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「できる」医療者に発達する学び方

 過去10年ほど「できる」医療者に育つ学び方/教え方について考えたり、試行錯誤したりという活動を続けてきました。

 コロナの時代になり対面セミナーが開催できなくなったので毎週火曜日午後9時から1時間程度の勉強会(「できる」医療者に育つ学び方/教え方に関わるテーマで)をずっと続けてきました。勉強会の中で次回の方向づけや参加者に有用な知識を同定し、その週末は次回の準備に当ててきました。

 2023年11月からGOLDメソッド勉強会というZOOMを用いたセミナーを開いています。この勉強会ではGOLDメソッドの背景にある心理学や認知(脳)科学の考え方・概念などを紹介しています。
 今週末はいつものように次回に備えて仕込みを行っていました。その中で出会ったのが松本元(1940年11月24日 - 2003年3月9日)。


 そのエッセイのタイトル、「人が輝いて生きるとき脳の目的に合わせて脳を創る」に出会い痺れました。
 このタイトルこそがGOLDメソッドの核心を言い表しています。
 以下、このタイトルを区切りながらその意味を解釈してみようと思います。

人が輝いて生きているとき

 いわゆる人がフロー状態、あるいはディバレイト・プラクティス(よく寝られた練習・限界的練習)を行っているとき。遊びで学びでも勉強でも部活でも料理でも仕事でも何にでも当てはまります。
 IDで言えばARCSモデルで動機付けに成功し、メリルのID第一原理やパリッシュのID美学第一原理、さらに学びの全てにガニェの9教授事象が適用されたような授業や講義(当然、学習者は目をぱっちりと開け、居眠りやスマホをいじる者はいません、という状況)での学びにも当てはまります。
 脳科学で言えば、脳の神経回路網がフルに活性化されその人が問題解決活動に没入している状態を指します。


脳の目的に合わせ

 ここが重要なポイントです。脳の所有者である「私」の目的ではなく、「脳=心」の目的、なのです。私が考える「私」は意識的(モノやコトに注意を向けていること+自分は私であることを認識できうる自己意識)な私ですが、実は「私」が考えたと思っていることの殆どは無意識の「私」=「脳」=「心」が作っています。
 ということは「人が輝いて生きているとき」とは「無意識(先程挙げた意識の対語)の私の心が活発に活動しているとき」ということになります。

脳の目的に合わせ脳を創る

 ここも重要なラインですね。脳の所有者である「私」の「心」が何をどのように学ぶかを決めるわけです。学びの状況は「人が輝いて生きているとき」なので、いつも、という訳ではないことに注意が必要です。
 人が輝かずにドンヨリと勉強しているときには、自分の心もドンヨリと不活発になっているので、自分の心をオフにして教える人やその教科の意図を汲み取って勉強するほうが楽に感じるでしょう(この場合、臨床・現場で使える脳を作ることはできません)。
 脳の目的は多層構造になっていて、深層に行けば行くほどそれがどのような構造をしているのか、なぜそのような構造になったのかをその所有者であっても自覚したり言語化することはできません。

GOLDメソッドで学ぶ看護学生の心の変化を解釈すると

 このタイトルの解釈を看護学生2年生(今年の5月から9月にかけてGOLDメソッドで「できる」看護師に発達する学びを経験し、その成果として「できる」看護師の心を獲得した)に当てはめてみたいと思います。

人が輝いて生きているとき

 看護学生がGOLDメソッドのツールを用いて「できる」看護師になりきって受け持ち患者に看護実践を仮想的に経験しているとき

脳の目的に合わせて

 なりきっている「できる」看護師の心の目的に合わせて

脳の目的に合わせて脳を創る

 「できる」看護師の心の目的に合わせて、さらに「できる」看護師の心の神経回路網を新しく生成したり拡張したり結合を強化する=「できる」看護師の脳を創る。

・・・というようになります。
医療ISDの目的は、学習者が「できる」医療者になりきって医療を実践しているとき、「できる」医療者の心がいま実践している医療の目的に合わせていまある「できる」医療者の神経回路網を拡張していき、「私」が「できる」医療者に発達し続けること(医療ISD)、になります。そのメソッドがGOLDメソッドになります。


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