カープダイアリー第8226話「コイのリレーはスムーズに」(2023年4月8日)

雨に祟られて空席の目立ったスタンドがぎっしり満員になった。当日券販売は内野自由席だけ。発表による入場者数は3万633人で今季初の3万人突破となった。

前日行われた、マツダスタジアム初のヒーローインタビューは大瀬良、堂林、マットの共演だった。ナイトゲーム終了は午後9時半過ぎで、冷え込むスタジアムが温かい空気に包み込まれた。

そしてデーゲームの締め括りは2日連続のトリプルお立ち台。床田と戸根と、そしてマット…

「これからもここに立てるようにがんばります」とお立ち台デビューで話した長距離砲は、有言実行となった。選考理由が勝ち越し犠飛から第1打席での先制ソロにバージョンアップした。

さらにライアンの今季初打点で2対0としてなおも無死一、三塁で回ってきた四回の第2打席では、ショート坂本の送球エラーを招く強いゴロ。ライアンをホームに招き入れ、ハイピッチ投法の巨人先発グリフィンにボディーブローも食らわせた。

「チームメイトがいい形で自分の前で塁に出てくれて打点があげられる場面を作ってくれているので、みんなに感謝しています。このチームの勝利に貢献するためにオフにカープ球団の契約にサインしたので、それが今できていることは幸せです。いい形でチームが勝てているので今度は遠征でも勝ってこの状況をキープしたいと思います」

前日のV犠飛では右打ち。この日は2段構造になっているバックスクリーンの上の部分にぶち当てた。

SEIYA SUZUKI のマツダスタジアムラストイヤーではかなりの頻度で中越えに打球が飛んだ。しかし、ここまでの飛距離は出せていない。

2日前に西勇輝から放った2号2ランもセンター方向だった。基本はセンター返し。理想的な形になりつつある。

現役ドラフト一期生の戸根は何か言おうとする意識が強すぎてお立ち台では空回り気味。だが、マウンド上では八回、床田がガズ欠気味になり2点を返されなお二死一、三塁という場面で代打梶谷を1球で打ち取った。

その床田のお立ち台は昨年7月13日以来の勝利にもかかわらず、以前と変わらぬ抑え気味トーンだった。

調子は良くなかったと前置きしながらも「無駄なフォアボールもなかったですしストライク先行で自分のピッチングができたと思います」と7回3分の1で9安打3失点の投球を振り返った。

大きなケガを乗り越え、着々と準備をしてきたにもかかわらず、オープン戦では3試合に投げて防御率10点台。時間が限られる中で修正を加えて前回、開幕第2戦で6回2安打無失点と結果を出した。

初の二桁が確実視されていた昨季は8勝後にそのまま離脱となった。その前は5勝、その前も5勝。

過去3シーズンは佐々岡前監督の下で先発を託された。ふたりの関係は二軍投手コーチ時代まで遡る。その後の一軍投手コーチ時代には新聞報道などを通じて強い口調で諭されたこともある。

開幕前、中国放送カープ特番の中で、同局プロ野球解説陣に出戻りした佐々岡前監督は新井監督と対談した。

監督経験者としての思いを伝える中で佐々岡前監督は「もっとコーチや選手と話したかったけど、僕は口下手。1年間、いろいろなことが起こる」と話した。

聞き役に回っていた新井監督が最後に自らこう切り出した。

「佐々岡さんが会見で言っていた“カープに残せたものは何もなかった”というのは違うと思います」

「先輩方」が連綿と紡いできたチームの歴史に最大限のリスペクトを送りつつ自分なりの考えで、苦難な日々に挑んでいく。それが新井流…

床田の左腕は、佐々岡-新井のバトンリレーの大切なピースの一枚だ。

この日の巨人2回戦はテレビ、ラジオとも中国放送が中継した。テレビ解説は山崎隆造氏、ラジオは佐々岡前監督だった。

できればテレコの方が良かったが「口下手」な佐々岡前監督がラジオ放送ブースで一生懸命考えた床田コメントはリスナーにも伝わったはずだ。

勝ち投手床田、セーブは栗林に2個目がついて6対3快勝。原巨人を4連敗と追い込み、勝率5割まであと1勝となった。佐々岡カープから新井カープへ。両指揮官の人柄が、スムーズなバトンタッチを成功させたことになる。

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