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お父さんのためのweb3基礎用語(これだけは知っておきたい)

はじめに

本稿の目的

本稿では、
「web3ってよく聞くけど、何だかよくわからない」
「エッセンスだけ5分で知りたい」
「web3って投資の話?怪しい」
というビジネスパーソン向けに、web3に関わる基本的な考え方を伝える目的で、特に必須の概念を6つのキーワードに絞って紹介します。

なぜいまweb3なのか?

日本におけるブロックチェーン領域のビジネスは、暗号通貨においてコインチェック事件で一度冷水を浴びていて、なおかつ、もともと企業がグレーゾーンには慎重なこともあって、どちらかというと出遅れていました。

そんな中、昨年、自民党のPTによるホワイトペーパーが注目され、岸田首相の所信表明演説でも言及されるなど、2022年はweb3の注目度が高まった一年でした。

世界的には昨年秋にFTXの破綻(実態は古典的な横領でしたが)などもあり、暗号通貨に対して依然として賛否両論が存在し、加熱したブームもすっかり冷えこんでいるところですが、web3に向かう変化は一時的なものではなく、構造的で不可逆なものです。

今となっては当初出遅れていたことは日本については不幸中の幸いですので、今後起きるであろう国際的な事業環境の変化に対して、この機会にしっかり準備しておくべきものと思います。

2022年の出来事

<おさえておきたい出来事3つ>

  1. 自民党デジタル社会推進本部NFT政策検討PTが提言案「NFTホワイトペーパー Web3.0時代を見据えた我が国のNFT戦略」を公表 - (3月30日)

  2. 「経済財政運営と改革の基本方針2022」( 骨太の方針) 閣議決定(6月7日)

  3. 岸田首相臨時国会の所信表明演説で 「web3サービス利用拡大」言及(10月3日)

<参考:その他の出来事>

  • 米バイデン大統領「デジタル資産の責任ある発展の確保」に関する大統領令を発出(3/9)

  • デジタル「岸田トークン」を自民党が初配布へ NFTに本腰か - FNN フジテレビ政治部(5/28)

  • 電通、Web3領域のビジネスを支援するグループ横断組織を発足(9/8)

  • グリー、Web3事業に参入‐ブロックチェーンゲームを開発(9/27)

  • ドコモ、次世代ネット「Web3」に6000億円投資 - 日本経済新聞(11/8)

  • 暗号資産業者「FTX」破綻 負債7兆円か…「ビットコイン」も急落 - 「グッド!モーニング」(11/14放送)

出所:デジタル庁「Web3.0研究会(第1回)」【資料3】事務局説明資料(PDF/2,239KB)

参考資料

▼web3に寄せられる期待が、技術革新だけでなく組織や金融のあり方、ビジネスモデルやレギュレーションなど多岐にわたることがわかります


1/web3

<おさえておきたいポイント📝>

  1. web3とは、Web1.0、 Web2.0 に続くウェブ第 3 のパラダイムシフト。なお、Web2.0の象徴はSNS。Web2.0は双方向の時代、GAFAM躍進。

  2. ブロックチェーン技術により可能となる、P2Pのネットワーク上で成り立つ分散型の世界

  3. ブロックチェーンによる信用保証により、データの所有・コントロールについても自己主権化される

  4. web3は、Web2.0の反動、民主主義や資本主義の更新という(イデオロギー的な)運動の側面も

  5. web3的な考え方の下でのブロックチェーン技術の応用例として、ビットコインなどの暗号通貨、NFTやDAO、スマートコントラクトが注目されている

参考資料

▼Web2.0は何か?を復習しましょう

▼各時代を代表する具体的なサービス名が出ていて◎


2/ブロックチェーン

<おさえておきたいポイント📝>

  1. ブロックチェーンとは、P2Pの分散型台帳ネットワークを構築する、分散型台帳技術の一種。ビットコインなどの暗号通貨、NFTやDAO、スマートコントラクトの基礎となっている。

  2. 書き込みと読み取り専用(更新、消去はできない)

  3. データが誰でも閲覧・検証できるように公開されている(※パブリックチェーンの場合)

  4. 情報だけでなく価値の流通を可能にする(「価値のインターネット」)

  5. はじめは2016年頃、ビットコインの基盤技術として脚光を浴びた。続いて、スマートコントラクトや金融の民主化へと応用可能性が広がることで、より広く社会システム全体への影響が注目されるようになった

参考)ビットコイン

ブロックチェーンが脚光を浴びるきっかけとなった暗号通貨。時価総額54兆円(2023年3月12日現在)

▼ビットコインの仕組みにおいてブロックチェーンがどう応用されているか図示されています


3/イーサリアム

<おさえておきたいポイント📝>

  1. イーサリアム(ETH)とは、その上でプログラムが動作するようにした、プラットフォーム型のブロックチェーン

  2. 価値の交換や保存に向くBTC(セキュリティ重視)に対して、拡張性を重視している

  3. ETH上で中央機関を介さずに契約内容を自動執行できる(スマートコントラクト)ことで、多様なアプリケーション(DApps)を構築し動作させることが可能

  4. スマートコントラクトはDAOの基盤技術となるほか、既に分散型ゲームや分散型SNS等の他、分散型金融(DeFi)の構築にも活用されている

  5. ネットワークの混雑による取引手数料(ガス代)の高騰が課題となっていて、2022年9月、コンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へと転換した


4/NFT

<おさえておきたいポイント📝>

  1. NFTとは、Non-Fungible Token=代替不可能なトークン。なお、代替可能なトークンとしては、ビットコインやイーサリアムなどのほか、様々なトークン(セキュリティ・トークンや、ユーティリティ・トークン、ガバナンス・トークンなど)が存在

  2. ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一性(非代替性)を付与。偽造・改ざん不能なデジタルデータで、取引履歴を追跡可能

  3. 市場萠芽期の現在は、特にアート作品やゲームアイテムの収益化が注目されている※

  4. NFTマーケットプレイスとして世界的に有名なのは「opensea」だが、LINE、楽天やGMO、SBIなど、日本でもNFTの取引のできるマーケットが続々開設されている

  5. ユーティリティの担保、継続的なマーケティングやコミュニティの活性化などにより、(初値を釣り上げるのではなく)いかに本質的な価値を生み出してリセールバリューを維持、高められるか、が課題

※NFTの例

  • 2021年は、デジタルアーティストBeepleによるNFTがクリスティーズで6,935万ドルで落札され、CryptoPunksの高額な取引、Twitterの共同創設者が投稿した世界初のTwitter投稿のNFTが290万ドルで落札されるなど、特にNFTへの注目が高まった年となった

  • BAYC(Bored Ape Yacht Club)は、NBAの人気選手や、エミネム、ジャスティン・ビーバーなど多くのセレブリティが購入した事で人気に。彼らはSNSのプロフィール画像として利用した(PFP)。購入すると保有者が参加するクローズドなコミュニティに参加可能


▼2018年に話題となりNFTの火付け役に。「ドラゴン」と名付けられた猫1匹は600ETH(当時約1900万円)で購入され、過去最高値を更新した(当時)

▼スカラーシップ制度によりフィリピンでもブレイク。ゲームをプレイして生活費を稼ぐという「Play-to-Earn」の草分け。

▼ファッション業界では、リセール市場における取引額の一部を一次生産者に配分することで、より長く使えるものを生産するインセンティブを創造することに活用

経済産業省「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」(令和4年5月19日)


5/DAO

<おさえておきたいポイント📝>

  1. Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)。ブロックチェーン技術(スマートコントラクト)が可能にする新しい組織の形。中央集権ではなく、コミュニティが組織を運営する。ビットコイン(の運営)もDAOの一例(考案者のサトシナカモトは未だ誰か不明)。DAOのコミュニティは一般的にDiscordなどのバーチャル空間上で形成され、NFTと同様、コミュニティの熱量は価値向上の鍵を握る。

  2. DAOでは投票による意思決定を行う。その際、ブロックチェーン上のトークン(FT)を使用するが、FTがブロックチェーン上に記録されていることで、持ち分比率や投票結果が常時透明化される(参考:EtherscanやDeepDAOを覗いてみると良い)

  3. DAOのトークンエコノミーにより、従来の株式会社でいうストックオプションにあたる機能が、より広範囲のステークホルダに対して適用できる。→顧客や取引先もコミュニティの一員としてDAOの一部を所有できる

  4. DAOのトークンエコノミーはIEOにより資金調達が容易になるなど、既存金融市場(証券取引所や銀行、証券会社など)の民主化という側面も大きい(FinTech、De-Fi)

  5. DAOは既存の株式会社や投資組合などの代替だけでなく、その初期コストや運営コストの低さから地方創生など公共性の高いプロジェクトへの応用も期待されている

▼NFTとしての事例というだけでなく、NFTホルダを対象としたDAOの事例としても有名な、山古志村のNishikigoi NFT

▼出所は下記

▼「OpenSea」24時間ランキングで世界1位を記録したNFTの「新生ギャルバース」は、アニメ化や8888種のNFTすべてのVTuber化などを計画
→今後、コミュニティの発展が期待される


6/メタバース

※メタバースについては、必ずしもweb3というわけではありませんが、関連するバズワードとしてよく質問されるので掲載します。

<おさえておきたいポイント📝>

  1. 「メタバース」という言葉を巡っては多様な定義や解釈が存在。web3文脈の他、VR文脈やゲーム文脈、DX文脈など、様々な見方がある。

  2. web3文脈では、DecentralandやThe Sandboxなどが存在。デジタル土地の区画が売買されており、Decentralandでは、2021年4月、NFTの人気が急上昇した際は、6,000ドルから100,000ドルで売買された。サムスンやアディダスなどのブランドがデジタルの区画を活用したり、アーティストがコンサートを行ったりもしている。The Sandboxはゲーム内通貨の時価総額が約1200億円(2023年3月時点)

  3. VR文脈では、今後の普及台数次第。リサーチ会社IDCは、VRヘッドセット「Meta Quest 2」の出荷台数が累計1,480万台になると推定(2022年6月)。※2014年にOculusを買収したFacebook社は2021年10月、Meta社に社名変更し話題に。Appleも「AR/VRヘッドセット」投入が噂される

  4. ゲーム文脈では、Fortniteは全世界4億人登録、MAU83M、RobloxはDAU60M弱(諸説あり)のユーザを擁する

  5. 日本国内では、旅行会社や航空会社、小売企業などが参入。自治体による地方創生などにも活用されている。ただデジタル化すれば良いわけではない点が難しいところ


おわりに

興味を持った人は動画を見たり、本を読むのも良いと思います。
(参考図書はたくさんあるのでまた別の記事にまとめます・・!)

最近はすっかり生成系AIの話で持ち切りですが、どんな技術にもハイプ・サイクル的なものはありますし、web3に関しては冒頭で述べたとおり、構造的で不可逆な変化だと思いますので、この機会にしっかりおさらいしておきましょう!

免責事項:本稿はいかなる種類の専門的または経済的な助言(ビジネス、雇用、投資顧問、会計、税務、法律に関する助言を含む)を行うものではありません。特定の事項または状況に関しては、常に適切な資格を有する専門家に助言を求める必要があります。


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