カープダイアリー第8396話「戦力外通告の季節、岡田勝利投手はヤクルト村上に1号弾供給日がラスト、薮田は一軍最終登板で満塁弾被弾のあと連続死球…」(2023年10月5日)

マツダスタジアムグラウンドではクライマックス・シリーズに向けた全体練習が行われていた。新井監督も表情もいつもながら明るい。

しかし、10月の秋空の下、最高のモチベーションで臨む充実した時間とは無縁の選手もいる。

カープ球団から薮田(31)、岡田(29)、三好(30)と育成の木下(22)、行木(22)、中村来生(20)に戦力外通告したことが発表され、それぞれチームへのあいさつも済ませた。

いずれも今季のウエスタン・リーグの成績を見れば、やむなし…

育成の3選手はまだ若い。ともに現役続行を希望している。木下は2月の日南キャンプが一番輝いた舞台になった。新井監督からも注目された。

しかし実際は“カラ元気”だった。天福球場で行われた紅白戦全3試合でスタメン出場したものの結果は伴わずその後はずっと二軍暮らし。しかも二軍戦にスタメンで出る機会すら限定的だった。

二軍戦でもベンチスタートが常だった三好はすでに腹を括っていた。球団に残り新たな道を進む。

ファンに対するインパクトでは2015年のドラフト2位薮田と2016年のドラフト1位岡田の同時戦力外通告が一番だろう。

だがすでにウエスタン・リーグとセ・リーグ同時終了の10月1日以前に球団内では決定事項となっていて、現場のみんなも知っていた。

“剛腕”として黒田球団アドバイザーの後継者としても期待された岡田は2021年オフの右肘手術を経て復活を期したが思いは叶わなかった。

2017年には141回1/3を投げて12勝5敗でリーグ連覇に貢献した。しかしローテ定着を目指す2018年は試行錯誤のシーズンになった。

そして9月16日、大入り満員の神宮球場で村上にプロ1号弾を献上した。スタンドのカープファンの手には「M 4」のプラカードが揺れていた。引退を表明した新井貴浩の「神宮での最後の雄姿」に熱い声援も送られていた。岡田が勝利投手になった最後の日だった。
 
その「新井さん」が監督になって、おそらく自身も最後の挑戦だと思って挑んだシーズンも残念ながら不発に終わった。二軍戦ではまともにストライクが入らないこともよくあった。もう相手のバットをへし折るような剛球を投げることはできない。
 
二軍戦ではまるでペアのように岡田と同じ日に投げてきた薮田も同じく制球さえままならない登板が繰り返された。それは今に始まったことではない。岡田と競うようにして2017年に129回を投げ15 勝3
敗の“快記録”を叩き出したあと、すでに4シーズンにも渡って同じことを繰り返してきた。
 
左打者への攻め方に苦労して四球連発。真っすぐの出力不足で主武器であるツーシームも通用しない。
 
それでも松田元オーナーが母親の運転するタクシーに乗車した縁で始まった契約なので“六別枠”の優遇を受け、減俸も最低限に抑えられながら再起の時が模索された。
 
ただし、一軍で実績を残すことができたのは1シーズンのみだから“再起”という表現は本当は当てはまらない。
 
「まだまだ現役でやれると思ってますし、続けるつもりなので、1年間かけて気持ちの面でも野球の面でも準備してきたので、はい…次に向かってやっていこうという気持ちになっています」(薮田)
 
推定年俸4800万円に達した2017年契約更改のあと、薮田はその年に婚約届を出したkarunaさんとバラ色のオフを送った。平和大通りは毎年、イルミネーション(ドリミネーション)に彩られる。その光もいっそう輝いて見えたに違いない。
 
ところが翌2018年2月の天福球場では、最初の実戦登板で緒方監督から厳しく叱責された。あまりにも酷い状態だったからだ。この年、わずか2勝。本当はこの時点で薮田のプロとしての戦いは終わっていたのではないか。それでも今季も5月に2試合、6月に1試合、計4イニング、一軍マウンドに立った。
 
最後の登板となったのは6月1日のオリックス戦(京セラドーム)。九回、一死から3連打されると四球を挟んで育成4位ルーキーの茶野に満塁ホームランを許した。
 
さらに中川圭と森にぶつけて、頓宮には四球…。本来ならそんな状態の投手が一軍で投げられるはずもない。新井監督はこうしたペナント争いには邪魔でしかない“オーナー枠”とも向き合いながら2位の座を勝ち取ったことになる。

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