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「今を大事にする『おばあ』と出会えてよかった」学生の立場から、いきてゆくウィークに関わる笹部睦さん

「いきてゆくウィーク」は、大阪府豊中市で約20年にわたって開催されてきた「いきいき長寿フェア」をリニューアルしたイベントです。高齢者の社会参加、介護/福祉をベースにしながら、さまざまな方が参加したり、学んだりできるようなイベントになっています。

このnoteでは、運営メンバーの想いや背景を発信しています。今回インタビューしたのは、大阪大学法学部4年の笹部睦(ささべ・むつみ)さん。「いきてゆくウィーク」の運営に携わるまで、介護や福祉に接点がなかったという笹部さん。

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現在は、人生経験豊富な「おばあ」に悩み相談ができる「おばあbar」、カードゲームで最期に大事にしたいことを考える「『最期』の話をしよう」の企画に関わられています。そんな笹部さんに、運営の中で感じたことや企画へ込めた想いを伺いました。

これまで関わったことのなかった介護・福祉。仕事の多様さを実感

── 福祉や介護に関わるはじめの接点が「いきてゆくウィーク」だったそうですね。大学ではどのようなことを学ばれていますか。

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関心のある社会課題に対して、どんな政策を打てば良いか考えるゼミに入っています。私は物流を支えているトラックドライバーが不足している課題に着目して、どんな政策提言ができるかを研究してきました。

── 運営に関わるまでの経緯を教えていただけますか。

運営メンバーに誘われて、「いきてゆくウィーク」に関わり始めました。誰でも参加できる会議として7月に開催された「オープンミーティング」から、イベントに関わっています。

これまでも大学の外で、自分と違う世代の人や別分野で活動されている人と話す機会がありました。そのとき、普段出会えない人と話すのが、面白いと感じたんです。

「いきてゆくウィーク」も、「大学では会えないような人と話せるかもしれないから行ってみよう」と、軽い気持ちで参加を決めました。

── 運営メンバーとはじめて会ったとき、どのようなことを感じましたか。

まず、運営メンバーの多くが介護関係の人なんだと驚きました。自己紹介で、介護に関わる仕事についてお話しされる方が多かったんです。

でも、ヘルパーやケアマネージャー、体操についてユーチューブで発信されている方などと出会って、「介護への関わり方は、すごく多様なんだな」と気づきました。

人生経験豊かな「おばあ」に悩み相談ができる、おばあbar

── オープンミーティングでは、企画のアイデアを出し合う時間もあったそうですね。

私は介護のことに詳しくなかったので、自分が面白そうだなと思ったのことを書き出していきました。そのとき、「高齢者の方の話を聞いてみたい」というアイデアが浮かんで。

携帯などがない中で、どんなふうに恋愛をして、どんな夢を持っていたんだろうと思ったんですよね。「今とは違う面白い話を聞いてみたいな」と感じました。

── その後のミーティングで、それぞれの運営メンバーがどの企画に関わるか決めていったんですよね。笹部さんがリーダーを務める「おばあbar」について教えていただけますか。

「おばあbar」は、豊かな人生経験を持つひとりの「おばあ」と数人の相談者がおしゃべりする企画です。みなさんのお悩みにおばあが答えるという形で、双方向のコミュニケーションができたらいいなと思っています。最年長で87歳のおばあが参加してくださる予定です。

「人生を楽しく生きるコツ」、「より良い親子関係を築くには?」、「最も落ち込んだのはいつ?どうやって乗り越えた?」など、各回に違うテーマを設定しました。

運営メンバーでおばあに聞いてみたいことを挙げて、それらをカテゴリー別に分けていったんですよね。それで、人生・家族・恋愛・仕事というテーマが決まりました。

当日は、みんなが安心して話せる場をつくることを大事にしたいです。「いきてゆくウィーク」の目的のひとつでもある、多世代交流ができたらいいなと思っています。

「誰かに相談してみたいけど、誰に相談したらいいか迷っている」そんな思いのある方は、ぜひ「おばあbar」に参加していただきたいです。

カードゲームで最期に大事にしたいことを考える、「最期」の話をしよう

── 笹部さんは、「『最期』の話をしよう」の企画にも関わられていますね。

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そうですね。この企画では、「人生の最期にどう在りたいか」を話し合えるカードゲーム「もしバナゲーム」を使って、ACPの入口を体験するワークショップを行います。

※ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは、将来の医療やケアについて、本人・家族・近しい人・医療者が繰り返し話し合い、共有し合うプロセス。

──「もしバナゲーム」は、どのようなカードゲームなのでしょうか。

死の間際や重い病気のときに「大事なこと」とよく言われる事柄が、カード1枚にひとつずつ書かれているんですね。例えば、「人との温かいつながりがある」「痛みがない」「家族と一緒に過ごす」など、いろんなカードがあります。

「自分の余命が半年」という設定で、複数のカードの中から自分にとって一番大切なものを1枚選びます。これを何度か繰り返して、最期に大切にしたいことを選んでいくんですね。その後は、Zoomのブレイクアウトルームに分かれて、そのカードを選んだ理由をグループで話します。

── 自分が最期に大切にしたいことを話し合う時間を設けられているのですね。

運営メンバーで実際に「もしバナゲーム」をやってみたとき、感想をシェアしたんです。そのとき、他の人の価値観を知ることで、自分の大切にしたいことがより鮮明になる感覚があったんですね。

さらに、話し合いの後には、医師がACPについて説明した動画も流す予定です。ゲームを出発点として、「この先どんなことを考えていけば良いか」「家族と話し合うためにどうしたらいいか」など、次につなげられるような時間にしたいです。

「死」をテーマにしているので、言葉遣いやゲームの途中でつらいと感じた方の逃げ場をつくっておくことを、運営上大切にしています。この企画が、「どう最期を迎えたいか」「どう生きていきたいか」を考えるきっかけになったらいいなと思っています。

今を大事にする「おばあ」との出会いが、希望に

──「いきてゆくウィーク」運営メンバーとして介護・福祉に関わる中で、どのような気持ちの変化がありましたか。

これまでは「介護職って大変そう」というイメージが先行していました。でも、運営の中でいろんな面白いことを考えている方もいるんだなと感じました。

特に、おばあとの出会いが印象的でした。中には80代で介護の仕事をしている人もいて、それが私にとっては希望だったんです。

私たちの世代が高齢になったとき、若者が少ない中でどう生きていけるかがずっと心配でした。でも、おばあを見て「歳を取ってもいきいきと働けるんだ」感じました。

60代で保育士の資格を取られた方もいて、「何歳になっても何でもできるんだ」と強く思いましたね。おばあたちのことを知れて、本当に良かったです。

── 最後に、笹部さんにとって「いきてゆく」とは何か教えてください。

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(2分ほど考えてから、言葉を選んで質問に答えてくださった笹部さん)

難しいですね。生きてゆくとは何か。ちょっと考えてもいいですか。なんとなく見えました。生きてゆくとは、今を大切にすることだと思います。

おばあたちは、今を大事にしてきたのかなって。これから先どうなっていくかよりも、「今何がしたいか」をすごく大事にして生きてきたんじゃないかなと感じました。

今自分が大事だと思うことを重視して、活動されてきたんだろうなって。大変な経験があっても、力強く生きてこられたんだと感じて、やっぱりすごいなと思いましたね。

おばあからは、「こんなこともできるんだ」と勇気をもらうことが多いです。すごく活力のあるおばあばかりなので、ぜひ「いきてゆくウィーク」に来ていただけたら嬉しいです。

── 笹部さん、ありがとうございました。

介護保険制度
社会全体で介護が必要となった人を支える仕組み。介護が必要となったときも、住みなれた地域で安心して暮らしていけるよう支援する。40歳以上の方が納めている介護保険料と税金が財源になっているため、介護を必要としている方は、原則1割の自己負担でさまざまな介護サービスを受けられる。(※前年度の所得により、自己負担は2割または3割になる)

介護サービスにはさまざまな種類があり、自宅で利用できるサービス(訪問介護、デイサービスなど)や、施設に入所するサービス(介護老人福祉施設など)、生活環境を整えるサービス(住宅改修や福祉用具レンタル・購入)などがある。

市町村の地域包括支援センターで、介護保険制度に関する相談や情報提供を行っている。
いきてゆくウィークって?
「いきてゆくウィーク」は、豊中市で約20年にわたって開催されてきた「いきいき長寿フェア」をリニューアルしたイベントです。

高齢者の社会参加、介護/福祉をベースにしながら、
さまざまな方が参加したり、学んだりできたりするようなイベントになっています。

今回は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、オンライン(一部、展示会については現地開催)で行います。

​これまでとは少し違った新企画がぞくぞく。

特設ホームページはこちら👇

いきてゆくウィーク2021




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