カープダイアリー第8564話「春雨前線居座る中、田村俊介11タコフィニッシュで久保修が横一線に並ぶ」(2024年3月24日)

朝から雨模様のマツダスタジアム。関係者入り口横のソメイヨシノはまだつぼみのままだった。
 
福岡での2連戦から広島に戻り、迎えたオープン戦ラストゲーム。この日、一番の“収穫シーン”は2点先制の場面にあった。
 
ソフトバンク先発は大卒ルーキー右腕の岩井俊介。初回はわずか6球で3者凡退…。
 
スタメン
DHシャイナー
セカンド菊池
ショート小園
サードレイノルズ
キャッチャー坂倉
ファースト堂林
ライト田村俊介
レフト上本
ピッチャーアドゥワ
 
迎えた二回、先頭のレイノルズは完全なボール球を空振り三振。続く坂倉は8球目をセンター左へ落として見せた。これぞ粘り勝ち、という一打になった。
 
堂林はボールカウント2-2まで球筋を見て、ひと振りで中前打。田村俊介が中直に倒れて二死一、二塁となり、上本が1ストライクナッシングからセンター右に適時打を放った。
 
突然、コンタクトされ始めた岩井俊介は相当、焦ったはずだ。昨夏の日米大学野球では優勝に貢献し、真っすぐには絶対的自信を持っているはずなのに、見右打者ふたりに、いとも簡単にセンター返しされたのだから…
 
スタンドが沸く中、打席に入った久保はホームベース角にバットの先で2度触れたあと、左手人差し指を開放してグリップ、右手は一度、握り直した。もちろんヘッドを走らせるためのルーティンだ。
 
そして上本の適時打から50数秒後、その初球真っすぐは、快音とともに、またしてもセンター左へ弾き返された。雨雲も一掃しそうな連続タイムリー!二塁に滑り込んだ久保はしかしクール…
 
勢いづくそのバットは、七回の第3打席でも育成右腕の古川から右前打を放ち、守備でも正面に飛んできた難しい打球をスライディングキャッチした。コンディション不良の秋山と野間がこの日、出場を見合わせる中では開幕一軍はもう確定だろう。
 
3月頭の倉敷遠征、そのあとのマツダスタジアム地元“開幕”3連戦と北海道遠征までは、スタメン、代走などの途中出場で試されてきた56番だったが、そのあとマツダスタジアムでのDeNA戦と所沢遠征には帯同せず、二軍調整に回った。
 
その成果が問われることとなった今回の3連戦、その初戦で九回に回ってきた唯一の打席を生かして左翼越えにプロ1号、最終戦でもらったスタメンのチャンスもきっちりモノにした。ルーキーイヤーの昨季は二軍戦61試合で打率・190、本塁打ゼロ…だったから大躍進の気配が漂う。
 
「出番が来れば、持っているものをすべて出し切るつもりで、いい準備をして開幕を迎えたいなと思います。打席に立てる機会があれば、ヒットを打ちたいなと思います」(久保修)
 
「守備でもいいプレーがあったし、少ない打席で結果を出しているし、キャンプ、オープン戦ですごく成長した選手」(新井監督)
 
ここまで数字の上でも話題性においても頭ひとつ抜けていた田村俊介の方はこの3連戦ともスタメン出場して開幕に備えた。が、結果は三ゴロ、空振り三振、見逃し三振、遊ゴロ、遊飛、見逃し三振、ニゴロ、一直、左飛、中飛、左飛で11タコに終わった。
 
年の差3つの未来の中軸候補が開幕前の時点で横一線に並んだことになる。
 
投げる方では、新井監督から先発再挑戦を命じられ、結果的には2日前に「6番手」の座に指名されたばかりのアドゥワが3回41球1安打ピッチング。DeNAとの開幕3連戦では九里、森下のあとを受け、5年ぶりとなる先発マウンドに上がる。
 
「ゼロで終われたので、良かったかなと思います。きょうは右のツーシームと左のカットを意識して、多く投げ、それで刺し込めれたのでやりたいことはできたかなと思います」
 
立ち上がりでは、当たっている周東にいきなりの中前打を許したが、スタートを切られないよう、工夫しながら、あとの3人を抑えた。特に四番・山川を二飛に取った内角球には力があった。五回には近藤の懐も突き、ニゴロに仕留めた。
 
投手陣はその後も島内、杉田、岡田、河野、森浦、大道とつないで、オープン戦で12球団ナンバーワンの攻撃力を維持したソフトバンク打線相手に完封リレーを演じた。
 
2シーズン目を迎える新井カープのオープン戦最終成績は、19試合6勝8敗5分け、10本塁打、54得点58失点(1試合平均それぞれ2・8点と3・1点)打率・211は12球団最下位、防御率2・59は同4位、という投高打低フィニッシュとなった。
 
 
 
 
 
 
 
50数秒後、打席に入った久保にはまったく迷いがなかったようだ。
 
督も「守備でもいいプレーがあったし、少ない打席で結果を出しているし、キャンプ、オープン戦とすごく成長した選手」と大感激。試合後の「公式戦では先発もある?」の振りに「もちろん、もちろん」とうなずいた。
大卒1年目だった昨季はウエスタンで61試合に出場したが、一軍で安打は放てず。試合後の本人は「初ヒットをまだ打ててないので、打席に立てる機会があれば、打てたら」と、2年目でのプロ初安打に思いをはせる。
さらに「ここからが勝負ですし、自分に出番があれば持っているものを全て出し切るつもりで。1試合1試合いい準備をして臨みたい」と初の開幕一軍入りへ、さらに気持ちを高ぶらせていた。


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