君の笑顔は白い消しゴム (毎週ショートショート)
彼が居なくなってからもう一年が経つ。
私はふと、あの日以来開かずの間になっていた彼の部屋に足を踏み入れてみることにした。
うっすらと埃が積もった壁の本棚には、彼の好きだった本がぎっしりと並んでいる。
その中の一冊を手に取りパラパラとめくってみると、彼の筆跡で書かれた一枚の便箋が挟まっているのを見つけた。
文房具が好きな彼らしい詩だった。
読み終えた私はひとり、彼の部屋の中で無理に笑顔を作ってみたが、堪えきれずにボロボロと涙があふれ出した。
すると涙で文字が滲み、ぐちゃぐちゃになって消えてしまった。
「なんで水性ペンで書いているのよ。」
そう呟いたが、なんだかこれも恥ずかしがり屋の彼らしい。
そう思うと今度は自然と笑顔がこぼれ、この途方もない悲しみがフワッと軽くなったような気がした。
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