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保健所に勤める労働者からのメッセージ

憲法第25条「生存権」の趣旨に副うために、「直接に国民に接触する保健所の機能拡充強化をはからねばならない」として1947年、保健所法は全面改正されました。

しかしその後、この理念は、時の政府によってどんどん形骸化されていき、ついには1994年、保健所法は「地域保健法」として改変されました。当時848ヵ所あった保健所は、統合により469ヵ所にまで減らされ、医師や保健師の数も削減されました。また、保健所機能としても、経済効果がない感染症などの公衆衛生は、二の次三の次どころか最後尾に追いやられ、そして今回、新型コロナウイルスが発生したのです。

政府による公衆衛生対策軽視のツケを最前線で払わされているのが、現在の保健所職員です。政策に問題があるのに、保健所に批判が向けられ、多忙な上に心ない言葉によるストレスにもさらされています。

 私は、保健所の事務で働いています。コロナウイルス感染の拡大の中、保健師に対応を聞いて、マニュアルに基づいて毎日区民からの電話を受けています。
・37.5度以上の熱が続いている
・陽性者との濃厚接触の可能性が高い。海外の渡航歴がある。
の2点を重視しており、それに加えて
・強いだるさ、息苦しさ、咳、などの症状がある
・基礎疾患がある
・その他の症状
等を確認して、よほど可能性が高そうでない限りはまず一般のクリニックの受診を案内し、そこの医師が疑わしいと判断した場合は医師から保健所に連絡してもらうようにするというような対応になっています。正直、検査の多くは断っているのが現状です。というか、それが業務になっていると言えます。

 「保健所から病院に連絡→病院で診察、患者から検体を採取→保健師が検体を取りに行きや衛生検査所に運び検査」…をやっていると、うちの保健所だけでは実質1日20件もできないのではないかと思います。
 区民からのメールにも「保健所の怠慢」「検査を増やせ」など毎週数十通来ていたり、電話でも「知事に苦情を言いたい」「スーパーが混んでいる、指導しろ」などの声が来ています。厚労省からもどかどか通知が来て、ちょっと放置すると容量100%で受信できなくなるような状態です。メールもたまに22時とかに送られてたりするし…厚労省の職員も区市の職員もよくわからない中でバタバタと目の前の業務に対応するので精一杯なんだと思います。

 「症状がなくても感染している」実例がたくさんある中で、重症化しそうな人だけを選別して検査する方式は、現状の医療資源や人員体制を言い訳に、本当ならやるべき対応を放棄しているとも思います。
 これが新自由主義がもたらした人災です。あらゆる人々が協力してこうした事態に対処する、という当たり前のことができないのがこの資本主義社会だということをまざまざと見せつけられていると感じます。

 検査について、柔軟に必要な部分に配置する、自治体独自でも市民の声に対応して検査体制を強化するなどはどんどんやるべきではないかと思います。既存の医療機関ではなく、検査だけを担当する施設を新たに整備してそこに資源を集中するなどが必要ではないかと思います。

 私もメーデーには行きたいのですが、残念です。
 厚労省に対しては、要望や意見をしっかり出した上で、現場の職員に対する激励や「ともに声をあげよう」「職員を増員しろ」「正規で雇用しろ」的な内容を前面に出すのが重要だと思います。
一緒に声をあげていきましょう!

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