見出し画像

星集めの儀式、その後の打ち上げ【ゼロとシャウラのものがたり】改稿

さあ、われわれは部屋にかえりましょうとやさしくシャウラがいうので、うん!と満面の笑みを浮かべる。
「なにをのみますか?」
「ひさびさに、アイスブレイカーでものみたいなあ、テキーラサンライズも……のみたいのたくさんありすぎてこまる」
「王子、テキーラ好きですよね」
「だいすきだよ!手っ取り早く酔えるし美味しいし。でも、炭酸系は苦手。酔う前におなかいっぱいになっちゃうから」
「ではテキーラ中心になにか作ります。王子には、おつまみ作りをしてもらいたいのですが……」
シャウラの顔を見上げて、ちょっと首を傾げる。
「ぼく、刃物使えないよ」
「ふっふっふ……」
「えっ、何?その含み笑いは」
「そんな王子のために、とっても簡単なおつまみを作ってもらおうと思うんです、さあ、部屋に入って」
「シャウラの部屋はいつも整頓されてて綺麗だね」
「整理整頓はもはや趣味です」
冷蔵庫からなんだか色んなものを取り出している。
「これをバケットに載せるだけです、簡単でしょう?今からオーブンでバケットにかりっと焼き目をつけますので、その間にクラッカーに水気を切ったマスカルポーネをちぎって乗せて、メープルシロップをすこーしだけ、かけてください」
「そのくらいならぼくでもできそう」
「さあ、愛の共同作業です、分担してやりましょうね」
ぼくたちは協力しておつまみをつくりあげた。セルフィーユという葉っぱを乗せたら、お店で出てくるレベルのものに仕上がった。
シャウラが立派なキッチンからこちらへやってきて、お酒を並べてくれた。
「ロングアイランドアイスティー作っちゃった!これにも、王子の好きなテキーラが入っていますよ。王子、お酒をまるで水のように飲むので、一杯目からアルコール度数20度超え、いっちゃいましょう!」
「わあわあ!うれしいな!シャウラは何を飲むの?」
「わたくしはアマレットジンジャーです」
「あー!おいしいよね!」
しばらくお酒を飲んだりぱりぱりとおつまみを食べていると、シャウラが、あの、と切り出した。
「王子。星集めの儀式、よく頑張りました。プレゼントです」
薔薇を模した飾りの着いている重厚な箱を手渡してくる。
「えっ!嬉しい!ありがとう!!なんだろう。開けてみてもいい?」
「勿論ですとも」
なんと、スマートフォンとスマートウォッチが入っている。
「何も疚しいことはないのですよ、接待と言っても。でも、王子が不安になる気持ちはわかります。なので、いつでもわたくしの位置情報がわかるようにペアリング済みです。心がざわざわしたら、スマートフォンにいつでも連絡してきてくれていいですよ。わたくしにとって、王子は何よりも優先したい方なんです。スマートウォッチはおまけです。取扱説明書をよく読んで、使い方を覚えてください。王子という立場上、危険な目にあうかもしれないですし、実は、わたくしも王子と離れている間、どこにいるか把握しておきたいので……ふふ、白状しますが、こう見えてとても独占欲が強いのですよ」
そのあと、ぼくはロングアイランドアイスティーを三杯おかわりし、それでも全然シラフなのをみて、心配されてしまった。
「シャウラの作るカクテルは本当に美味しい。前世、バーテンダーだったって言ってたよね。かっこいい」
「更にかっこいいことしてもいいですか?」
「な、なに?」
「スマートフォンのケース、お揃いなんですよ、はい!プレゼント!」
「わあ、わあああ!!ありがとう!!どうしよう、とっても嬉しい!!」
星のスタッズのあしらわれたかっこいいケースが、透明な箱に入っている。ブルウのリボンがかかっていて感激のあまりぼくは四つん這いで部屋を徘徊しはじめた。
「これって、ゆめじゃないよね?」
「しっかり現実です」
ぼくの奇行を眺めてシャウラがお腹を抱えて笑っている。
「手を洗って、戻ってきてください」
「はあい!」
そこにタオルがありますと言われたので引き出しを開けてみたら、綺麗に畳まれたタオルが入っている。几帳面だなあと感激していたらおいでおいでと手招きされた。
「是非ケースをつけてみてください」
「うん!やってみる!」
箱を壊さないように開けて、ケースを取り出す。かっこいい。
スマートフォンにつけてみたら重厚になった。シャウラもポケットからスマートフォンを取りだしてみせる。
「わあ、本当だ、おそろいだ」
うれしさのあまりシャウラのほっぺたにほっぺたをくっつけてすりすりする。
「ありがとう!大切にするね」
たからものだ、とつぶやいて、スマートフォンとスマートウォッチを触っていると、とてもやさしいほほえみをたたえてみつめられていることに気づいて、照れ隠しにポケットにしまう。
そんなわけで首輪までつけられてしまったぼくだけど、この人になら束縛されてもいいと思った。なかなかぼくも重たいやつだなあと思いながら、四杯目のロングアイランドアイスティーを飲み干したのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?