「あなたの教え方、間違っていませんか? 部下やチームを育てる方法を議論する」1

#医療教授システム学

#医療ID

 これは昨日、第47回日本救急医学会総会・学術集会@東京国際フォーラムの3日目(10月4日)に行われたワークショップのタイトルです。

 6題の講演発表に続きディスカッションを行いました(小生は座長2名のうちの一人として参加)。ディスカッションではSlidoを用いて参加者から質問を募り、質問の中から「いいね」が多いものを取り上げました。

 すべての質問をカバーすることができなかったこともあり、ここに質問と僕自身の回答をまとめておきたいと思います。回答のつもりで書き始めますが直接の回答というよりは、質問から始まる医療インストラクショナルデザインへの誘いのような内容になりそうな予感がしています。ま、それもいいでしょう・・・。

 大学病院や臨床研修病院の救急部門で主に前期研修医を対象とする教育・トレーニングの現場からの質問になります。

1.学習者のモチベーションが違いすぎる場合、なにかできる工   夫は?

 前期研修では救急医療の経験は必須になっているので、将来の進路に関わらず救急医療を学ぶ機会を与えられます。将来の自分にとって救急医療が役に立つと考えればモチベーションは高くなるでしょうし、逆に、救急なんかやりたくないと考えていればモチベーションは低くなります。

 救急医療に興味や関心がない研修医に興味を持ってもらいモチベーションを高める方法もあるとは思いますが、僕が提案したのは次の方法です。

 救急医療でも内科でも眼科でも精神科でも、医師に必要な認知能力の構造と、長期記憶の組み立て方に違いはありません。与えられた情報を評価し判断する能力、臨床推論の精度を上げるために必要な情報を取りに行く能力、収集した情報から判断を形成し診療プランを生成する能力、その患者にベストなアウトカムをもたらす診療プランを選択し実行する能力、などが医師に必要な認知能力になります。上述した能力のうち最後の実行する能力は運動技能を必要としますが、それ以外はすべて頭の中で行なう能力になります。

 前期研修のゴールはどの診療科でもかならず役に立つスキーマとスクリプトの学習の仕方、認知的方略、を獲得することであること、救急医療はスキーマ学習とスクリプト学習を効果的・効率的・魅力的に行なう最適な場であること、スキーマ学習とスクリプト学習の仕方を習得すればどの診療科に進んでも「できる」医師に成長できることを伝えることで、救急医療というスキンの下にあるジェネリックな医療遂行能力を学ぶことに動機づけする、というのが僕の提案になります。

 医師に必要な認知能力は、その領域あるいはその状況で必要となるっ知識のセットと、知識のセットを順番に使いながら診療を行う(=患者の問題解決)ための台本に分けて考えることができます。知識のセットをスキーマ、診療の台本をスクリプトと呼ぶことにします。

 診療のジェネリックな台本は、

①患者情報から病状の認識、病状の変化の予測ととりあえずの診断を想起する。

②患者に対面したら病状の認識と変化の予測を検証し、変化の有無・変化率に応じた診療プランを選択する。

③選択した診療プランと臨床推論を実行する。

④プロブレムリスト、検査・治療プランを生成し、診療のPDCAサイクルを回す。

⑤患者の問題解決に必要な情報(言語情報)、診断技能(知的技能)、診断技能(運動技能)と手技(運動技能)をセルフラーニングし、上級医との対話から価値観や態度を学ぶ。

⑥①から⑤を振り返り教訓を引き出し、自分のスキーマとスクリプトを修正したり拡張する。

 とりあえずの診断、病状認識と変化の予測、臨床推論、検査と治療では診療科ごとに頻用する知識セットが決まっているので、知識セット(研修医用のその診療科のスキーマ)を見える化し事前学習することで診療の見える化を促進することができます。研修医は実診療を経験しながら与えられたスキーマを書き換えたり拡張していきます(このプロセスが学習になります)。

・・・続く。

アプストアからインストールし自分の用途に合わせてアプリを設定する・組み合わせる。

この方法がうまくいく前提。指導医の頭の構造とリソース。

指導医の手間や労力を軽減する+研修医に自己責任をもたせる。

で、どこから始めればいいのか。

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