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水辺にたたづむ

お金をかけずに風流を

ここ数日暑い日が続いています。
できることなら山奥の渓谷にでも行って川辺で涼みたい。
でもそんな時間的余裕が誰にでもあるわけではありませんね。特に収まってきたとはいえコロナの影響が残る時期なので外出はためらわれます。

戦国の世の人も同じでした。
今よりずっと自然が豊かだった当時も、市井に生きる人々は郊外に出かける余裕はあまりなかったでしょう。しかも治安の悪さは今とは比べ物になりません。

そんな苦しい人生の中でも風流風雅を愛する人々は自然への思いをなんとか生活にとりこもうと考えました。
それが「市中の山居」です。
裕福な市民は町中に質素な庵を建て、里山を思わせる庭を造って楽しんでいました。そして夏は涼しさ、冬は暖かさを演出する工夫を競っていたのです。

現代の私たちも新たに家を建てることは難しいですが家の壁を一つだけ、季節を表現するために使うことはできるのではないでしょうか。

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これは家賃3万5千円のボロアパート(失礼)の一室の壁です。
そこにホームセンターのすだれを掛け、その上に短冊掛けを重ねています。
これだけでもだいぶ夏の雰囲気を出せているのではないでしょうか。

文字に涼を感じる

こういった場で掛けられる軸はあまり絵の物は使われません。大抵、文字で様々な物事が表現されています。

この短冊には「澗水湛如藍」(かんすいたたえてあいのごとし)と書かれています。
澗水とは谷川の水のこと。それが淵に溜まって深い色になっている情景が目に浮かぶ句です。

この文字を見ただけで自分が涼やかな渓流の側に立っているように感じられます。
なかなか文字を見ただけでそんな気分になれない。という方もいらっしゃるかもしれませんが、慣れてくると意外と文字の意味や書き方で色々なものが感じられるようになります。

大事なのは自由な発想

床の間の飾り方というと「掛け軸はこういうものでなくてはならない」「花入はこの位置でなくてはならない」というようなきまりがあると思っていませんか?

たしかに流派に属すと色々なきまりや約束事を習います。
しかし、これらはあくまで基本です。
これらのきまりはきちんとした和室でちゃんとした道具が揃っていないと守るのは難しい。
そこで、実際の日々の生活では各自の環境に合わせたやり方をしなければいけません。

こんな飾り方じゃあだめだろう。かっこよく見えないだろう。と思っていても実際にやってみると意外とそれなりに見えるものです。
なので、是非茶道を知らない人でも軽率に床の間風の飾りを試してみて欲しいと思います。

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