見出し画像

小説 | 777


舞うイチゴに大興奮。液晶画面をさすり「イチゴ郡は30%以上ある。頼むッ」強く目をつむる。画面に金髪の女の子がうつり手を振る。「あるあるあるある。ノウリンちゃん頑張れ」台の中央についたボタンを連打

キュイン

安堵。スーパーラッキーの文字を眺めて安心した拓は、パチンコ以外のことも少し考えられるようになった。本当にあの日からついている。病気で倒れていた日。金魚のふうちゃんがしんでしまった日。親父から珍しく電話があった日。

「携帯の機種変更のやり方がわからん。お前ならわかるだろう」――そんなこと自分でやれとも思ったが、昔、お金のことで迷惑をかけてしまったことがある。孝行だと思い引き受けることにした。「わかった。けどちょっと体調を崩していて」

病院にかかるお金もくれたうえに更に10万円包んでくれた。本当にありがたかった。まず借金を利息だけでも返済しようと思った。が、その前に一旦増やそう。それから連日パチンコ通いをしている。
「あの日から負けたことがない。今日は6万投資。そのまま飲み込まれる可能性も充分あったが、当たりは引いた。連チャンさせ続けるのみだ」

*

景品交換所の引き出しから現金をとる。その55000円を財布に入れる。今日は危なかった。6万ストレートでいかれるところだった。遊べたし今日も実質勝ちだが、と思いながらジーンズのポケットに財布をしまう。コンビニで酒を買おう。交差点で信号が青になるのを待つ。たくさんの車が通りすぎた。

*

「パパ。おの大きなお城はなにー?」苺を頬張りながら窓の外を指差して女の子が言う。ハンドルを握る新しいパパが答えるまえにママが答えた。「悪魔のお城だよ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?