カープダイアリー第8449話「シーズン初登板でともに黒星…だった島内颯太郎と栗林良吏がオフに高い評価を受けることができた訳」(2023年11月28日)

今季のプロ野球タイトル獲得者らを表彰するNPBアワーズが東京都内で開かれ、セ・パの最優秀選手には村上頌樹投手(阪神)と山本由伸投手(オリックス)が選ばれた。

村上頌樹投手はセでは初となる(至上3人目)新人賞とのダブル受賞。

「たくさんいい選手の方々がいるので、その中で一番になれたことは嬉しい」「今年以上の成績を求めてやっていきたい」

10勝6敗、防御率1・75の成績でチームのリーグ優勝と日本一に貢献した25歳右腕。クライマックス・シリーズ、ファイナルシリーズ初戦ではカープ打線を6回3安打1失点(秋山の犠飛)に抑えた。

パ・リーグ新人王には山下舜平太投手(21)が選ばれた。

カープ勢では島内颯太郎投手(27)が最優秀中継ぎ投手賞でスポットライトを浴びた。両リーグ最多の62試合に投げて42ホールドポイント。考え方を変え、投球フォームにも改良を加えて、ポジティブ思考で2月のキャンプから一気にシーズンを駆け抜けた。

新井監督や藤井ヘッドらから「打たれてもいいから」と背中を押し続けてもらったことも大きい。

ベストナインに選出されたオリックスの龍馬も初めて華やかな舞台に立ち、パでの打撃タイトル奪取を改めて誓った。柳田悠岐、近藤健介のソフトバンク勢やチームメートになる森友哉、頓宮裕真らと熾烈な個人記録争いを繰り広げるのだろう。

この日、マツダスタジアムで契約更改を終えた栗林はどんな思いでこのニュースを聞いただろうか。2021年の新人王…

1年目53試合で負け数わずか1、37セーブ、防御率0・86、

2年目48試合で負け数2、31セーブ、防御率1・49。

それが今季は自己最多の55試合に投げたが7敗を喫し、3勝15ホールド18セーブ、防御率2・92守護神としての仕事は24セーブの矢崎と分担する結果となった。

球団側からはWBCメンバーに選出されたこと、同大会期間中にトラブルがあり腰を痛めて開幕を万全な状態で迎えられなかったことを考慮された。その結果、森下と同じく球団最速4年目で大台クリアの推定年俸1億1000万円、2000万円プラスでサインした。

新聞各紙などの写真撮影ではいい笑顔を見せた栗林だったが広島テレビ夕方ワイド「テレビ派」のスタジオでは生放送中に何度も悔しそうな表情になった。

「うまくいかないことばかりでしたし、いい思い出より悪い思い出の方が多いシーズンでした」

「1年目と2年目は投げれば良くなるシーズンでしたが、今年はやりたいことがまったくできないシーズンでした」

会見でも番組の中でも誰も触れないし本人も口にはしないが、予期せぬことが大切なシーズンを悪夢の日々に変えた。

一部報道によれば侍ジャパン帯同中にあるトレーナーの施術により腰を痛めた栗林は3月9日から始まったWBC1次ラウンドで投げることができず、みんなとの記念写真を最後の思い出としてに広島に戻った、となっている。

2021年夏の東京五輪ではフル稼働して37年ぶりの金メダルを掴みとっただけに、どれだけ無念だったことか。

腰などに不安を抱えたまま開幕を迎え、4月4日のマツダスタジアム阪神戦で1失点負けスタートを切ると、4月18日の甲子園球場では九回二死満塁で中野にサヨナラ打を許した。フォークをことごとくファウルにされ真っすぐを投げるしかなくなった。

その2日後、3点リードで九回に出番がやってきた。フォークを使えない中、先頭の中野に中前打されると3連打でまた失点。マウンドに歩み寄ってきた新井監督の右手がその背中を優しく包んだ。

「お前のこと信じてるから、と声をかけて下さったのがゲームの中では一番記憶に残っています」

そこから踏ん張って佐藤輝明レフトフライ、代打原口はショートライナーゲッツー!

「新井さんがかけて下さった言葉は、ほんとに毎日自分のモチベーションになるというか、がんばる原動力になったので、そういう自分を奮い立たせる言葉を懸けて下さったと思っています。リーグ優勝に貢献したいのが一番なので、そのためには1年目の成績を出したいと思います」

5月には初の二軍調整、というところまで追い込まれたものの、6月に北別府学さんの訃報が届いたことで20番の重みを改めて嚙み締めたという。そのころ、東京五輪閉会式に一緒に参加した SEIYA SUZUKI から「周りはどんどん進化するからお前も深化しないと生き残れない」の金言が届いた。

変えることを恐れず、左足を高く上げ右脚加重を十分に意識する投球フォームに切り替えたら真っすぐの力が増し「フォークに頼らない」新たなスタイルに近づいた。7月以降だけなら防御率1・07だ。

似た話はたくさんある。島内も開幕第2戦での初登板でその初球をオスナにレフトスタンドに運ばれるという厳し過ぎるスタートを切った。

相手のあること、どちらも勝ちたい気持ちはいっしょ。うまくいかないことはたくさんある。

その厳しさは新井監督や藤井ヘッドら首脳陣は嫌と言うほどわかっている。今のカープ家族にはその思いを共有できる体制がしっかりとできていることになる。

その試練を乗り越えるのか、潰されるのか、ふたつにひとつ…


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