カープダイアリー第8349話「名残の夏の攻防戦…台風かすめるマツダスタジアムで小園海斗vs森下翔太」(2023年8月15日)

台風7号が和歌山県に上陸して大きな被害をもたらしながら近畿を北上した。午後6時、試合開始の時点では青空も見えたマツダスタジアムは途中、強い雨に見舞われ、午後10時を超える激戦となった。

鳴り物応援のないマウンドに上がった矢崎は、バンテリンドームナゴヤでの2連発被弾サヨナラ負けから中2日。7対5のセーブシチュエーションで10連勝中の阪神ストッパー役を任された。

だが八番木浪に浮いたフォークを左前打され、代打小野寺には浮いた真っすぐを右前打された。無死一、二塁…

41年ぶりの11連勝を目指す三塁側ベンチの岡田監督は、いつものように首を捻りながら戦局を静かに見つめていた。一塁側ベンチの新井監督の顔にはジットリと汗が滲んでいた。

ひょうひょうとした表情だった矢崎も一番近本を迎えると顔から汗が噴き出していた。4割近い得点圏打率はリーグトップ。バットを一握り短くもってミートしてくる。サヨラナ連発弾に続いて同点タイムリーを許す訳にはいかない。

結果は浮いたフォークで4・6・3の併殺網に引っ掛けることができた。完全な打ち損じ。運が味方してくれた。

ところが続く中野には外のフォークをサード頭上に打ち返され1点差。放送ブースのカープOB山内泰幸さんは思わずこう漏らした。

「なかなか難しいですね…、ほんと連勝チームらしいですよね」

「一番当たっているバッターに回ってきましたね、できれば中野選手で切りたいところだったんですけど連敗(1分け挟む6連敗)をストップするというのは苦労がありますね」

打席にはカープ戦に燃える?森下翔太。初回には先制2ラン。これは6月30日の甲子園に続く大瀬良からの一発で、“そういう星の下にある”ということなのだろう。

三回の第2打席では2点適時二塁打を放ち、佐藤輝明の適時打でホームも踏んだ。五回の第3打席も二番手大道から左前打すると、八回の第4打席も島内から左前打して4の4…

滝のように汗を流しながらセットに入った矢崎は坂倉のリードにうなづくとボールカウント1-2から低目にフォークを投じた。空振り三振でゲームセット!

真っすぐを低目に投げてればこの日2本目の2ランを浴びていたかもしれない。そのスイング軌道は大瀬良の148キロ低目をレフトスタンドに叩き込んだ時と同じだった。ルーキー恐るべし。

そのホームラン談話は「打席に入る前からランナーを還す準備ができていました。追い込まれていたけど食らいつく気持ちで難しい球をうまく捉えることができたと思います」というものだった。

さらにタイムリー談話も「この回、始まる前から近さん、たくむさんがチャンスで回してくれることをイメージして準備してイメージ通り最高の場面で回ってきましたし、思い切っていいバッティングができたと思います」。

この試合、負ければ阪神に優勝マジック29が点灯していた。それなのに大瀬良が4回5失点で降板したから明らかに劣勢…

それを弾き返したのは森下翔太に負けない、小園のバットだった。

初回、西純矢のインスラを軸回転でライトスタンドへ。低い弾道の4号同点2ランになった。

4対5、1点を追いかける六回の攻撃は先頭マットが右中間スタンドに同点ソロ。さらに一岡死一、二塁となって阪神が島本にスイッチしたところで強い雨が降ってきた。中断14分間で試合再開。野間は左飛に倒れたが小園はその初球、浮いたフォークをレフト前に運んで6対5。龍馬も続いて7点目が入った。

準備に関しては小園も森下翔太に負けてはいなかった。「映像を見たりスコアラーの方と話をしたり対策を練りながらいい時間を過ごすことができました」

雨が上がるのを待って、飛距離の出るドライバーショットモードから確率を上げるミドルアイアンモードに切り替えた。ヘッドを柔らかく使ってお手本通りショートの頭上へ狙い打ち。価値ある3打点になった。

走者を置いての打席を踏まえて今季初の「三番小園」に踏み切った新井監督。その策は見事にはまったことになる。

「あそこはほんとに龍馬も粘って、粘って、小園もナイスバッティングでしたし、打つ方でも各自球際の強さを見せてくれたと思います」

「ほんとにウチらしく全員で戦って全員でがんばって、全員で止めた連敗だと思います」

その小園とともに遅い時間のお立ち台に上がったマットは、3万人を超える入場者のあったスタンドに向けてこう言った。

「私の野球人生でこれだけ多くのファンの前でプレーするのは初めてです。本当に楽しくエキサイyティングなシーズンを過ごしています」

「We have a great team」「全員で全力を尽くして勝利を目指します」

小園もファンに共闘を呼び掛けた。

「少し開いていますけども、これから優勝するつもりでがんばっていますし絶対に勝つので応援よろしくお願いします!」


※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。


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