カープダイアリー第8360 話「末包、マット、堂林で巨人戦3発の8月20日お立ち台その続編…」(2023年8月29日)

京セラドームに乗り込んでの、巨人主催ゲームは劣勢の展開となった。五回に先制、六回にはマットに8月9本目となる18号ソロが出て2対0としたが、六回に九里が長野のソロなどで3点を奪われて逆転され、七回にも失点して2点のビハインドになった。

1953年8月29日、ちょうど70年前のきょう民放初のナイター中継が日本テレビによって行われた。舞台は後楽園球場、カードは巨人対阪神。中継カメラはわずかに2台だったという。

プロ野球中継70年。ゆえにこの日の日本テレビ系制作の中継にも力が入っていた。懐かしい映像なども使いながらの盛り上げ中継となり、こんな原監督のコメントも流した。

「テレビをつけたら巨人戦、という時代に育ちましたからね」

栄華を極めた巨人絡みの地上波中継は、昭和から平成初期にかけてスポンサー殺到で莫大な利益を、日テレを中心とした読売グループにもたらしてきた。もちろん今は昔…の話だ。

中継の中では日本テレビ・読売テレビの解説を務める赤星憲広さんが「関西なのにスタジアムに詰めかける巨人ファンの多さに驚いた」とも“解説”した。関西経済圏で読売新聞やスポーツ報知を拡販するためには巨人ファンを味方につけるのが一番だ。

レフトスタンドの赤いエリアを除けば大半は巨人ファン。京セラドームは“ほぼジャイアンツで決まり”の空気が漂っていた。

そんな中、八回に登板した高梨の制球の乱れに乗じて、先頭の龍馬と二死からの曾澤が四球を選んだ。ネクストバッターズサークルにいた末包は、朝山打撃コーチの言葉に頷いて打席へ向かった。

「そして新井監督が代打を送ります。ジャイアンツベンチは動きがあるのか…、まずは代打の末包、原監督は腕を組んでベンチに座っています。右の末包に対して右ピッチャーという選択もあるんですが、ここは高梨に託します。おととい初回、5号満塁ホームランを打っている末包…」(実況アナ)

左サイドスローから投じられた初球、インコーススライダーをスイングした末包はそこで短い時間に頭の中を整理した。ボールとバット軌道がかなり離れていた。

「得点圏は4割を超える打率を誇っているこの末包、4割3分8厘、ホームラン2本、ホームランが出れば一気に逆転、ツーアウトランナー二塁一塁」(同アナ)

外にシュートボールがふたつ外れたあと受ける大城卓のミットが内角に寄った。

「インコース…さあ、末包の打球は…」(同アナ)

その瞬間にもう高梨は膝をついて高々と舞い上がった打球に観念した様子だった。大きな弧を描いた逆転弾はレフトポール際の5階席を埋めるカープファンの下に届いた。

新井監督が朝山打撃コーチ、藤井ヘッドとハイタッチ。野球中継の醍醐味が存分に詰まったカット切りの連続となった。

5対4で逆転勝ちに成功したチームには試合後、阪神敗戦の吉報が届いた。これにより阪神の優勝マジックは消滅。最後まで絶対に諦めない、新井カープ1年目の戦いが簡単には終わらないことが改めて証明された。

「僕たちは勝ち続けるしかないんで…」という末包のヒーローインタビューにカープファンは大満足だっただろう。

「チームは勝つという気持ちでやっていたので、その流れといいますか、自分も勝つという気持ちで打席に入れたので本当にいい結果が出て良かったと思います」

「打てる球は少ないと思ったので狙った球だけを絞って一振りで何とか決めようと思いました」

「自分が生きる道は長打なんで2日続けて打てて良かったと思います」

開幕から長く二軍調整が続き、一軍に呼ばれてからも不完全燃焼の日々が続いた。

6月16日の今季1号(西武戦)をバックスクリーンに運んでから7月26日のヤクルト戦で2号3ランを放つまでに27試合を要した。

8月20日、チーム111試合目で4号ソロを放って14号2ランのマット、7号3ランの堂林とお立ち台へ。その場で活躍の「きっかけにします!」と宣言した。まさに有言実行。そしてまた巨人戦…

翌20日、メンデスから4号ソロを打ち2試合連発をやってのけると、117試合目でヤクルト高橋から初回グランドスラムを放った。

ここまで5発はいずれもマツダスタジアム。打球の方向は中、右、左、左、右だった。

このことは末包がセンター方向を中心に、決して柵越えしたいがために引っ張るような打撃をしていないことを意味している。あとはコース、高さ、スポ―ドなどによって打球の方向はその時々で違ってくる。

初球で空振りしたインスラを頭に入れながら4球目で仕留めることができたのは、その打撃スタイルが昨季までとはまったく違う次元へとステップアップしつつあることの証左だろう。

ホームランは野球の華であり、指揮官自身も大アーチを数多く放つことでチームとファンのために勝利を呼び込んできた。カメラ台数や中継技術が飛躍的に増え、向上した今の時代のナイター中継にあってもやはり一番の見せ所はスタンドへと伸びていく放物線…

マットも堂林も依然、好調をキープしている。あの3人のお立ち台にはまだまだ続きがありそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?