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傍観者効果の観点から「徳としての勇気」を考える

渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、1人倒れている人がいる。様子を見るに、変質者ではなく、具合が悪いらしい。しかし、交差点を行き交う無数の人々は、彼に気付いていながら助けようとしない。

私だったら助けるだろうか。あなただったら助けるだろうか。

社会心理学に、傍観者効果という言葉がある。誰かが助けを求めていても、その人に気付いている人が多いがゆえに、自分が率先して助けようとはしなくなるという心理効果である。

この効果は、「助けを求める人を誰一人として助けないのは、彼らが冷淡だからではない。これは、科学に基づく心理現象である。」という論調で説明される。

私はこの論調に違和感を覚える。

というのは、彼らが冷淡であるとまでは言えないにせよ、少なくとも、大勢の傍観者の中で最初の1人として行動する勇気がないのではないかと思うからだ。

他の人が助けるだろうという思慮の浅さは、冷淡さとほとんど同義であろう。自分が助けなければと思いつつ、つい躊躇ってしまうのは、勇気がないからであろう。

古代ギリシャでは、四元徳の一つに「勇気」があった。傍観者効果を例に取ると、勇気が徳(卓越性)として考えられていた理由がよく分かる。

渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、1人倒れている人がいる。もしこの人に声をかければ、交差点を往来する無数の人々から注目を浴びる。

そんなときに、勇気を振り絞れる人間でありたい。

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