カープダイアリー第8299話「2勝1敗で原巨人抜き3位に浮上!森-大道-栗林-島内-矢崎の投手リレーが誇れる訳」(2023年6月25日)

3対2のスコアで接戦をモノにして、巨人に2勝1敗と勝ち越し3位に浮上した。ゲームセットを見届けた原監督は、4位後退の悔しさを包み隠すように、すぐにベンチ裏へと続く階段を降りて行った。

お立ち台にはプロ2勝目、マツダスタジアム初勝利の森と、二回に難敵の山崎伊織から先制7号2ランを放ったマットが上がった。

「やっぱり嬉しかったですし、きのう大地さんが言ってくれたように、ファンの方々の声援が背中を押してくれました」

森の第一声はなかなか深いものだった。必死の思いで自身に勝ちをつけた大瀬良が前日のインタビューの締めで「あしたは翔平が投げます!彼の背中を押してあげてください」とファンに呼び掛けたことを受けてのものになった。

スタンドとグラウンドレベルの距離がまた少し近くなった。SNS全盛の令和の時代における選手とファンの関係はこうした形が理想だろう。

今季初先発のマウンドに上がる心構えについては「ゾーンでどんどん勝負していこうという気持ちで序盤から全力でいきました」とコメントした。「どんどん相手と勝負してどんどん攻めていけたので、その部分が良かったかなと思います」とも言った。

床田、森下、九里、大瀬良に続く五番手、六番手を誰にするか?仮に固定できないなら、誰にいつ投げてもらうか?

コルニエルは再三の先発テストの末「不可」になった。交流戦期間中にトライした黒原と河野佳も、相手に思うようなスイングをさせない投球はできなかった。

新井監督がスポーツウェア姿で視察した昨年11月の日南秋季キャンプ。紅白戦に投げた森は3回パーフェクトで春の主力組キャンプ切符を手にした。

2月1日、宮崎・日南キャンプ初日。朝のキャッチボールで最後まで投げていたのが森だった。テーマを持って、気になるところをとことんチェックして、そして開幕ローテへ…

そんなプランを本人も、そして首脳陣もしたためてしていたはずだが結果は違ったものになった。

2月12日、紅白戦初戦。紅組の遠藤とともに先発して、初回には堂林にフェン直二塁打を打たれ、二回も1安打2四球だった。

それから1カ月とちょっと。3月18日、チームにとっては10戦目となるオープン戦がマツダスタジアムであった。まさに腕試しのマウンド。

しかしオリックス打線を前に4回2失点で球数90。3安打しか打たれなかったし三振も6個奪ったが与えた四球が6つ。立ち上がりからテンポが悪く、打者の顔の高さに浮くような“暴発”が目立った。

試合後の新井監督の感想は「彼の持っている力の半分も出せていない」。二軍での長期調整が決まった。

その二軍戦でも調子はなかなか上がらず、やっと5月後半からスピンの効いた球がゾーンにビシビシと決まるようになった。力んで投げて、バックの守りのリズムを乱すようなピッチングは一軍では通用しない。増してや先発を狙うなら最低でも100球前後で試合を作る必要がある。そのためには意味のないボール球をいかになくしていくか?

手強い巨人打線に対して坂倉のサインに頷きながら「ストライク先行」で序盤3回1安打。四回は吉川と岡本和真に二塁打を打たれ1点差に詰め寄られたがその裏、田中広輔に適時打が出てまたリードが2点になった。

五回にも1点を返されなおも二死三塁…。だが誰も助けてはくれない。頼れるのは自分の左腕だけ。最後はサインに首を振ってフォークを選択。空振り三振に仕留めて責任回数をクリアした。

その後は大道、調整を急ぐ栗林、島内と繋いで最後は矢崎。ホールド3つとセーブがつくリレーのおかげで森はウイニングボールを手にすることができた。

大きく取り上げられることはないだろうが、この日は5投手で与四球ゼロ。先発がいい流れを作ればこういうことだってある。

ウエスタン・リーグ9試合で計38回を投げ39三振を奪った森は一方で1試合平均4個弱の四球を出している。

もう、そろそろそんなスタイルから脱却して、どこにも負けない顔ぶれが揃う先発陣の仲間入りした方が良くないか?

「森が(今季は)初先発ですかね?期待通りのピッチングをしてくれましたね、がんばってくれました」

新井貴浩も持てる力を存分に発揮した左腕の78球6安打5三振の投球内容を「期待」に違わぬものだと評価した。

そう「期待」してもらえるのはある限られた期間だけ。一番怖いのはファンからも首脳陣からも仲間からも「期待」されなくなること。

もちろん「期待」を「信頼」に変えていくにはまだ長い時間が必要になる。プロ1勝目は昨年9月7日の中日戦(バンテリンドームナゴヤ)で5回3安打4四球2失点だった。3勝目までのインターバルをどれだけ詰めることができるか?背負っている看板は「即戦力」、残された時間はそう長くはない。

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