カープダイアリー第8530話「九里と大瀬良、ふたりの特別な関係は続く、これからもずっと…」(2024年2月20日)

曇り空から一瞬、強い陽射しがマウンドに降り注ぐ。そこにゆっくりと足を運んだのは九里だった。午前11時から予定のシート打撃直前のことだった。

打席には田村俊介が入った。防球ネットが置かれてはいるものの真剣勝負!4球目でセンターフライ。続く初球は快音を残して低い弾道でライト前に弾き返された。

どうやら真っすぐオンリー。続く菊池はいきなり初球打ちでこれはセンターフライ。さらに初球打ちでレフトフライ。3スイング目はレフト前ヒットになった。

3人目はジェイク・シャイナー。結果は初球打ちで、詰まったセカンドフライ、また初球打ちで詰まったショートフライ。3スイング目は振り遅れファウル、4スイング目はセンターフライ、5スイング目はライトフライ。

ここまで15球でボールは2球だけ。そのあとは田中広輔に5球目を打たれてセンターライナー、堂林にはレフト前ヒットとサード頭上を抜かれるツーベースを許した。

「打者の反応が見たかった」というこの日の初実戦登板は、まずは開幕投手の大役に向けて順調なものとなった。

「ある程度、次の課題が見えてきた。次の実戦登板に向けて、しっかり準備したい」

続いて“本隊”のシート打撃の時間となり、防球ネットが撤去された。投げたのは九里と開幕投手を競った床田と森下、それに矢崎、島内、栗林、新外国人のトーマス・ハッチだった。

練習メニューはシート打撃のあと野手はランチタイムになり、投手はランチ、コンディショニングとランニングという流れ。午後1時半ごろになるとファンがスタジアム正面のフェンスに沿って集まってくる。サインをする選手の中には大瀬良がいた。

“みんな”が同時にシート打撃に投げているのに“6年連続”を目指していた右腕だけがまだ投げていない。きっと複雑な心境だろう。

新井監督は「昨年の頑張りがあったし、彼自身も開幕戦で投げたいと思っていただろうから…」と同じ11年目右腕でも九里に白羽の矢を立てた。意外といえば意外なジャッジメントではあった。その瞬間に14番と11番の立場が逆転した。

ただし、ふたりのライバル関係はこれまで特別なものであったし、それはたぶん今後も変わらない。

「去年まで5年連続で開幕投手を務めていたピッチャーですし、僕は初めてなので、分からないことだったり、そういうところは少しでもアドバイスしてもらいながら、シースンに入れば同期入団ろしてずっとやってきているので、切磋琢磨してやっていければいいかなと思っています」

キャンプの朝は早い。投手陣は午前9時を回ると一度、コザしんきんスタジアム外野に集合してアップを行う。最初はフェンス沿いのウォーキングから。後ろの方をふたり、並んで歩くのはどちらが開幕投手になっても変わらない。

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