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スピカの写真集③【チョコレートリリー寮の少年たち】

「ぼくらの情報網によると、えっと……パンチェッタのミモザガーデンサラダがメインで、三日月麺麭、きのこと玉ねぎのミネストローネ、だったと、思います」
「今日も美味しそうだね。給食のことは、天使たちに聞くのが一番だ。なぜ献立表に載ってないメニューまで知っているんだろう」
サミュエル先輩がさらりとブロンドの髪をゆらして首を傾げた。
「くわしいことはひみつです」
「うん、秘密」
「学食情報については、任せてください」
「なんだなんだ、どういう事だよ」
「まあ細かいことは、いいとして、そろそろ、移動しましょう」
ロロががふわりと笑ったので、なんだかそれ以上は聞けない雰囲気になってしまった。ともあれ、メインが軽めで助かった。三日月麺麭はのこしてしまうかもしれないけど、おかずはしっかり食べようと思って立ち上がった。みんな僕に続いてばたばたとたちあがり、食器類をテーブルの隅に寄せた。
「ママ・スノウ、ありがとうございました!」
「はい、お夕飯、行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
僕が元気よく声を上げた。天使たちが僕の後ろをホバリングしながらお礼を述べている。
「まあ、僕がいればいくらでもすきなものがたべられるし、みんな、遠慮しなくていいと思うよ」
「天才が言うとほんとうにそういうきもちになっちゃうんだよなあ」
ノエル先輩が笑って、セルジュ先輩の肩を抱いた。
「今日はデザート出ないのかな」
「……あっ、それが朗報です!今来た情報によると、またわらび餅が出ますよ!」
「やった!!僕、もうわらび餅だけでいい。わらび餅を食べ続けたい。食後はロリポップとミルクケーキ……」
「天使長は砂糖菓子でできている……」
ジュド先輩が僕のデータまで書き取り出したので、余計なことは言わないようにしようと思った。
「食堂はまだ空いてるな。長テーブルを占拠してしまおう。隊員の皆様、席について」
ノエル先輩が杖を振った。テーブルと椅子がぴかぴかひかる。
「今のうちに数人でも!この辺すごく賑やかになる魔法をかけたから、誰もよってこなくなるよ」
「ありがとうノエル皆を代表してお礼を述べるねああ小鳥遊こんなところにいたのか貴重なファイルを悠璃に強奪されて君は黙っているつもりかい」
「あ!みなさんこんばんは!僕は今週から給食当番でファイルの行方を知らないまま、おたまでスウプをすくっていたんだ。悠璃の仕業だったのか」
「お疲れ様!仕業なんて言わないで。写真の使用許可をいただいたよ、」
「わあ!本当?スピカ君、ありがとうございます。まあ後でお話しよう。ちょっと、おたまに勝手にスウプをすくう魔法をかけますので、今しばらくお待ちください、皆さん」
「僕がやるよ。すぐ出来る。クロシェ編みのストールをほどいていくイメージでやればあっという間さ」

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