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イタリアで初めての「安楽死」
※今日は少し重い話題です。そんな気分で無い方はどうぞスルーしてください。
2022年6月、イタリア中部で一人の男性が、倫理委員会の認証の下で「安楽死」を行いました。
安楽死は法律上できない
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イタリアでは、安楽死は法律で認められていません。保守党やカトリック教会により反対運動が行われてきました。彼らは、離婚や中絶に対しても頑なに認めてきませんでした。時代の流れと共に変化し、国民投票で覆ったのは、ここ40年のことです。
現在法律上では、自殺を手助ける「自殺ほう助」は、5〜12年の禁錮系が課されます。ですので、何らかの理由で安楽死を求める人には、「スイスへ行く」という手段しかありませんでした。
安楽死を選択するイギリス映画
かつて、スイスで安楽死を決断する内容のイギリス映画がありました。
楽しそうな恋愛映画かと思っていたので、衝撃の結末に、終わった後も悲しすぎて泣き続けました。こんなにも感情移入作品はこれ以外にありません。
しかし、決して辛いだけではなく、とても考えさせられる内容でした。また、映像や人物に引き込まれるので、見る価値のある映画の一つです。
イタリアで最初の人
元トラック運転手の通称マリオさんは、12年前に交通事故で脊髄損傷し、四肢まひとなりました。背中から下が完全に動かなくなり、看護なしでは生活できない状態です。
マリオさんは、ビデオメッセージを公表しました。背中より上は動くので、言葉も意志もはっきりとしています。ですが、映像には見えない苦労がたくさんあることが伝わります。
本人の最後のメッセージ
回復するならその方向に任せるが、そうでない場合は考えないといけなかった。ここ数年、痛みや苦しみが増し限界が来たので、スイスへ行く手続きを開始。出発しようとする直前、支援団体が弁護士に連絡をとり、イタリアで自殺ほう助できるよう求めてくれた。
そして、倫理委員会は、昨年末に意思を承認。「ここイタリアで、君の好きなようにできるよ。」と言ってくれた。イタリアで初めての人となる。
それから20ヶ月を要した。痛みと苦しみの20ヶ月はとてもとても長かった。次に続く人がもっと短い期間で済むことを願っている。
イタリアで、初めて安楽死が認められた事例となりました。痛みながらスイスへ移動することはとても過酷なこと。そこまで強い決意の上にあることをお上は汲み取ったのかもしれません。
またマリオさんは、次の人への配慮もしています。誰かの希望になる選択をしたことは、彼にとっても誉れになるでしょう。イタリアの話題が、日本でもニュースになるだなんて、そこまで考えていいなかったでしょうね。しかし、世界へ問題提起をさせる一歩だったことは間違いないです。
誰も罰せられない
今回のマリオさんの協力者は、刑罰を受けないことが分かりました。
自分の意思に基づいて判断でき、かつ「耐え難い」苦痛を抱えている人に対するほう助は必ずしも犯罪に該当しないと判断した。
自分の意思で決断したマリオさんにとっても、負い目を感じずにいたはずです。家族にとっては苦しい決断だったと思います。
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スイスの現状と今後
スイスでは自殺ほう助団体があります。
2020年には、約1300人が自死しました。誰もが行けば受けられるのではなく、何度もカウンセリングや会話をしたのちに、相当するかどうか判断が下されます。
眠りに落ちるように安らかな死を迎えることで、本人も家族も苦しむことがないということです。2021年には、日本人男性がスイスまで来て、ほう助を受けて自ら命を絶ったことは報道されました。
近年スイスでは、カプセル型のマシンの導入を検討しています。場所を問わずどこでも行えるようです。最大の利点は、医師のほう助をなくすこと。医師らにとっても大きな決断であることは想像できます。
マシンに入り、AI: 人工知能により、精神状態を見ながら患者の判断能力が正常であるかどうか見極めれば、医師の負担は減ることでしょう。また患者は、自らの手で行うことができるようです。
良いか悪いかの判断はしない
安楽死について賛否はあるのは当然。でも病気で苦しんでいる人に対し、頑張って生きよと言い続けることは、誰のためであるか分からりません。もし、自分がこの立場になったらと考えると、答えを出すには時間がかかるはず。マリオさんは、それに値する苦しみを乗り越えた末、権限を得たということかも知れません。
日本の自殺の多さを聞かれる
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イタリアに住んでいて、日本は自殺が多いんでしょ?と聞かれることはたまにあります。
厚生労働省の「諸外国における自殺の現状」というPDFを見てみると、約10年前の各国における自殺率の調査では、主要国の中でイタリアは低い水準にあることがわかります。日本はというと、ロシアやアメリカに次ぐ上位にランクしていることが分かります。
先進7カ国の死因上位を見ても、全ての国が事故や自殺が多いのに対し、イタリアは事故・がん・自殺の順と、唯一違っていました。
イタリア人の陽気さや、受け入れる体制、住みやすさなどから、他国に比べて少ない結果が出ているのかもしれません。
逆に、このような国から、極東の憧れと謎に包まれた地では、自殺が多いということが強烈な印象を与えるのかもしれません。
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日本では尊厳死が映画に
偶然にも、尊厳死を扱った映画がカンヌ国際映画祭で話題になったようです。こちらは、患者のためを想って決断することですが、死と対面するという点では同じように苦渋の選択を強いられます。
早川監督が描いたものは、世界に共鳴した作品だったことが認められました。
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今回は、イタリアで初めての安楽死について触れてみました。
決して、簡単には扱えない話題に、何を書いていいか躊躇しましたが、イタリアで起きている現状、イタリアから見える日本、世界の様子を知ることで、2022年の「今」を切り取ることにしました。
これから先、どのように変化していくのか。記録としてここに綴りました。
では、Ciao.
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