カープダイアリー第8525話「二刀流”五輪書“の極意、井端弘和監督に続いてテレ朝松坂大輔さんも田村俊介に着目」2024年2月15日)

宮本武蔵の兵法書「五輪書」は地の巻、水の巻、火の巻、風の巻、空の巻…から成る。地の巻では自らの流を「二天一流」と名付け、空の巻では兵法の本質が語られている。

さらに他の流派の強者と戦い、そのすべてに勝利したと記されている。特に吉岡一門との決闘では吉岡清十郎、吉岡伝七郎兄弟を斬ったのち、吉岡一門の弟子たちと“1対無数の戦い”にも勝利した、とされる。
 
本当にそんなことができるだろうか…同書の執筆は寛永20年(1643年)から正保2年(1645年)。今から約380年前の話だ。
 
ところが今の時代のも、たったひとりでおよそ120年の球史を有するMLBの概念を根底から覆し、現在プレーするメジャーリーガー1200人(30チーム×ロースター40人)を相手に圧倒的な存在となった人物がいる。
 
大谷翔平、だ。
 
そのキャンプ地、米国アリゾナ州グレンデールからは、そのすさまじいパフォーマンス力が連日のように伝えられている。
 
現地時間2月14日(日本時間15日)の屋外打撃ではバックスクリーン方向などに5連発を叩き込んだ。
 
二刀流、大谷翔平についてはすでに栗山英樹前侍ジャパン監督が語り尽くした感がある。ひと言でまとめるなら「二刀流だからこその翔平」だ。
 
それがもしも刀1本、野手のみでの真剣勝負になったら、いったいその切れ味はどうなるのか?
 
その打撃を見守っていたチームメイトのひとりからは“とても激しいスイングなのにコントロールされている”という声が上がったという。実に巧い表現だ。
 
激しく振っただけでは芯を食わない打球しか飛ばない。コントロールショットを意識すれば飛距離は出ない。
 
現役時代の終盤になって、激しさと巧みさのベストミックスを実践した打者がいる。ほかでもない、新井監督だ。ドラフト6位入団で、最初の頃には2メートル手前のワンバンも振っていたが、緒方監督の下では「七夕の奇跡」など数々の神打撃を演じてリーグ3連覇に貢献した。
 
その心意気は入団当初から「空に向かって打て!」。長い年月をかけて「空の巻」を完成させたことになる。
 
2月14日には、もうひとつ、興味深い“ネタ”に出逢うことができた。テレビ朝日「報道ステーション」で田村俊介がクローズアップされたのだ。“さすがはテレ朝、野球の本質がよく分かっていらっしゃる”という声も上がったのではないか?
 
先ごろ発表された井端ジャパンメンバー最年少の二十歳。近藤健介、村上宗隆らそうそうたる左のスラッガーたちと同じ土俵で戦う。それは一流への登竜門に必ずなる。
 
番組内VTRでは松坂大輔と田村俊介とのやりとりが紹介された。ポイントになったのは「脱力」スイング。「ぎゅっと握ってる感じがまったくない」(松坂大輔さん)
 
実は宮本武蔵もいっしょ。吉岡一門の80人、90人…を相手にした際、先を見ず無心で緩く戦った時には剣が冴えわたったのに“先が見えた”と力んだとたんに劣勢に回った、というエピソードもあるらしい。
 
新井監督自身、その「脱力」がどのようなものであるか、をずっと追いかけて最終的な打撃スタイルに行きついたはずだ。大谷翔平は道具を使わないピッチングでの“しなり”を打撃にも生かして、たぶんリリースの瞬間と同じ感覚でバットのヘッドをホールに食い込ませる。
 
松坂大輔さんも、自身の投球感覚と似たものを、高校時代までは二刀流の田村俊介のスイングから嗅ぎ取ったに違いない。
 
1年前の日南キャンプの時点で新井監督は田村俊介をすでに“特別視”していたが、それが正解だったことは井端弘和監督の眼力によっても裏付けられた。
 
俊介の「介」には“よろい”の意味もある。ひと冬超えてまた体が大きくなり、確かに鎧をまとっているかのようだ。
 
そのスイングが加速し始めたら、もう誰にも止められなくなる…?この日、コザしんきんスタジアムで行われた実戦形式の打撃練習では第1打席、無死一塁の場面で内間拓馬の初球をバスター。三遊間を破ってみせると、第2打席では河野の球を押し込んで、逆風をモノともせず右越え二塁打にして見せたのである。


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