生きるべきか死ぬべきか

『生きるべきか死ぬべきか』 当書:九反月海

 恋人と話している 。

生きるべきか死ぬべきかの二択だったら、私は死ねるよ。
子供のためだったら私は死ねる。
あたしの命より子供のほうがよっぽど大切だから。

そうだよ。子供ができたの。
何でびっくりした顔してんの?言ったよ、私。昨日の夜、夕食の後で。
「 子供ができた みたい」って、言ったよ。まーくん 「ああ」って返事してたよ。
したよ。返事してた。私、びっくりしたからよく覚えてるもん。子供できたって言われてこんな生返事する人いるんだーって。まーくん、 携帯ばっかりみてて私の話なんて聞いてないもんね。私のことより ゲームアプリの限定ガチャイベントのほうが大事 なんでしょ。

どうせまた私がなんか文句でも言ってるだけだって思ったんだよね。
だから私の声が聞こえないようにシャットアウトしてるんだよね。使ったコップは下げてほしいとかさ、トイレの便座は下げてほしいとかさ、靴下は脱ぎっぱなしにしないで洗濯籠にいれてほしいとかさ、 どうせそういう小言だ と思ってたんでしょ。

あたしもね、まーくんが働いてる時はさ、多少の我慢しなきゃって思ってたよ。
でもさ、まーくん、仕事辞めてもう半年でしょ。私が働いてご飯作って掃除 して洗濯してお風呂沸かして‥‥‥まーくん、この半年 何もしてないじゃん。これじゃひもじゃん。
そもそもひもだってもう少し働くからね。洗い物とかゴミ捨てくらいはするからね。
まーくん、何もしないのにやることやってるでしょ。ひもの仕事は夜の仕事だとでも思ってんの?私が仕事で疲れててもおかまいなしじゃん。猿じゃん。ヒモの猿じゃん。
あれ、怒った?怒ってるの? まーくんに怒る資格なんてあるの?

‥‥‥で、黙っちゃうんだ。ありえなくない?今は聞こえてる?聞こえてるよね。子供ができたんだよ。私とまーくんの子供だよ。まーくんはお父さんになるんだよ。
何で黙ってんのよ。嬉しいとかさ、私の身体を気遣うとかさ、なんかないわけ?
あと絶対におろさないよ。おろすつもりはないから。

だから私は別れようって言ってるの。
愛はあるよ。私、まーくん愛してるけどさ、まーくん、父親にはなれないでしょ。
もうまーくんより子供のほうが大切だから。

そんな大きな声を出したって無駄だよ。
怖くなんてないから。私、命がけで言ってるんだから。別れてほしい。っていうか別れるってもう決めてるから。まーくんの許可とかいらないから。

別れるくらいなら死ぬ?まーくんが?
待って待って何でそうなるの?これから心を入れ替えて働くからとかさ、なんでそういう方向に行かないのかなぁ 。(相手の「心を入れ替えて働くから」を聞いて)いや、今更だから、今、それを言ってももう響かないから。その働くはどうあっても信じられないでしょう。

あー!もう、だったら死ねばいいじゃない。
今、急速にまーくんへの愛が冷めていってるから。 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬって死にたいのはこっちだからね。
でも、私は死ねないから。そう。私は死ねないの子供の為にも私は生きなきゃいけない 。

私は死ねないんだ 。
生きるべきか死ぬべきかの二択だったら、私は生きるよ。
子供のためにも私は生きるの 。

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