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小説 朝陽のむこうには サバトラ猫のノア

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小学生だった僕が猫になっちゃったお話です。牧場で猫として生まれた僕には、人間だった記憶がある……。全8話をマガジンにまとめました。
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#再会

【連載小説】朝陽のむこうには ~サバトラ猫のノア~ 5〈全8話〉

それから僕は何日も何日も歩き続けた。方向は間違っていないはずだ。 ある朝、見覚えのある街にたどり着いた。 ここ、覚えている。見覚えのある公園、見覚えのある家並み。 どんどん足早になっていく。 僕の家は、そう、この角を曲がったところ。 あった!僕が住んでいた家! 僕の家に向かって駆け出した。たどり着きドアを見上げる。 かつてのように自分でドアを開けて入っていくことはできない。 しかたなく僕はドアの前で長い時間待ち続けた。 突然、カチャリと音がしてドアが開いた。誰かが出てく

【連載小説】朝陽のむこうには ~サバトラ猫のノア~ 6〈全8話〉

僕はおかあさんの運転する車の中で車窓から外を眺めていた。 次々と街路樹が流れていく。 車が角を曲がってから、それは家々が見える景色に変わった。 住宅街に入ってきたみたい。 弟は僕をひざに乗せて後部座席に座っている。ほとんど身動きをしないで、タオルの上から僕の背中をそっとなでている。 僕が眠っていると思って起こさないようにしてくれているんだ。 しばらくして、車は速度を落として停車した。 「おかあさん、先に家に入っていい?」 弟が小さな声で訊いた。 「いいわよ。大輝は猫さん