた。試合前練習時に、外野まで出向いて防球ネットの中で時間をかけて会話することがよくあった。

新井監督はブルペン陣と立ち話もする。島内もそうだ。

この日、横浜スタジアムであったDeNA－ヤクルトのナイトゲームは３対11でDeNAの完敗となった。

この1敗はDeNAにとっては痛手になった。三浦監督は、もう残り4戦全勝しかクライマックス・シリーズホーム開催の道はない、と腹をくくったことだろう。逆に新井監督は残り3試合で1勝すれば2位の座はほぼ安泰となる。

またこの試合ではヤクルト打線が打ち過ぎて、清水の出番がなかったことにより、島内の球団初となる「最優秀中継ぎ」のタイトルが確定した。

島内は前日26日の中日戦（マツダスタジアム）で新井監督の配慮により打者ひとりに投げただけでHPを41に増やした。清水は38HPで残り３戦で３HPを挙げても同着にしかならない。

お立ち台でも首脳陣の配慮に感謝の言葉を述べた島内だが、まだCSもその先の日本シリーズも…と考えて気持ちを入れ直していることだろう。

WBCに始まり紆余曲折の末に今がある栗林、それに矢崎や中崎、大道らは、新井監督の下で新たな“感触”を掴みつつあるはずだ。

一方で、実績がありながら様々な理由で一二軍を行き来する、あるいはこの時期まで一度も一軍に呼ばれていない中継ぎ投手もいる。

松本竜也のように特別な理由があるケースは別としても、期待の大きかった戸根やアドゥワは尻すぼみの感が拭えず、塹江、森浦の両左腕にとっては厳しいシーズンになった。

そんな中、投げても、投げても結果の出ない一岡が、現役に別れを告げる。２０１３年オフにFAの人的補償で広島にやって来た。昨季までの10年で通算289試合に投げて17勝14敗、84ホールド、7セーブ、防御率2・77。リーグ3連覇にも貢献して16年27試合、17年と18年59試合に投げた。
 
一、 二軍首脳陣は連絡を密にして一岡にも一軍復帰のための手段をいろいろと講じてきた。残念ながら結果にはつながらなかったが、巨人での2年間の5倍の時間、赤いユニホームに袖を通すことがきた。
 
あとは新井カープの一員として、最初で最後のマウンドに立つかどうか？長くて短い10年間に綴られた熱い戦いの日々を、カープファンは忘れないだろう。