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沖縄旅行記 出発偏

これは無計画といい加減な性格のため無駄に時間をかけて沖縄をさまよい歩いた漂泊の記録である。

出発~関西空港~

まだ肌寒い3月の夜、私は関西空港の長いすに寝転がっていた。
乗るべき飛行機は翌日の一番の便だ。
奈良からでは始発に乗っても間に合わないので前日の夜から空港に籠城することになる。
金さえあれば空港近くのホテルにでも泊まるのだが格安飛行機に乗るような人間なのでそんな余裕はない。
そのため空港の長いすで横になる結果になるのだ。

なぜ金もないのにわざわざ沖縄まで行くのか、それは自分の数寄をより追求し確かなものとするためである。
数寄とはなにか、それはなんらかの精神性によって方向付けられた美の運用であると考えている。
沖縄特有の信仰などの文化、陶芸や漆芸などの工芸品に触れることは必ず私の数寄を深めると信じる。

関空には何か所か充電できるスタンドがある。
すでに陣取っている人たちは用意周到にも延長ケーブルを持参して電源を確保しつつ陣地を形成していた。
運のいいことに長いす横の充電ポイントを確保。
ここをキャンプ地と宣言した。

明日は早い。しかも翌日からは沖縄を歩き回らなければならない。
なんとか眠ろうと横になった状態で右を向いたり左を向いたり、うつぶせになったり。手ぬぐいをアイマスク代わりにしてみたりしながら七転八倒していたが結局一睡もできなかった。
そうこうしているうちにだんだん空港に人が増えてきてますます寝られなくなる。
しかもあとで気づいたが私がいた所は夜間消灯されることは無かったが人が沢山いた辺りは少し薄暗くなっていた。
だから良いスポットなのに誰もいなかったのか。ここでも貧乏旅行ベテラン勢との差がでる。
ともあれ、だんだん空も白み始めたので搭乗ゲートへの移動を始める。
私が乗る飛行機は第2ターミナルから出発する。
徹夜した第1ターミナルからは無料バスで移動する。
こんなところでも貧富の格差を見せつけられつつ移動した。
到着した第2ターミナル。そこはかとなくみすぼらしい……。
廊下にはビリケンさんが見送ってくれていた。

歩いて飛行機へのタラップに向かう。
座席は当然窓際。わざわざ指定料金まで払って確保したのだ。
徐々に飛行機が動き出しゆっくりと滑走路に向かう。
滑走路にドンと構えた小ぶりの格安飛行機は健気にすら見える。
スタートラインに立った飛行機はその場に踏ん張ったまま徐々にエンジンの回転を上げていく。機体全体に力がみなぎっていくように振動が徐々に大きくなる。
飛行機ってこんなに振動しただろうか。少し不安になりつつその時を待つ。
蓄えられた力が一気に解き放たれる。振動と音が伝わってくる。間もなく地面からの振動が無くなった。もはや私は空の旅人となったのだ。
天保山に入り残る月を旅路の友として。
さらば関西、いや本州。向かうは南国、ヤシの木とフラダンスのこしみのが揺れるハワ……ではなくてサトウキビとデイゴの花が揺れる沖縄である。

つづく

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