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クソデッキエクスプローラー(vol.2) ~スーサイドパワー

あのクソヤバ次元が帰ってくる……!!
 という訳で、エルドレインの森がリリースされました。相変わらずの童話モチーフで、メルヘンありホラーありの大変フレーバーに富んだ次元です。しかしそんなことよりも、プレイヤーの中には、エルドレインという単語を聞いただけで動悸・息切れを起こした方も居たのではないかと思います。なにせ初代エルドレインといえば、「神ジェイスは通す。オーコは通さない。」とまで言われた歴代最強クラスのプレインズウォーカーを筆頭に、砕骨の巨人・厚かましい借り手等、モダンはおろかレガシーにさえ出張し得るパワーカードまみれの、メルヘンとは名ばかりの修羅の国大変刺激的なセットだったからです。
 そんなこともあり、約束された強セットである本セット。早速触ってみたいと思います。エクスプローラー環境をクソデッキで探索する営み、第二回開催です。




クソデッキ発見編:真面目に強いやつら

 というわけで、まずはリストを見ながら、これは!というカードが無いかを探します。MTG公式のカードギャラリーを上から見ていきましょう。
白…人狐のボディガード強そうだな。瞬速付いてんの隙なさすぎでしょ。
青…フェアリー推されてるなぁ。デッキ出てくるかも。
黒…なんかヤバそうな除去あるな。ネズミも面白そう。
赤…WotCは衝動的ドローならなんぼさせてもいいと思ってるな。
緑…荒々しい三つ子強いし面白そう。
なるほどなるほど……。

……うーん、強いんだけど、ちょっとマトモ真面目すぎるな。。
 いや、強いんすよ。間違いなく使われそうだなーってのもたくさん居ます。でも、マナ効率良くてアドバンテージが取れる。そういうカードを使って普通に強いデッキを作る。そういうのはウチの領分ではないんですよね。カードギャラリーの大部分となる単色カードを見終えた時点の私は、焦りを覚え始めました。

 しかし、続くマルチカラーの中に、そいつらは居ました。

対照的なふたり

 戦争の世継ぎローアンと平和の世継ぎウィルです。古のヤバカードであるチャネル然り、ライフという比較的ローコストで得たり失ったり出来るリソースをマナに変換するその能力は、なにかやってくれそうな気配を感じます。特に、ライフを失う方は全くマナがかからないことも多いため、ローアンに強く可能性を感じました。ということで今回は、エルドレインの世継ぎのタカ派の方こと、ローアンを使ったデッキを考えていきます。

クソデッキ検討編:ストリクスヘイブンとかいうネタの宝庫

 戦争の跡継ぎローアンの能力は、タップすることでそのターンに減ったライフの値だけ、ラクドスカラー(赤黒)の呪文のコストを下げてくれるというものです。そのため、ローアンの能力を最大限悪用しようとした場合、デッキに次のような要素が必要になります。

  1. ライフを減らす手段

  2. ローアンでコストを減らして唱える、重くてフィニッシャーになる呪文

 まず1.については、マナを消費せずにライフを減らす手段を確保したいところです。なぜなら、最古のコンボであるチャネル・ファイアーボールやヘイトレッドのように、自分のライフを極限まで攻撃力に変換して相手を倒すコンボは滅茶苦茶クールであり、マナという枷に囚われずにライフを好きなだけ支払いたいからです。そして、エクスプローラーで好きなだけライフを支払うとなれば、コイツの出番でしょう。

イカしたスタッツにマナ要らずの起動型能力。

そう、破滅を囁くものです。そもそもが強力なクリーチャーであるだけでなく、コストが重いというデメリットをローアンである程度軽減でき、さらにライフ2点を支払って行う諜報が、後述のフィニッシュ手段を探しに行くのに使えそうです。ライフの支払い役はコイツを採用しましょう。

 続いて2.のフィニッシュ手段ですが、どうせなら打てば勝ち!というものを採用したいです。そして、(死なない範囲で)無限にマナが軽減できるため、マナを注げば注ぐほど強くなるXマナを含むものが良さそうです。パッと思いつくのは苦悩火あたりですが、さすがにX=20で打とうとすると先に自分が死にそうです。もっといいものが無いかなぁと検索してみたところ……。


弾ける力/Crackle with Power (STX)

この魔法学園(STX)、無限にネタカードが出てくるな。
ありました。14マナで20点を飛ばすクソ大味な火力が。しかもこのカード、イラストとフレーバーをよく見ると、呪文を放っているのはローアンその人のようです。これはもう運命と言っていいでしょう。採用です。

 さて、ここまでを整理すると、このデッキの勝利のシナリオは以下のようになります。

  1. ローアンを場に出す

  2. ターンが帰ってきたら、ローアンの能力+ショックランド(またはペインランド)でコストを軽減し、破滅を囁くものを場に出す

  3. 次のターンのアップキープに破滅を囁くものの能力で諜報しまくり、弾ける力を探す。見つかったらドローステップで手札に加える。その後、このターンのライフの支払いが12点未満だったら追加で諜報能力を起動し、支払いが出来たらローアンの能力を起動。12マナ軽減された弾ける力をX=4で唱え、対戦相手に20点を飛ばして勝利。

対戦相手はカカシか何かですかね?
…はい、そう思われても仕方が無いほどのガバガバシナリオであることは良く分かっています。少し考えただけでも、大きな課題が3つほどあります。

  1. クリーチャーが2体場に揃わなければならず(しかもローアンは召喚酔いが明けるまで生き残らなければならず)、相手のハンデス・除去に当たる。さらにリソースをつぎ込んだ弾ける力がカウンターされたら敗北必須である等、相手の妨害がことごとく刺さる。

  2. 必要なライフ量が多く、序盤にライフを削られていた場合にコンボができない。

  3. ライフを十数点つぎ込んだとしても、弾ける力をライブラリから探せるかは運が絡み、条件を満たしたとしても確実にコンボできる訳ではない。

つまり、妨害が多いミッドレンジやコントロール相手で決めるのは至難の業だが、さりとて序盤攻めてくるアグロ相手もツラい…。流石にこれは詰んだか、と思いましたが、ここであることに気が付きます。
 それは、「ローアンも破滅を囁くものも、それぞれ単体で結構やれる」という点です。

クソデッキ誕生編:コンボは添えるだけ

 ローアンも破滅を囁くものも、それぞれ単体で結構やれる。そう、過去スタンで実績のある破滅を囁くものは言わずもがな、ローアンも、システムクリーチャーとしての危険度は前述の通りですが、4/2威迫というスペック自体も、ライフを攻めるデッキでは中々やれそうです。そのため、通常はこいつらを組み込んだミッドレンジとして戦いつつ、条件が合えばコンボも選択肢に取れるといった、コンボ内蔵のミッドレンジにすることで、コンボの抱える弱点がそのままデッキの弱点とならないようにします。そして、組み込む元のミッドレンジの選択としては、単に色だけでなく色々シナジーもありそうな、ラクドスミッドレンジが最適かと思われます。ざっと魔改造すると、こんな感じでしょうか。

スーサイドパワー v1.0

デッキ
4 税血の収穫者 (VOW) 232
4 戦争の世継ぎ、ローアン (WOE) 211
4 破滅を囁くもの (GRN) 69

4 強迫 (ONE) 92
4 致命的な一押し (KLR) 84
3 喉首狙い (BRO) 102
4 アガサの魂の大釜 (WOE) 242
4 鏡割りの寓話 (NEO) 141
2 鏡に願いを (WOE) 82
3 弾ける力 (STX) 95

1 反逆のるつぼ、霜剣山 (NEO) 276
4 血の墓所 (RNA) 245
4 荒廃踏みの小道 (KHM) 252
4 硫黄泉 (DMU) 256
2 黒割れの崖 (ONE) 248
1 ロークスワイン城 (ELD) 241
1 見捨てられたぬかるみ、竹沼 (NEO) 278
2 憑依された峰 (MID) 263
2 竜髑髏の山頂 (XLN) 252
2 沼 (SIR) 285
1 山 (SIR) 288

サイドボード
2 絶滅の契機 (IKO) 88
1 真っ白 (STX) 72
3 コラガンの命令 (DTK) 224
1 喉首狙い (BRO) 102
1 無情な行動 (IKO) 91
2 思考囲い (AKR) 127
2 黙示録、シェオルドレッド (DMU) 107
2 勢団の銀行破り (NEO) 255
1 墓地の侵入者 (MID) 104

 コンセプトとしては、普段の動きはラクドスミッドレンジのように動き(最適化されていないので純正より動きは劣りますが)、相手が緑単等で盤面をガチガチにしてきたり、相手が隙を見せてきた際に、コンボでワンチャン狙いに行けるデッキ、というものになります。また構築途中に、今回やろうとしているコンボが、本セットのプレビュー時に話題になったアガサの魂の大釜と滅茶苦茶相性がいい事に気付き、採用しています(こいつが場にあれば、ローアンや破滅を囁くものが除去られたとしても、なんらかのクリーチャーさえいればコンボに行くことが可能になる等、前述の1.の課題への耐性が大幅に向上)。
 果たして妄想通りの動きが出来るのか、あるいは弾ける力とかいうノイズを抱えたただのラクドスミッドレンジの劣化互換なのか、検証してみます。

クソデッキ検証編:ワンチャンをつかめ

 前回同様、エクスプローラーイベントへGo。

■1戦目:エニグマファイアーズ
奇怪な具現をキーカードに、場に出たときに仕事を終えるエンチャントを使ってアドバンテージを稼ぐデッキ。

R1 : 序盤は互いにリソースを交換しつつ、ローアンが着地。次ターンに鏡に願いをからアガサ大釜を持ってくればコンボに行けそうな状況になるが、返しで相手の場に星界の大蛇コーマが着地。起動型能力を封じる能力が致命的となり敗北。

R2 : 2Tアガサ大釜、3T寓話と動き、寓話2章で破滅を囁くものを墓地に落とす(そして即釜に放り込む)上々の滑り出し。5T目アップキープに諜報12(諜報2×6回)で、ローアンを墓地に落としつつ弾ける力をトップに積む。ローアンを釜にぶち込み、マナ軽減能力を起動。ドローした弾ける力をX=4で唱えて20点シュート。

R3 : 墓地対されるかと思ってコラガンの命令をサイドインしたが、特にそんなことはなく順当に展開される。ヨーリオンで諸々ブリンクされて盤面も手札も大きく差を付けられるが、返しに破滅を囁くものが着地。手札は弾ける力のみという一見どうしようもない状況だが、ライフが16あるので実は破滅を囁くものが生きて帰ってくれば高確率でコンボ可能(諜報2が最大7回打てるので、アップキープにトップ操作してアガサ大釜をドローしつつ、ドロー後にローアンを墓地に落とせばコンボ成立)。…ワンチャンあるかと思ったが精霊界の接触で除去され、次ターンも奇跡的に囁くものをドローするもこちらはカウンターされて負け。

1-2(★)

■2戦目:緑単信心
ニクソスでマナ加速して無茶苦茶してくるデッキ。アガサ大釜や各種アーティファクトトークンの起動型能力を封じてくるカーンの存在が鬼門か。

R1 : 税血の収集者2体と除去まみれの手札でスタート。アガサ大釜が引けたので、ひたすら相手のクリーチャーを除去って大釜で煮込んで収集者をムキムキにして殴り勝ち。

R2 : 4T目に収穫祭の襲撃から繋がりまくって相手の場に合計パワー30くらいのクリーチャーが並ぶ。返しに絶滅の契機でほぼすべてのクリーチャーを飛ばして1対7交換とするも、カーン経由で既に場に出ていた街並みの地ならし屋が残り殴り負け。

R3 : 序盤はひたすらハンデスと除去で1対1交換を行って盤面を作らせないように注力し、6T目、互いのリソースが枯れかけたところでトップした破滅を囁くものを出す。次ターン、ライフが20点まるまる残っており、さらに血トークンが1つあるのでコンボ準備に入ったところで(※)お相手が爆発。このデッキ、強いかどうかは別として、謎のコンボルートが色々あって癖になってきたな…。

※諜報2が9回も使えるので、通常ドローと血トークンのドローを使ってアガサ大釜と弾ける力が引けるようにトップを操作し、その過程でローアンを墓地に落とす。必要なマナは、血トークン起動+アガサ大釜キャスト+弾ける力キャストに必要な5マナのみ。

2-1(☆)

■3戦目:赤白装備品アグロ
おそらくオリジナルと思われるデッキ。こういうのと出会いたくてエクスプローラーやってます。

R1 : 火力と軽量クリーチャーで攻めてくるデッキのようで、3T目時点でコンボに必要なライフ水準(14)を割ってしまう。幸い除去ハンドだったので、盤面を捌いて落ち着いたところでデカつよ(デカくて強いヤツ=破滅を囁くもの)を出して勝ち。

R2 : ライフへの圧が強いのでコンボ要素を薄くサイドアウト。税血⇒墓地の侵入者⇒シェオルドレッドという必殺のラクドスムーブで盤面を固めて、数ターン後にやはりデカつよ(破滅を囁くもの)が出て勝ち。

2-0(☆)

■4戦目:グルールアグロ
スタッツの良いクリーチャーで序盤から強烈な圧をかけてくる蛮族デッキ。序盤のかみ合いが左右しそう。

R1 : 税血⇒寓話⇒大釜+喉首狙いという対アグロの理想ムーブで序盤を凌ぐ。隙あらばコンボ……などと考えていたら、キキジキがアクティブになった瞬間に2枚目の税血を引いたので、税血コピー祭りで無茶苦茶して勝利。

R2 : 炎樹族の使者+通電の喧嘩屋からのロナスという強烈なムーブで序盤から盤面がヤバいことに。コンボとか言ってる場合では無かったので、ローアンを捨てシェオルを引き込むことでなんとか命を繋ぐ。その後は相打ちや除去でひたすらターンを稼ぎ、シェオルでまくって勝利。

2-0(☆)

■5戦目:予言された壊滅コントロール
毎ターン土地でもトークンでも無いパーマネントの生贄を強要する予言された壊滅で相手の盤面を破壊しつつ、自分は出たときに仕事を終えるエンチャントを出しまくってアドバンテージを失わないようにするスタックス系デッキ。今環境では初見でしたが、エルドレインの森の協約メカニズムと相性が良く、地味に強化されていた模様。

R1 : 税血の返しにヴェールのリリアナを、次ターンに出したローアンの返しに予言された壊滅を貼られ、ぺんぺん草も生えない有様に。リリアナを対処する術がなく投了。

R2 : 税血⇒寓話⇒ローアンと展開しライフを攻める。予言された壊滅が1枚貼られるが、寓話を生贄にすることでなんとか盤面を維持。返しにハンデスを撃つと、相手の手札には2枚目の予言された壊滅と鏡に願いをの2枚が見え、流石に2枚目の予言された壊滅はキツいか…と思って落としたが、それが大きなミス。返しに鏡に願いをから引っ張ってこられた至高の評決で盤面を綺麗にされてGG。予言された壊滅を残していた場合、ギリギリローアンだけ残り、墓地に破滅を囁くものもいたので大釜トップでワンチャンあった。想像力が足りなかった…。

0-2(★)


まとめ

 クソデッキ、またもや3-2。
 誕生編で考察した通り、コンボ絡まないときでもローアンは殴ったりヘイトを吸ったりで貢献し、破滅を囁くものは普通にフィニッシャーになったりで、そこそこラクドスミッドレンジに馴染んでくれてはいました。ただ実際回してみると、1戦目R3や2戦目R3のように、思わぬところでコンボに繋がる楽しさがあり、もし丸い強さを捨ててコンボに特化したらもっと面白かったのではないか……とも思っています。
 強いかどうかで言えばピーキー過ぎて決して強いとは言えないのですが、一見勝て無さそうな状況からガチャガチャやって勝つというのは中々楽しいし脳トレにもなるので、そういうのが好きな方は是非組んだり改良してみてください。

 それでは、また次回!

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