カープダイアリー第8259話「午後10時を回ったバンテリンドームナゴヤ、松本竜也で締めて3連勝、貯金1」(2023年5月11日)

午後10時を回ったバンテリンドームナゴヤに声援だけが響いた。中日の攻撃は一死無走者。公式発表で入場者数1万9982人。最下位に沈む中日ナインに向け、空席の目立つスタンドのボリュームはこの日最大になった。

延長十一回表、代打松山が中日7人目の田島から中越え適時打を放って3対2と勝ち越した。“G7広島サミット遠征”の入りで同一カード3連勝まであとアウト3つ。

イニング頭に送られた塹江が真っすぐ2球で高橋周平を遊ゴロに打ち取ると、松本竜也の名前がコールされた。

鳴り物なし、の中での社会人ルーキー福永への第1投はストレート。148キロが決まった。重圧のかかる場面でも物怖じしない。二回にコルニエルからレフトフェン直二塁打を放った年上26歳に対して2球目も真っ直ぐ。詰まった打球を九回からショートを守る矢野が抜群のボディバランスで難しい送球姿勢になってもうまくアウトにした。

あとひとり。二軍落ちしたビシエドに代る中日の起爆剤、鵜飼も2球で追い込みフォークで空振り三振に仕留めた。

5月5日、鯉のぼりの泳ぐ広島で阪神に0対5完封負けで3連敗。借金2まで後退したあと雨で2試合が中止になり、そこから一気に貯金1に戻した。

「サミットの遠征は関係ないですよ」と平静を装ってきた新井監督も内心一息ついたことだろう。

先の連敗中の得点は計3点。中日との3連戦の得点は1点、4点、3点とやはり1試合3点には届いていない。新井監督が鈴木誠也らとともにリーグ優勝を目指していた頃なら“5点打線”が当たり前だった。連覇した2017年の1試合平均得点は5・1点だ。

しかし今の打線にはブラッドもバティスタも丸もいない。その代わり、みんなでしぶとく食らいついてつないで、つないで1点を取りにいき、投手リレーで相手をかわす。

前日の九里の完封劇を挟み長良川では7回無失点のあとを島崎と矢崎で完封リレー。島崎にはホールドが、矢崎には今季初セーブがついた。

この日はもっと充実したリレーになった。6回2失点のコルニエルのあとは、ターリー、島内、ケムナ、矢崎で延長十回までをつなぎ、ホールド3つと白星がついた。

4人に共通するのは無四球で球数も14、16、14、16球と少ないこと。1/3を投げた塹江にもホールドがつき2/3を投げた松本竜也にはプロ初セーブがついた。やはり無四球でふたり合わせて7球だった。

実は中日の投手リレーも似たようなもので二番手勝野以降、6投手は申告敬遠1を除くと無四球で球数も8、11、13、10、9、18球。最後に失点した田島だげ多かった。

柵越え連発、そのあとヒット乱れ打ちで投手陣を援護する。リーグ3連覇を成し遂げた緒方監督の時のチームカラーと今とでは大きく様子は違っている。2000本安打、通算319本塁打の指揮官は、その実績とは異なる戦い方を、今いる選手の特性に合わせて展開していることになる。

あすからの東京ドーム3連戦でも、その戦術がうまく機能するか?そしてそのあと乗り込む横浜スタジアムではどうか?リーグ最速で20敗となった中日との3連戦は“参考記録”にしかならない。


※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?