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「生活系」が好きだ。

映画でも小説でも、「生活系」と呼ばれるジャンルが好きだ。

本当にそんなジャンルがあるのか定かではないのだけど、簡単にいえば「主人公とまわりの人たちの日常を淡々と描いたもの」という感じ。特に大きな出来事が起こるわけでもなく、ゆるっと時間が流れていく。そんな作品をぼくは好んで摂取している。


で、この話を誰かにすると「なにが面白いのそれ?」「全然盛り上がらないじゃん」と言われることが多い。確かにその通りなんだけど、でもそれがいいんだよ……とむず痒い気持ちになってしまう。

ただ自分でも「生活系」のどこに惹かれているのかうまく説明できなかったので、ちゃんと言語化しておこうと思って筆を取りました。


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最初に大それた結論を書いてしまうと、ぼくは生活系の作品を観たり読んだりすることで、「自分の人生を救済してほしい」と思っている。

救済なんていうと仰々しいのだけど、「自分の人生を全肯定してほしい」みたいな甘えた気持ち。特別でも人に誇れるものでもない、ありきたりな自分自身を好きになりたい。そんな気持ちでぼくは映画館に行ったり喫茶店で本を広げたりしている。


自分の意見を通すために他のジャンルを否定するみたいで申し訳ないのだけど、運命の相手と熱い恋に落ちたり、タイムスリップしたり、巨大不明生物が攻めてきたり、世界を救うために戦ったり、ひと夏の出来事で主人公が成長したり、そういう「盛り上がる作品」を観て、自分の人生って肯定されなくないですか?

映画館を出た瞬間は「自分も夢に向かって努力しよう」とか「壁にぶつかって成長するって素敵だな」とか思ってしまうけど、翌朝目を覚ましたら、いつもと変わらない日常が淡々と過ぎていく。

普段どおり会社に向かって、少しのイライラを胸に仕事して、帰り道にちょっと本屋に寄って、家に帰ってシャワーを浴びて、くだらないYouTubeをだらだら見て眠りにつく。そこには映画で観たような運命の出会いもないし、成長してるかも分からないし、世界を救うスーパーヒーローになることももちろんない。


でも、そんなくだらない日常を好きになれたら。

いつもと変わらず、友達に話すほどのこともない、だけど他の誰とも違う自分だけの生活を愛おしく感じることができたら。それがぼくたちにとって最高の「救い」になる気がしている。


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『きみの鳥はうたえる』という、ぼくがいちばん好きな映画がある。3人の男女がモラトリアムな青春を函館で過ごす。それだけといえばそれだけの映画。


作品の筋は「三角関係の恋愛」がメインだけど、それ以外の生活描写がめちゃくちゃ素敵だ。

コンビニに行って「炭酸水買わないと」みたいな会話をしたり、部屋で間接照明だけつけてトマトを食べたり、お弁当の出来上がりを待ちながら「セックスどうでした?」みたいな話をする。

そうそう、自分の人生ってこうだよなあと。わざわざ記録するほどでもないけど、確かにそこには小さな輝きみたいなものがあって、こんな人生も悪くないじゃんって思えたりする。


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光が当たるはずのないところに光を当てて、まるっと肯定してくれたような気持ちになる。それが「生活系」の魅力で、これからもぼくは救われたくて映画を観たり本を読んだりするんだろうなと思う。

世界を変えるヒーローにならなくていいし、簡単に人って成長しないし、運命の恋ってだいたい勘違いだけど、別にそれでいいじゃんね。そんなひねくれた気持ちでこれからも生きていきます。

(『街の上で』とか『パターソン』もめちゃいいから観てくれ〜!)



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