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【イタリア通信】ラジオの裏側 通話テスト

日本のラジオでコーナーを持っています。その名も『イタリア通信』そのまんま!隔月で、香川県高松市の西日本放送ラジオに出演しています。かつて勤めていた局で、今も当時の先輩方にお世話になっています。途中なかった期間もありますが、合計で8年はやっているほど結構長く続いています。

さて、今回は放送に大事な電波ならぬ通信テストを行ったのでその様子を綴ってみます。ラジオの裏側ではこんなことを行っているんですよ。


コロナ以前の放送


国際電話を利用して

コロナ以前は、家の固定電話で国際回線を使ってのやりとりでした。電話はもちろんタイムラグがあります。ですので、相手の語尾が終わるタイミングであいづちや返事をします。いわゆる「被せ気味」。これをすることにより、リスナーに違和感を与えないように、また不快にさせないよう工夫をしていました。
外出先では、もちろん携帯電話からリポートするのですが、やはり固定に比べて音質が落ちます。15分以上もこの音を聞くと、聴く側は疲れるので、なるべく使わないようにしますが、外からの中継は臨場感が出るのでいいんですよね。

取材素材配信

イタリア人の声や街の音を届けたい時は、取材してきた素材を交えて放送することもあります。音声は動画やボイスメモで録音したものを、「Audiocity」や「Davinci Resolve」で編集してWAVファイルで提出し、スタジオから出してもらいます。少し手間がかかるので、「撮って出し」には向いていません。ですので、きちんと構成を考えた上で録音するかどうかを決めています。

ネット通話

イタリアに来てから、スタッフとのやりとりは、LINE・メール・Messengerアプリを使用しています。ラジオでは、ネットを介した通話の音声をラジオの電波に乗せることは、規則上できないことになっています。技術的に可能でも、ルール違反になるようなんです。IT進化とラジオの進歩にズレがあり、歯がゆいなと思いながら、時差のある国際電話を使っていました。



コロナ以降の進化

ネット通話開始!

リモートワークにより、ネットを介した通話が盛んになりました。これまではSkypeが独占的でしたが、zoomやGoogleMeetなどが参入し、激戦していきました。その甲斐あって、使いやすく、便利な機能が次々に搭載されていきました。

これにより、ラジオ界は改新。キー局の放送を聴いていると、「zoom/リモートでお届けします」なんて説明も珍しくなくなりました。あの古い電波のルールも改定されたんでしょう。やっとネット時代に対応しました。

当局でもついに

「専用アプリを使う!」と、技術担当者から連絡が入りました。試してみて放送で使えるかどうかを判断し、都合がよければ継続という流れ。 
実はこのアプリは二代目で、前回のは契約が終了。今回新たに、放送で使えるものを探し出してきたようです。

技術さんは、細かい設定をした上で試し、踏み間違いそうなステップを事前に予想し、セッティング用資料をして出してくれました。これが、数字の羅列やチェック項目を確認したり外したりしていく作業で、眠い中やると、見事に落ちていきます。そうこうして、アプリの設定は完了。いざ、テストを行うことになりました。

通信テスト開始

予定時刻より前にスタンバイ。イタリアは朝で日本は夕方という時刻。寝起きで完全に脳が起きていないせいか、通話がスタンバイにならない。
メッセージアプリで担当Dに連絡。そっちスタンバイしてますか?なんて聞きつつも、こっちの問題だろうなと。

再度担当者と話をして、設定の確認を行ったところ、ユーザー名のところにスペースが入っていることで、接続できないのだと言う。消して立ち上げ直してみると、繋がった!こんなスペースにも反応するだなんで。そりゃそうだ…


チェック項目は、

□ 音声がクリアかどうか
□ 優れたマイクは本体・イヤホン・AirPods
□ 途切れないかどうか
□ ノイズが入っていないかどうか
□ 遅延はどのくらいかるのか
□ 一度落として立ち上げる時間は

これらを全て試していきます。音声はとても良く、同じ空間にいるくらい違和感なく会話ができました。

マイクは有線イヤホンが一番聞き取りやすくクリア。AirPodsはやはり音声の劣化が激しいので却下。

途切れることは少しあり、途中でデジタル処理をうまくできていないからか、変な変換音が一瞬聴こえるけれど、よくあることかもしれないとのこと。耐えられるレベル。

「音が返る」という現象が発生。調整してみると、私のイヤホンの音が大きすぎて、私のマイクで拾っていたという状態。なので、音量を中間レベルに設定。イヤホンのマイクを口に近づけた方がいいことも確認。

アプリは一度落とすと、立ち上げに2分はかかるこのが判明。それでも続けるか、スタジオから電話してくるか判断を任せました。


ザッとこのようなテストを行いました。結局一時間を要しました。意外にもかかるんですよね。念入りにしないと、いざという時に対応できないし、時間のロスになるので、アプリの性格を知ることが一番の目的。

こうして、無事にテストを終えました。

放送の裏側では、こんなことをやっているんです。地味な作業ですが、あらゆる状況を想定し、万全の体制で本番に挑みます。みんながこの状態で番組を作るので、いい緊張感と躍動感が放送にはあります。特に私は生放送が好きなので、「今」しかできない状況に興奮します。補足の一言に興味を持ったり、独り言のような感情に大きな意味があったり、マイクの前の緊張感だからこそ出る本音もたまりません。それもこれも電波や通信環境が整っているからこそできるんです。

さぁ、あなたの聴いているラジオはどのようなものでしょうか。裏側も想像しながらぜひ聴いてみてください。 

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