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IKEUCHI ORGANICが考える“アップサイクル”とは?

IKEUCHI ORGANIC代表の池内です。

IKEUCHI ORGANICでは「最大限の安全と最小限の環境負荷」という企業理念のもと、ものづくりにおいて生じる廃棄をゼロに近づけることを大切にしてきました。

オーガニックコットンは、世界のコットン生産量のわずか1%程度に過ぎません。なぜなら、その生産には非常に手間がかかるからです。オーガニックコットンの栽培には、自然環境の整備や農家さんたちの労働環境の改善が必要で、工場での機械による生産ラインを増やすのとはわけが違います。

タンザニアやインドの大地で真心こめて栽培されたオーガニックコットンを、品質の優れた商品へと変え、お客様の手元に感動と共に届ける。これが私たちの使命です。


タオル製造において発生する“残糸”とは?

しかし、ものづくりの過程で、どうしても倉庫に眠ることになるオーガニックコットンが生じてしまうことがあります。

タオルに限らず、生地の製織には必ず「整経(せいけい)」という前工程があります。多数の糸を1本1本並べ、糸の張りを調整し、「伸べ(ビーム)」と呼ばれる大きな糸巻きに巻き取っていきます。

(▲)整経の作業風景

伸べに巻きつけられた糸は、タオルを織る際の「経糸(たていと)」となります。整経が適切に行われないと、製織作業が滞ったり、織り上がった生地の品質にばらつきが生じるため、非常に重要な工程です。

整経の作業は、製造するタオルの設計に基づいて、糸の種類や量を計算することから始まります。ただし、コットンは天然素材であるため、均一な長さや太さではありません。綿密な計算や経験に基づいて糸の量を設定しても、若干の誤差が生じることがあります。

それ故、余裕をもって少し多めに糸を用意するようにしているため、タオルを織る度にどうしても半端な量の糸が残ってしまいます。そうした糸は「残糸(ざんし)」と呼ばれ、弊社ではオーガニックコットンの約3%程度が残糸となっています。

さらに、糸を染色する際に、人為的ミスにより、規格とは違う色に染め上がってしまうこともあります。ミスをゼロに近づけるための改善を続けていますが、人の手が入る以上、完全に防ぐことは難しいです。このように余剰染色された加工糸も残糸として扱われます。

残糸として扱われるこれらのオーガニックコットンは、品質に問題があるわけではなく、私たちの製造の都合で発生してしまったものです。どれも大切に育てられたオーガニックコットンですので、倉庫の片隅に眠らせておくわけにはいきません。

そうした想いから、IKEUCHI ORGANICではアップサイクルに取り組むことに決めました。


糸の個性を活かした、ビーチタオルという提案

“捨てられるはずだったものに付加価値をつけ、新たな製品に生まれ変わらせる”

これがアップサイクルの一般的な意味合いです。古いデニムジーンズをバッグやクッションカバーに変えたり、使い古した木材を家具に再加工するなど、様々な業界でアップサイクルの取り組みが行われています。

今回、私たちがアップサイクル商品の第一弾として発売したのは、余剰染色された加工糸を使用したアップサイクル ビーチタオルです。

太番手の糸を用いて高密度できっちりと織られたビーチタオルは、カーペットのような肌触りです。

海辺やプールで身体を拭くタオルとしてはもちろん、ピクニックやキャンプで地面に敷く敷物として使うこともできます。また、ヨガやストレッチの時に使うマットとしてもお使いいただけます。

こちらのビーチタオルは遠目では2色のストライプに見えますが、実際はピンクと淡いピンク、オレンジとイエローの4種類の糸を使用しています。色彩の異なる糸を緩く束ねて、ランダムなストライプ模様で表現しています。

この4種類の糸は、人為的ミスによって、本来の規格とは違う色で染色された20番手の糸になります。「この子たちを使って、何かできないか」と考えるものの、IKEUCHI ORGANICらしからぬカラーということもあり、良いアイデアがなかなか思い浮かびませんでした。

残糸を再利用するために、これらの糸でバスタオルやフェイスタオルを織ることもできますが、それでは非正規品を販売するだけになってしまいます。そんな安易な企画では、コットンにもお客様にも失礼です。

20番手という太番手や、4種類のカラーの個性を活かしたアップサイクル商品を作りたい。これらの糸を机の前に置き、一年近く眺める中で閃いたのが、このビーチタオルというアイデアです。

ビーチタオルという名前は日本だと馴染みが薄いかもしれませんが、ヨーロッパでは夏になるとビーチリゾートが多くの観光客で賑わい、ビーチタオルは必需品となっています。デザインはカラフルで派手なものが多く、フラワープリント、ストライプ、トロピカルなモチーフなど、バリエーションが豊富です。

20番手という太番手の糸を使えば、極めて太いパイル仕様で丈夫な生地ができ、4種類の糸を使用することでカラフルな色彩を表現できます。この糸たちの個性を活かすには、ビーチタオルが相応しいと閃いたのです。


アップサイクルならではの品質を追求する

こちらの『アップサイクル ビーチタオル』ですが、余剰染色された加工糸の再利用を目的としていますので、糸を使い切った時点で生産は終了となります。

商品コンセプトや品質に自信はあるものの、ビーチタオルという新しい提案になるため、とりあえずほんの少し織ってみました。アップサイクル商品が在庫として残ると、環境負荷は倍返しとなるため、ゆっくり様子を見ながら提案していきたいと思います。

ちなみに、価格については通常の設定とは異なります。このビーチタオルは90x180cmのサイズで、厚みは約4mmと、かなりの量のオーガニックコットンを使用しています。しかし、もともと人為的ミスから始まった企画であるため、原材料の部分はほとんど価格に反映させていません。

比較的リーズナブルな価格で、残糸となったオーガニックコットンの個性を活かしたコンセプトの商品を提案し、アップサイクルならではの品質や楽しみ方を追求する。それが私たちの考えるアップサイクルのあり方です。

今後もIKEUCHI ORGANICでは、様々なアップサイクル商品の開発を続けていきます。第二弾の企画も近いうちに発表する予定です。

もちろん、根本の課題である残糸を少なくする取り組みにも注力していきます。

現在、今治本社工場において、製造における管理精度を飛躍的に高める大改革を進めています。最新のセンサー技術を用いて織機の動きを細かくモニタリングする仕組みを導入しようという試みです。これが実現すれば、糸の量を余分に増やす必要が減り、残糸の量を減少させるだけでなく、品質の精度も大幅に向上するはずです。

こうした取り組みを経て、会社として倉庫に眠っている残糸の量がどれくらい減ったのかも、数字で公開できるようにしていく予定です。

ものづくりにおいて生じる廃棄をゼロに近づけ、企業理念である「最大限の安全と最小限の環境負荷」をより一層突き詰めていきたいと考えています。


<編集協力:井手桂司>

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