見出し画像

【イタリア】街角に北斗の拳

1983年に週刊少年ジャンプで瞬く間に人気を博した
マンガ『北斗の拳』。
核戦争後の199X年という荒野の舞台で男たちが戦う
ハードボイルドアクションに男女問わず夢中になりました。
翌年から開始したアニメも好調で、
歌もセリフも大流行を巻き起こしました。

日本でヒットしたアニメは、遅れること3年、
イタリアでも放送がはじまりました。
ちなみにイタリア語では、
『Ken il guerriero』(直訳:戦士 ケン)

日本と同じように30代後半以上が知っているアニメで、
今の若者の聴いてみると、名前は知っているという反応でした。


忘れさられようとしているケンシロウですが、
街角の壁に存在しました。

紙に印刷したものを貼り付けている状態。
ちょうど「お前はもう、死んでいる」のシーンです。
その周りに書かれているのは…

地元の方言で、
俺はマスクを付けて海になんて行かないさ。
女子たちに注目を浴びないからね。

少し下品な言葉で書かれていていますが、
だいたいこのような内容です。
ケンシロウが話している風に書いています。



イタリアではKEN


『北斗の拳』について少し紹介しましょう。

ケンシロウは、「KEN」と略されます。
短くて言い易いのと、キャッチーだからでしょう。
イタリア語では「K」の文字を使いません。
同じ音を「CH」で発音します。
なので「K」を使うことで、外来語だということがわかります。
だから「KEN」だけで興味を引くことができる名前なんです。


独自のアニソン

オープニングとエンディング曲は、
イタリアでは独自の楽曲を作ることが多く、この作品も然り。
私たちの知らないアニソンがここにあります。

イタリア版のオープニングを見つけました。
絵と文字:つまり映像は、原作の日本語表記のものが利用されています。
ですが、音楽と歌は後から追加され、絵と歌が全く合いません。


よって、イタリアではクリスタルキングの
「You are shock!」は知られていないんです。

と思っていたんですが先日、
アニメや日本好きなイタリア人男性から
You are shock!」といきなり言われました。


なんで知っているの?
どういうこと!?


今回イタリア語で『北斗の拳』検索していると、
YouTubeの動画でキャッチとして使われていました。
5秒の短いものを宣伝に起用していたんです。
イタリア人が一瞬聴いただけで伝わるかどうかは謎ですが、
アニメ贔屓な人にはたまらない部分でしょうね。

あの名台詞はあるけれど

イタリアのファンは、YouTubeで日本語版を検索しているようで、
イタリア語で書かれたアニメ動画をいくつも見つけることができました。

では、ケンシロウのあのセリフをどのように言っているのか。
日本語なら「お前はもう、死んでいる
と、低い声で渋く間を取りながらゆっくり話します。


イタリア語ではどうなるのか?

「Tu sei già morto」


特にひねりのない日常的な文法を使います。
ですが、初期のイタリア版ケンシロウは、
声の重みはなく、前の会話と続いてさら〜っと流れました。

えッ?

一度では聴き逃すほど早かったのです。
あまりにも一瞬だったので、巻き戻し再生し
あぁ、確かに言っているとやっと把握できました。

これは、イタリアあるあるですが、
顔の印象より、声が高い人が結構います。
逆に声が低くて渋い人にはなかなか会えません。
周りの声を聴いている限りですが。
日本の感覚でいると、
「見た目より、声が高い!」と驚くことがあります。
初期のケンシロウもその一人。
また、アニメだけでなく映画の吹き替えでも
こんな声じゃなーい!と思うことは何度もあります。


ケンシロウの台詞が出る戦いの終盤になると、
ヨッ待ってました!と言わんばかりに、
みんなの期待が集中するところ。
ですが、イタリア語だとこんなにもあっけなく過ぎる。
ここに重きを置いていないことなんてあるのでしょうか。

実はイタリアでも、日本と同じように
残虐的なシーンに作品自体に大人やメディア側から非難があったようです。


久しぶりに見返して、アニメだと分かっていても
戦闘場面は悲しくなってしまします。
私たちは、あの時代からこれまでの30年の間に
このようなシーンを悲惨だと感じるようになったようです。

それは、現実社会でも惨烈な災害や事件やテロなど、
これまで知る由もなかった、小さな地方での話題や
遠い世界での出来事にまで、情報が届くようになった
IT社会のもたらしたものの一つなのかもしれません。

さらに30年後、この感覚はどうなっていくのでしょう…
いや、それよりも、その昔から今を見た高齢者に
現代の話を聴く方が興味深い。まずは義母に聴いてみよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?