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肩にあごを乗せて寂しいよと呟いたとき、柔らかい風が追い越していった。 #呑みながら書きました #聞いてよ20歳

3年前にnoteに何を書いていいのか分からなかった頃、フォロワー数もゼロだったし、知り合いも友人もイナカッタ。twitterもセットでやらなきゃダメなんだってワカッテ始めた頃、馴染まなくて何を呟いていいかワカラナカッタ。

いまでは沢山のnorterに囲まれて、note酒場でベロンベロンで酔っ払ってLTをしたり、パワフルおじさんと呼んで貰えるような、幸せな時間を過ごしている。

僕は(ボクと書くのは久しぶりです)映画の「男はつらいよ」の寅さんみたいになりたいと、いつも思っているんだ。親戚の姪っ子の結婚披露宴で、嬉し哀しくて酔っ払って大声で泣いて、披露宴をメチャクチャにしてしまうようなダメな大人でいたい。

更に出来れば「今頃どこに居るんだろうねぇ。まったく。元気ならいいんだけどねぇ」とか言われて、ついでに「なんだかメチャクチャだけど、アレだね。なんか居ないと寂しいねぇ」って言われたら、最高な人生だ。最高な気分であちら側へいけるだろうなって思っている。マジで。

なんで、そんな事を想うようになったのか。幾重にも重なった心の澱みたいな出来事を書こうと思ったんだけど、30年ほど時計を巻き戻すのには、少々時間がかかる。いやかなり大変だ。いくら吞んでも酔わない。だから、こんな気分だって曲を。この前みつけたんだ。ちょっと一緒に聴いて、付き合ってほしいんだよ。だらしなく酔って書けるまで。

誰にだって青春はあるし、切ない想い出くらいは在る。そんな事を、書くほどヤワでもないんだけどね。もう3杯ほど吞まなきゃ書けねぇよ。

まるで目の前の夜空を流れ星が横切るように
本のページから天使が出てきたみたいに
突然この世界に現れた
もう昔の自分には戻れない気がする
心の中に流れている曲のように
この手についた油のように
いくら拭っても,忘れようとしても消えていかない
だけど好きになってよかった....

Corinne Bailey Rae/コリン・ベイリー・レイ
Like A Star/ライク・ア・スター


或る日、デスクに「宛先のない手紙が届いた」

白い封筒は、何枚も積み重なったビジネスレターの下に、ひっそりと潜んでいた。気が付いたのは、何日か経っていたと思う。

あなたの事を思い出しました。夏の日に砂浜を走ったこと。私を置いてひょいと居なくなってオートバイで旅に出かけちゃうこと。一緒に観た最初の映画は何故か「東京裁判」だったこと。出来たばかりの東京ディズニーランドへダブルデートで行って寒かったこと。オートバイレースの転戦でヒヤヒヤして嫌だったこと。会えなくて寂しかった時のこと。何故かあなたは海外に行ってしまっていると思い込んでいた。ネット検索の方法を教えて貰ってあなたの近況を知りました。それがとても嬉しかったので手紙しました。今でも、あなたとの想い出、その全てを大事にしています。

それだけだった。高校生の頃から6年ほど付き合ってた彼女からだった。自分史上最長の彼女。懐かしい、クセのある文字が胸に突き刺さる。

自分の近況はひとつも書いてない。どこに住んでいるか、何をしているのか、結婚しているのか、子供がいるのか。何も書いてなかった。自分の事はなにひとつも。

デスクに開いた手紙を置くと、背もたれを深く倒して天を仰いだ。見えたのは蒼い空ではなく、痩せこけたように。白く光る蛍光灯だった。

離婚したとか、重い病気にでも罹ったのだろうか。手紙を何度も読み直してみる。しかし、ヒントになるような言葉はひとつも見つからなかった。ひとつもなかった。ただ伝えたかったのだろうか。

手紙を机の奥に静かにしまった。

それから数年して、離婚して何もかも失って、友達に拾われたら、多いなる勘違いで、お見事なほどな家賃を請求されたり、絶望てなんだっけ?を通り超えて、世界を放浪して、しばらくボーっとしていた。

出版社に送った原稿をきっかけに、とある女性編集者に「なんか書いてみてくださいよ」と言ってもらえて、銀座の古いバーに呑みにつれて行ってもらった時、「あと。どんなハナシが書けるんですか。他に」と聞かれた。ような気がする。

オートバイ耐久レースで優勝を逃したある夏のハナシ。明治時代のオンナは強いという祖母のハナシ。レンタカー屋に乗り捨てたトラックを冬の日本海沿いに運ぶハナシ。そんなハナシをしたと思う。久々にシャバの空気に触れた気がした。

バーを出てから、汁ものがどうしても食べたいと言うので、駅にちかいオッサン会社員で蒸しかえるラーメン屋で、瓶ビールとチャーシューメンをたのんだ。確実におっさんがそこには2人いた。

レンタカー屋に乗り捨てたクルマを運ぶハナシは特にウケて、豪雨の夜中に、第二駐車場まで歩いて何時間もみつからなかった事とか、強力なハンドライトの光が漆黒の闇に吸い込まれて、何も見えない荒野の駐車場を探す大変なこととかさ、バーの続きを話していた時、ふと手紙の事を思い出したんだ。そして、聞いてみたくなった。女性のやり手編集者だった、ってのもあるかもしれない。

「何が伝えたかったんですかね。少し寂しいですよ」

ラーメンをすすりながら、しばらく時間が経ったころだと思う。

「そういう時もあるかもね」

仕事に戻ると言う編集者と別れて、新橋駅から乗った地下鉄の中は、空いていた。青白い社内の灯りが、左から右へ流星のように流れて行く。目を瞑ると、人が少ない砂浜を一緒に歩いたのを想い出した。すこし乾いた匂いがした。

あの頃の逗子海岸には、まだ由緒正しき、古き良き時代の「なぎさホテル」が残っていて、時計が海を向いていた。陽が傾いてきたのにまだ暑くて、海は凪だった。

コーラでも買ってくるよと、髪をかきあげると、ホテルの方へ歩いていった。青いジーンズと、白いTシャツに長い髪の後ろ姿が好きだった。清潔感のある凛とした感じに惚れていた。いや。すべてが全部が大好きだった。

肩にあごを乗せると「寂しいよ」と、背中にもたれてくる。コーラの缶を渡すと、胸に手がまわってきた。手を握ってしばらく、斜めに傾く海をみつめていた。

人のいない海が好きだった。あの日の事も、覚えているだろうか。きっと覚えてるだろうけど。

なんで別れたかどうしても思い出せない。些細な喧嘩でそのままになってしまった気がする。あの頃はケータイも、ポケベルも無かった。自分の部屋に留守電もなかった。僕は家に居たくなくて、よく先輩の家や、友達の家を転々としていた。

やがて僕は大学へ行き、彼女は短大へ行き、そして僕は人気の広告会社へ入り、彼女は保母さんからケースワーカーになった。僕は、毎日に追われて、そして新しい出会いが続いた。刺激的だったし、オトナになった気がした。嗚呼いま生きているって感じだったんだ。

でもね。だんだんワカッテキタ事がある。20歳の頃のあの日に一緒だったあなたが一番ぴったりだったんだろうなって。あのまま付き合って結婚していたらってね。だってさ。人生に”モシ”はないけど、もっと平凡で幸せな人生だったかもしれないじゃないですか。そんなワケないんだけどね。

寅さんになりたいってさ。そんな取り戻せない郷愁への仕返しなのかもしれない。レースに駆け抜けたあの頃。生きてるって実感が何よりも大事だった。「いま生きてる」って実感が。あなたは、レースに「怖いから一緒には行かない」ってサーキットへ来てくれなかったのは寂しかったよ。

そんな事を伝えたくても、送り先の宛名が書いてないんだから仕方ないよね。僕は、なんとか明るく元気に生きています。きっとあなたも元気でいてくれてると信じてます。

また、どこかで会ったら、その時は二人ともシワシワのお爺ちゃんと、お婆ちゃんかもしれないけど、きっとあの海を眺めた時のように、肩にあごを乗せてほしいよ。きっと柔らかい風がふたりを包んでくれるから。

あなたを好きになってよかった。今でもぜんぶ大事にしています。

いまこうやって書いているけどさ、きっと伝わってると信じている。「宛先のない手紙が届いた」あの日を忘れません。


いつもビジネス系のnoteが多いけど、今日はちがう文章を書けて素敵な週末です。DITAのライチって、ちょっとだけ恋の味がするね。気のせいか。あは。ぜったい気のせいやね。

いま、いつもどおりに酔追っている。みなさん良い週末を。そして、#呑みながら書きました  と  #聞いてよ20歳 に乾杯!ありがとう!!


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◆ありがとう! #呑みながら書きました


◆ありがとう! #聞いてよ20歳   ! 書きました。


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