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【イタリア】銃声と息子は役者 〜バス停の出会い〜

バスを待っていると、短いブロンドヘアに
小さな花柄のワンピースを身に纏い、真っ赤な口紅を引いた
「マンマ (母)」を一言で表したような婦人がやって来ました。

「バスはいつ来るの?」と話しかけてきます。
マンマは誰にでも話しかける。
時刻表なんて見ません。喋って解決です。

「あと数分で来るようです。」

会話はそれだけで、その後お互い違うところを見ながら待ちました。


パーンッ‼︎


突然、銃声が聴こえました。


えっ、何⁉︎
二人して唖然

「何が起きたの⁈」

近くのお店から "何事か" と人は出てくるし、
周辺の窓からみんな顔を出す。

滅多にないことなのでみんな驚いています。

銃声は、向かいの歩道から聴こえました。
しかし、煙も破損も被害もない。

何が起こったのか…

我が家の窓からも夫が身を乗り出し見ています。
目が合うなり、私は両手を広げて "さっぱり分からない"
という身振りを送る。

よくよく考えると、
自転車に乗った外国人が、ゴミ箱の前を通過した時に鳴ったような…
ゴミ箱に向けて発砲した?なぜ?
その後、男性は少し先で止まり、こちらを振り返っている…
それが何を意味しているのかは分からない。
彼も驚いているのか、実は建物から反響して
たまたまそう聴こえたのかも分かりません…


聴こえた出来事を婦人と二人で話しました。

結局、なんの手がかりもないまま、
不思議な一場面は終わりました。


婦人が「ところで、あなたイタリア語が上手ね。
どこの出身?何年いるの?」と尋ねてきます。

そこから、何もなかったように私たちの会話が始まりました。

これから盛り上がるところで、バスがやって来ます。
ほんの数分の間にこんな出来事があったんです。


バスに乗ると、婦人が二人がけに腰をかけたので、
隣に行きます!とあえて横に座りました。


婦人は我が家の様子を訊いてきます。
大通りに面していて、車の往来がうるさいこと、
でも寝室は中庭に面しているから静かなこと、
夫婦二人じゃ広くて、テラスもあって、隣に義母がいて…と紹介。

今度は婦人の番。
普段ミラノに住んでいて、夏の期間に地元に帰って来るんだとか。
若い頃は、今ほど外国人はいなかったし、
家の周辺がイタリアじゃないくらい変化したと。

そして今、乗り気じゃなかったけれど、友だちが誘ってくれたから、
わざわざ家から20分も離れた海に行くんだとか。


そして婦人は、
「私の息子はコメディアンをしているの。」
何の脈絡もなく急に話が変わりました。
自慢の息子さんなのでしょう。赤の他人に言える母親って、
素晴らしい愛情ですね。

インスタで名前を検索してみます!と調べていると、
隣から覗き込んできて、「彼ょ!」と指を差す。


白髪混じりのカールの効いた髪に、少しの髭を蓄え、
舞台の上で軽快に動いている。
ワインにも精通していて、催しも開催している様子。

写真や動画の中に隣の婦人もいて、
「あれ、この人誰?」などと冗談を言ってにこやかに過ごしました。

わずか20分の間にじっくり婦人と会話でき、
何とも穏やかなひと時でした。

知らない人と話す雑談力、絶え間なく喋り続けるための問い、
あいづちの仕方、お別れの挨拶など、
初対面の人との一期一会の会話って独特ですよね。
何を聴いても応えてくれるし、私にも興味を持ってくれる、
マンマの懐の深さに感謝します。

また会えると良いな

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