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認知症の母と沖縄移住 06 下見の準備・高齢者施設

移住の下見にあたって、最も重要なこと、それは、私たち夫婦が先行移住後に、母が現地の施設に入居できるのか、ぴったりの施設を見つけられるのか、その可能性を見極めることです。

母の施設選びは今回が3回目。

恋も2度目なら少しは上手に♪

80年代の歌姫の名曲にもありましたが、人間は経験と失敗を重ねれば重ねるほど、選び方や対処法がこなれていきます。

見知らぬ土地で施設を見つけるには……
1)市役所の福祉課、2)民間の有料老人ホーム紹介所、3)地域包括支援センター

で基本的な情報を収集し、パンフレットを片手に気に入った施設を一軒一軒下見して回るというのが一般的です。

ただし、市役所や有料老人ホーム紹介所、地域包括支援センターは、対応する人によって、能力や知識量、仕事への熱意のばらつきが非常に大きいという難点があります。

制度や認知症の症状、地域内の施設の運営状況について、ほとんど理解しておらず、ただ、座席に座って、やっつけ仕事をこなし、勤務時間が過ぎるのを待っているだけ。そんな職員に当たることも珍しくありません。

そういう時は、怒ったり、絶望したりするのは、時間と労力の無駄です。直接、施設の管理者に話を聞きにいき、地域の実情がどうなっているのか、母に合いそうな施設に心当たりがないかを教えてもらうという手があります。

介護の現場にいる管理者たちは、地域でのネットワークがあるので、自分の施設以外の情報にも通じていることが多いのです。

期待値を高め過ぎないように自分を制御しながら、市役所の高齢福祉課を訪問しました。

聞きたいポイントは、二つです。

1)東京のグループホームから、沖縄のグループホームに直接、転居することは可能なのか

2)インターネットで見たところ、沖縄のグループホームはワンフロア(1階だけ)9人のところが多いようだが、それはどうしてか? 東京と同じようにツーフロア18人、定員いっぱいまで受け入れているグループホームはないのか

グループホームは地域密着サービスと銘打っており、地域の認知症の高齢者を想定して、サービスを提供しています。

地域外の認知症の高齢者が、グループホームに入所するには、その地域の民間住宅か、有料老人ホームに引っ越してきて、3か月間、現地の介護保険サービスを利用した実績を作らなければいけません。

ただし、これは原則であって、原則には付きものの例外があります。やむを得ない事情がある場合には、市長宛てに特例申請を提出し、市長が、「それじゃあ、仕方がないなあ、可愛そうだから受け入れてやるかあ」と特例を認めてくれたら、地域外からいきなりグループホームへの転居を果たせるのです。

私は一度、この特例申請の恩恵に預かった経験があります。

神戸で独り暮らしをしていた母の徘徊が激しくなり、これ以上、独り暮らしを継続するのは危険。そう判断して、私が住んでいる東京の下町のグループホームに入居の申し込みをした時でした。

この時の申請理由は、次のようなものでした。

母の身寄りが、一人息子である私しかいないこと。当然、面倒を見る家族も私と妻しかいないことそして、私が東京の下町に当面は住み続けるであろうこと。

母は認知症を患ってはいるものの、体にはどこも悪いところはなく、グループホームでの共同生活、調理を始めとする家事の補助を通じて、残った機能を残したいこと。

そのためには、下町のグループホームに入居する以外に方法がないこと。

区役所の担当者の方が非常に理解のある方で、こちらの事情にいたく共感を示してくれたために、特例申請は驚くほどあっさりと通りました。

ちなみに理解のある担当者と出会えたのは偶然ではありませんでした。まず、区内のグループホームの管理者の何人かに話を聞きにいき、介護行政に情熱を持って取り組んでいて、融通のきく方を紹介してくださいとお願いして、割り出したという経緯があり、狙い撃ちした格好です。

今回ももちろん、狙い撃ちを狙いました。沖縄に住んでいる友だちのさらに友だちに紹介してもらって、窓口で担当者を名指しで指名しました。ところが、伝言ゲームの過程で何がどうねじ曲がったのか、紹介されたのは、生活保護申請の担当者でした。

グループホームに入りたいと説明すると、グループホームは、障がい者を対象としていて、認知症の高齢者向けのグループホームというのは聞いたことがないと言われました。

では、私の母の入っているグループホームは何なのか。グループホームに入っていると思っていたのは幻で、実はあれはグループホームではなかったのか。ひょっとすると、グループホームというのは本州だけの制度で沖縄にはないのだろうか。いや、そんなはずはない。ホームページにはしっかりと、沖縄のグループホームの情報が載っているではないか。

しばらく、二人でかみ合わない会話をした後、母が現在入居している東京下町のグループホームの月額利用料の話になった時でした。

担当者の方が「ええっ、そんなに出るんですか」と目を丸くされ、ようやく、私が座っているのは、生活保護申請の窓口だと気づき、二人で顔を見合わせて大笑いしました。

生活保護の担当課の名前は、保護課。私は変だなあとは思いつつ、てっきり徘徊老人を保護することもあるので、保護課という名前をつけているのかと思って自分を納得させていたのです。

友人にグループホームを管轄している部署の担当者を紹介してほしいとお願いしていたので、当然、高齢者福祉の部署だろう。そんな思い込みがあったので、都合良く、こじつけていたのです。

ちなみにこの担当者の方は噂に違わず、親切な方で、沖縄県内の有料老人ホームの名前と住所、月々の利用料が掲載された一覧表をプリントアウトして手渡してくれました。

怪我の功名です。

ちなみに県内の有料老人ホームの一覧は、沖縄県のホームページに掲載されていました。
興味のある方はご参照ください。


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