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1万円ぐらいは持っておきましょうよ.

 既にひと月半くらい前のことだけど,日本選手権においてチームの選手が予選で転倒に巻き込まれてしまい,通るはず(という表現もおかしいけど)の予選で着外になってしまった.その際,抗議(救済の申し出)をしたので,備忘も兼ねてその顛末を.オリンピックの女子1500mでも,何やらそういう動きがあった様子ですし・・・実例として今回の動きを説明することで,ルールや段取りを理解してもらえればなぁ,と.

 レース終了後,まず心配したのは身体のこと.ゴール後すぐに膝をついていたので,「脚をやったか?」と確認をするために選手帰路へ走る.しかし出てこない.役員にお願いして,本来コーチ証では入れない1ゲート内に行ったが,見当たらない.医務室に行ってもいない.探し回っていると,ミックスゾーンで座ってインタビューを受けていた.なんやそれ.

 身体がとんでもないことにはなっていなさそう,という判断で,方向転換して向かうトータルインフォメーションセンター(TIC).慌てているため発見できず,いろいろな人に聞いて漸く発見.TICにいたのは,新潟医療福祉大学勤務時代に陸上関係でたくさん情報交換をしてくれていた高校の先生.すぐに抗議の意向を伝えて,救済を願い出る.その後続々転倒に巻き込まれた選手の関係者がTICに来て,抗議を伝えていた.並みいる実業団や関東の大学よりも先着,というのは,少し「偉いでしょ」感.

 結果的に,選手の身体は大したことになっておらず,「走れます」ということだったので,そのまま抗議の意向を継続.抗議を行った場合,各選手の関係者が個別で審判(長)から聴取を受けることになる.しかし,なかなか個別の聴取が始まらない.これは,転倒の原因を監察ビデオで確認していて,レース結果が確定されていないため(抗議は「結果が正式発表されてから30分以内」に認められる).とりあえず正式発表を待ち(正式発表されていないので本来抗議ができる時間もスタートしていない),正式結果では着外になっているので,抗議して救済を求めたら,割とすんなり通してくれて,救済により決勝に出場できることに(最初からそういう気配はあったけど).なお,抗議の際は動画等の証拠が必要なことがあるので,しっかり撮っておく必要があるよね,と改めて認識.今回は注目度の高い大会だったこともあり,すぐにネットに動画が載っていたため,そちらも使う準備をしていた.後述するけど,以前抗議をしたときは,動画が不十分で完全に認められなかったことがあるので・・・気をつけましょう.

 ちなみに,この抗議の裁定はトラック審判長が裁定を下し,その裁定に不服がある場合,さらに「上訴」をすることができる(抗議の裁定後30分以内).上訴を行う場合は,あらためて上訴書類とともに1万円(もしくは100ドル)を提出しなければならない.上訴をした場合,審判長とは独立したジュリー(昔は上訴審判員って言っていたよね)が裁定を下すことになる.今回の場合,最初の発表で「失格」の裁定になっていた選手は,抗議で失格が覆らず,上訴の手続きにも進んだ模様.上述した,ビデオ監察確認と確定に時間がかかったため,上訴の結論が出たのはゴールしてからずいぶんと時間が経ってからだったので,関係者はさぞ気を揉んだことだと思う.というのとは別で,私が抗議中ずっと気を揉んでいたのは,「今財布の中には現金が5,000円ほどしかないぞー」と.「コンビニに走って,下して,間に合うか?」と.もし,私も上訴しなければならない展開になっていたら,必要な1万円を持参していなかったので,手元不如意で泣き寝入りだったかも(笑).

 私としては,全国規模の競技会で抗議をするのは2回目.初回は,2019年の日本インカレで,七種競技やり投げにおいて,やりの先端から着地しているのにファールの判定になったから(やりは刺さらなくても先端から着地していれば有効試技).混成なので3投しかない中,2投がファール扱いになり,最後の1投が「刺すだけ投擲」で低い記録しか残せなかった.抗議を行い,動画を見せたところ,1投目は着地地点がちょうどテントと重なって写っておらず,着地まで写っている2投目のみ再試技が認められた.選手としては,フォーム確認は投げ出すまで写っていれば十分だけど,こういう事態を考えると着地まできちんと映しておかないといけませんよね,と考えさせられた経験だった.

 とにかく,チーム関係者として準備しておかないといけないことは,証拠となる動画と,上訴するための1万円.「上訴がPaypayでできるようになりました!」とはならないだろうから,キャッシュレス時代でも現金重要.
 以後,気を付けます.

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