カープダイアリー第8275話「メジャー級右腕vs林、韮澤、中村貴浩…敗者に待っているのは”交流戦の掟”だけ」(2023年5月30日)

京セラドームでの交流戦開幕ゲームは、夏の甲子園で大会ナンバーワン右腕に全員野球の公立校が挑むような2時間と25分になった。来季メジャーのマウンドに立つ可能性の高い山本由伸の前に、8回101球3安打1四球で0対4完敗。対オリックス戦の連敗は13に伸びた。

最速156キロの真っ直ぐと低目に決まるフォーク、時折来るカットボール、カーブの前に初回の秋山から二回の松山、坂倉、林まで4者連続空振り三振。スタンドに姿を見せたメジャー8球団の関係者が身を乗り出したのは言うまでもない。

新井監督は試合前、選手を集めて交流戦に臨む心構えを説いた。

WBC決勝で大谷翔平がチームメイトに話した時とその意図はいっしょ。自分たちで相手の影を大きくするのではなく、普段通りの気持ちで打席やマウンドに立つことこそが大事。相手にとらわれることなく自分たちの間合いで相手と対峙することできっと活路は開ける、と…

山本由伸はこの試合前まで6試合に先発して3勝2敗、防御率2・35、被本塁打1。6戦中6回降板が4度、7回が1度、7回1/3が1度。球数は85から112の間に全て収まっており、1イニング15球から17球で投げている計算になる。

前回20日の日本ハム戦の直前に発熱して先発を回避。特例2023対象選手となり中16日で巡ってきた復帰戦が交流戦初戦となった。

「交流戦初戦だったので、カード頭でもありますし、とにかく絶対勝つぞという気持ちで準備してきました」

「試合が久々だったので、いつもよりより丁寧に初回入ったので、それが良かったんじゃないかと思います」

試合後のインタビューでそう話す推定年俸6億5000万円右腕は汗ひとつかいてもいないし、疲れた様子もない。赤子の手を捻るように…じゃなくて赤ヘルのバットを捻るように、ということか…

防御率2点台だから2点くらいは取っても良さそうなものだが最初から最後までホームベースはおろか三塁ベースすらも遠い展開になった。

セカンド菊池
レフト龍馬
センター秋山
DH松山
キャッチャー坂倉
ファースト林
サード韮澤
ショート田中広輔
ライト中村貴浩
ピッチャー大瀬良

相手ではなく自分たち主体で打線を組んだら菊池以外、左打者になった。右打者の被打率3・19、左打者1・64の右腕に対して敢えてそういう選択をした。

その結果、6・5億円右腕の真っ直ぐを安打にしたのは龍馬だけ、だった。

四回の第2打席。初球から3つ続いた真っすぐを右前にライナー性で弾き返した。

さらに秋山の2球目で二盗に成功。一瞬だけオリックスベンチに対して押し気味の空気が生まれた。が、秋山は空振り三振。松山も二ゴロ。打ち取られた球はいずれもフォーク。第1打席の秋山はカーブで、同じく松山は真っすぐでともに空振り三振に倒れていた。

相手に共鳴するかのように素晴らしい投球を続けていた大瀬良は五回、先頭打者の頓宮のピッチャー返しが右スパイク外側に当たりレフト前まで飛んで苦しくなった。

続く杉本にも左前打されて一、二塁にされると七番若月には送りバントを決められた。

そして次打者茶野への2球目が坂倉の股間を抜けて失点。さらに犠飛を許した。

痛恨の1点目が無ければ2点目もなかっただろう。フォークがワンバウンドしたため記録は暴投。しかし坂倉の腰は浮いていた。最初の公式発表はパスボールでほどなく訂正された。

大差のゲームもありがちな交流戦ではあるが、総当たり3戦ずつの短期決戦ではよりいっそうの緻密さが求められる。大瀬良-坂倉のバッテリーは自分たちから勝機を手放したことになる。

2点が果てしなく遠く感じられる中、七回には秋山がカーブを中前に打ち返して塁に出た。しかし松山は152キロを打ち上げて遊飛、坂倉はストライクの高さから絶妙の軌道で落ちるフォークを空振りして三振に倒れた。

林、韮澤、中村貴浩。栄えある交流戦開幕スタメンに“選抜”された3人はフォークやカーブに惑わされて計9打数で外野まで飛んだのは1回だけ(韮澤)だった。

そこから何を学ぶことができたのか…

他会場もパ・リーグ優勢となった。

エスコンフィールド北海道では日本ハムに1-2で敗れたヤクルトが1分けを挟み11連敗。ZOZOマリンスタジアムの巨人も1-2でロッテに敗れて4連敗…

福岡PayPayドームでは中日が5―13のスコアでソフトバンク打線の餌食にされた。

一方、ベルーナドームの阪神は3-1で西武に勝って9連勝。球団月間最多記録の19勝と交流戦もノンストップ…

楽天モバイルパークでは阪神を追いかけるDeNAも3―2で楽天に競り勝った。

仮にこのままの力関係で交流戦が進めば両リーグとも上位、下位のゲーム差がますます開いていくことになる。

それが“交流戦の掟”。

負け組になりたくなければ3度の対決で勝ち越していくしかない。新井監督が言う通り、ひとたび後手に回れば「あっという間に」パ・リーグの波に飲み込まれてしまう。

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