キャロルの時間モデル - その2

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学校での授業に代表されるクラスルームでの教育、具体的に言えば教える内容と時間が決まっていて授業の最後(あるいは学期の終わり)に試験があり合格・不合格を決めるタイプの学校教育は、成績の差を個人の能力の差としてとらえる能力モデルを採用していると考えることができ、このモデルではすべての生徒・学習者が幸せになる(自分の能力を味わったり、将来に渡って学ぶことが好きになったり、学ぶ能力を使って人生を豊かにする)ことは担保されないだろうなと思います。

このことは学校教育だけに当てはまるのではなく、実は病院で行う研修やシミュレーションコースにも当てはまります。

能力モデルとして学校教育を定義づけるとすれば、①教える内容が事前に決まっている、②教育のリソース(教科書、時間、教員)の使い方が事前に決められている、③授業・研修・コースの終わりに試験を行い合格・不合格が決まる、④試験の成績の差を個人の能力の差とみなす、⑤合格・不合格にかかわらず用意された次の研修・コースにすすむ、の5つの要素を備えていれば、その研修・コースは基本的に能力モデルを採用しているということになります。

キャロルは学校教育での成績の差を能力(この考えだと生徒・学習者もその関係者もハッピィになることはできません)の違いとしてではなく、個人が学習に費やす時間の違いとして解釈することで、生徒・学習者が幸せになる方法を工夫できる(すなわちインストラクショナル・デザイン)と提案しました。それがキャロルの時間モデルです。

キャロルの時間モデルのエッセンスは、成績の差を次のように解釈することに付きます。キャロルは課題達成の度合い(試験での成績)は、ある生徒・学習者がその課題を達成するのに必要な時間に対して、実際にどれだけ勉強に時間を使ったかの割合で表現できるとして、次の学習率の式にモデル化しました。

学習率=学習に費やされた時間/学習に必要な時間

例えば、AさんがBLSコースの内容をマスターするのに16時間必要なのに、8時間しか勉強しなければ8/16=0.5(50%)の成績になるのは仕方がないとと考えます。成績が50%になった理由はAさんがマスターするのに必要な時間を使わなかった結果であり、16時間勉強すれば100%達成できると考えます。

成績の差を学習率で定義したうえで、キャロルは学習率の式に影響を与える変数を5つ挙げています。学習率の分母である学習に必要な時間を左右する要因3つと、学習率の分子である学習につい軟れる時間を左右する要因2つです。これら5つの要因はインストラクショナル/デザインを応用することで操作が可能で、それにより学習率を高めることができます(学習の効果・効率を向上できる)。

これら5つの要因については次の記事で取り上げたいと思います。

キャロルの功績をまとめると、①成績の差を学習率の差で説明した、②生徒・学習者の能力は学習率を向上することで伸ばせるという希望を与えた、③テクノロジーを応用し5つの要因を制御すれば学習の効果・効率・魅力(すべて学習率の改善に直結する)を向上することができることを示した、④すべての人は学習で成功できることを示したことにあると思います。

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