カープダイアリー第8566話「災いは突然に…“彼が僕の口座からお金を盗んで、なおかつ僕の周りのみんなにウソをついていた…”大谷翔平会見のその先に」(2024年3月26日)
朝方、マツダスタジアム関係者入り口を通過する選手たちを、まだ花が3つ4つのソメイヨシノが見下ろしていた。
隣接する屋内練習場で始まった全体練習には、足に不安を抱える秋山も参加して、打撃練習も行った。「一軍の空気」を大事にするプロ14年生は、2日前のオープン戦ラストゲームを欠場して、開幕スタメンが危ぶまれている。
だが、誰かに先発の座を譲れば、ポジションを奪い返すのには時間がかかることもある。だから「はい、そうですか」と簡単にベンチスタートを受け入れる訳にはいかない。
逆にこのタイミングでの離脱となったのが森下。3日前のソフトバンク戦(福岡PayPayドーム)のあと右肘の張りを訴えた。その後、一軍帯同を希望したものの新井監督から「万全の状態でマウンドに上がってほしい」とストップをかけられた。
一昨年、右肘手術に踏み切り、昨季は患部の状態と相談しながら慎重にスタートした右腕は勝ち星を9つまで増やし、今季は「勝利数にこだわる」と張り切っていたのだが…
なかなか思うようにはいかない。それがこの世界。
だが、全米一斉開幕を3日後に控えたMLBの方は”この世界”でも極めて特殊な激震に見舞われており、その当事者のひとりでもある大谷翔平が、ついに現地時間の25日夜(日本時間の26日午前6時45分ごろ)ドジャースタジアムでマイクの前に座った。
ことの重大さを受け、NHKは朝のニュース枠でその様子をそのまま報じた。
「チームの関係者のみなさん、僕自身もそうですけど、ファンのみなさんも厳しい一週間だったと思うんですけど、みなさんも含めて我慢、ご理解をしていただいたのはすごくありがたいなと思っています」
「まず、僕自身も…信頼していた方の過ちで、悲しいというかショックですし、今はそういうふうに感じています」
「現在進行中の調査もありますので、きょう話せることに限りがあることを、まずご理解いただいきたいということと、きょうここに、詳細をまとめた、みなさんにわかりやすく説明するためにまとめたメモがありますので、そちらの方に従って、何があったかというのを説明させていただきたいな、と思います」
「まず始めに、僕自身は何かに賭けたりとか、誰かに代わってスポーツイベントに懸けたりとか、それをまた頼んだりということはないですし、僕の口座からブックメーカーに対して誰かに送金を依頼したことももちろん、まったくありません」
「ほんとに数日前まで、彼がそういうことをしていたというもの、まったく知りませんでした」
「結論から言うと、彼が僕の口座からお金盗んで、なおかつ僕の周りのみんなにウソをついていたっていうのが、まあ結論から言うとそういうことになります」
「まず始めに言うと先週末、韓国ですね、僕の代理人に対してメディアの方から私が、僕がですね違法なブックメーカーに関与しているのではないか、という、スポーツ賭博に関与しているのではないか、という問い合わせがありました」
「一平さんは、こういった取材があることを僕の方に話してはいなかったし、僕の方にそういう連絡は来ていなかった、ということと、一平さんは僕と話して分かったのは、一平さんにではなく、某友人の借金の肩代わりとして支払った、と僕の代理人も含めてみんなに話していました」
「その翌日、さらに尋問で一平さんは、僕たち代理人に対して、借金は自分のもの、つまり一平さん自身が作ったものだということを、説明しました」
「それを僕が肩代わりしたという話を、その時に代理人に話しました」
「そして、これらはまったくすべてがまったくウソだったという…」
「一平さんはその時、取材依頼のことを僕に伝えていなかったですし、代理人の人たちに対しても、僕はすでに彼と話してコミュニケーションを取っていたということを、ウソをついていました」
(通訳から確認され再度)「チームにも、代理人の人たちにも、僕とコミュニケーションを取っていたとウソをつきました」
「そして僕がこのギャンブルに関しての問題を初めて知ったのは、韓国の第1戦が終わったあとに行われたチームミーティングの時です」
「そのミーティングで彼は全部英語で話していたので、僕にその時通訳はついていなくて、完全には理解できていなくて、何となくこういう内容だろうなというのは、おそらくは理解できていましたけど、何となく違和感をその時は感じていました」
「その時彼は、僕に対して、ホテルに帰ったあとでふたりで、より詳しいことを話したいので今は待ってくれ、と言っていたので、僕はその時はホテルまで待つことにしました」
「一平さんがミーティングの時にギャンブル依存症だと言ったのを、もちろん知らなかったですし、彼が借金をしていることも、そのミーティングの時はもちろん知りませんでした」
「もちろん彼の借金について、僕は同意していませんし、ブックメーカーに対して送金を許可したことも、もちろんないです」
「そのあと、試合後、ホテルに戻ってそこで初めて話をして、彼に巨額の借金があることを、その時、知りました」
「彼はその時私に、僕の口座を勝手にアクセスしてブックメーカーに送金していたということを僕に伝えました」
「僕はやっぱりこれはおかしいなと思って、代理人に話したいということで、代理人たちを呼んでそこで話し合いました」
「話が終わって、これを聞いて僕の代理人も彼にウソをつかれていたということを初めて知って、すぐにドジャースのみなさんと弁護士の人たちに連絡しました」
「ドジャースのみなさんも代理人の人たちも、初めて自分たちもウソをつかれていたということをその時に知りました」
「そして弁護士の人たちは、これは窃盗、詐欺なので警察、当局に引き渡すという報告をその時にしました」
「これがそこまでの流れなので、僕はもちろんスポーツ賭博には関与していないですし、さっきも言いましたけど、送金をしていたという事実はまったくありません」
「正直、ショックという…まあ言葉…がまあ、正しいとは思っていませんし、それ以上の…うーん…言葉では表せないような、えー感覚でこの一週間ぐらいはずーっと過ごしてきたので…今はそれを言葉にするのは難しいなと思います」
「ただシーズンも、もう本格的にスタートするので、ここからは弁護士の方々にお任せしますし、僕自身も警察当局に全面的に協力したいなと思います」
「気持ちを切り替えるのは難しいですけど、シーズンに向けてまたスタートしたいですし、きょうまずお話できて良かったと思っているので、きょうは質疑応答は、これが今お話しできるすべてなのでしませんが、これからさらに進んでいくと思ます」
「以上です、ありがとうございました」
この会見により「他人の口座から巨額の資金をいともたやすく盗むことができたのはなぜか?」「大谷翔平は自分の口座から数億円が消えても本当に知らなかったのか?」など一部、疑問をさらに指摘する報道は残ったものの、大半の謎はすべて白日の下に晒された。
要するに11年間にも渡って苦楽を共にしてきた年上の相棒は、大ウソつきでしかも最後の最後までウソをアップデートし続けるとんでもない人物だった…
そして「相手」が巨額の借金を背負っていることを知った時期、口座からの送金を「彼」が自分で行ったこと、大谷翔平自身はギャンブルとは無縁であること、この大事な3点がはっきりした。
近すぎるから見えない…はよくある話だが、バディを組んだ相手にそんな裏の顔があろうとは…
映画にもないような大どんでん返しに巻き込まれ「ピートローズの再来」などとギャンブラーのレッテルを張られかけた“ユニコーン”は、しかしやはり”不死身”だった。用意したメモも見ずに会見を明瞭に完結し、結論を先出ししながら短い言葉で語り尽くして、ギリギリのタイミングでまた本来のステージに戻ってきた。
災難は突然に降りかかってくる。
現地時間26日の午前1時30分ごろ、米国メリーランド州ボルティモアでは、大型貨物船がボルティモア港に架かる橋に衝突して、あっという間に首都ワシントンとニューヨークを結んで1日3万台以上が利用していたという大動脈が崩壊した。
この港湾から車で10数分ほど内陸部に入れば、マツダスタジアム建設時にそのモデルとなったオリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズ(1992年4月開場)がある。
さて、日本のプロ野球と、2シーズン目を迎える新井カープとその本拠地マツダスタジアムには、今シーズンどんな未来が待っているのか…???
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